『ラブ』

[ 天ブラのサイヤ人パラレルです。

地球式』 『サイヤ式』 『眠りと併せて

読んでいただけましたら うれしいです!! ]

トランクス王子のお付きで わりとでかい星を攻め落としてきたばかりのおれは

惑星ベジータに戻ってきていた。

暇だったから、ちょっと昼寝でもしようと 適当な場所を探す。

 

すると、スカウターがやけに中途半端な数値を示した。

戦士としては低すぎるけど、戦わない奴にしてはちょっと高い。

おれは辺りを見回した。

 

女だ。  若い。  

同じくらいの年だろうか。 何かを探しているようだ。

声をかけてみる。  「何をしてるんだ。」

 

女はおれのことを無視した。

けれど、おれが立ち去らないのを見て 口を開いた。

「花を探してるの。」  「花?」 

「そうよ。 咲いてるの、見たことない?」

この星に、そんなものがあるんだろうか。

 

「小さい頃に見たことがあったのよ。 この辺だと思ったのに。」

女はプロテクターを着けていない。 やはり、戦士ではなさそうだ。

左の目元のスカウターを見る。 デザインが違っていることに気づく。

あれは・・・。

 

「おい。」  「えっ?」 

「スカウターを、ちょっと見せてみろ。」

はっとした顔になって、女は飛び去ろうとした。

 

一瞬の差だった。

おれは女の腕を掴んで引き寄せ、スカウターを奪う。

「やっぱり。 これは王子の・・ トランクスのつけているものと同じだ。」

 

女に視線を移したおれは 驚いた。

背中まで伸びている、女の髪の色が・・・。

「返してよ・・。」

「なんだ、その色は。 おまえは、サイヤ人じゃないのか?」

 

おれの手にあるスカウターを取り返そうとする女の、

腰に巻かれた尻尾を解く。 掴む。 強く 握りしめる。

短い悲鳴とともに、女はその場に崩れ落ちた。

 

「・・女は特に、尻尾を鍛えておくべきだな。」

地面の上に組み敷くかたちで、おれは言った。

「じゃないと、男の言いなりだ。」

 

こんなことをするつもりじゃなかったのに、触れてしまうと 止められなくなった。

おれを押し返そうと 身をよじりながら、女は

「ただじゃ済まないわよ。」 と何度も言った。

 

事の後。

途中から おとなしくなった、女の髪に指を通す。

不思議な色の髪は、この星の女のそれと 手触りがまるで違った。

 

「わたしの髪、きれいでしょ?」

目を閉じていた女が、口を開く。

「以前は薬品で黒くしてたんだけど、傷むからって

 ママがスカウターに細工をしてくれたの。」

ママ? 母親のことか。

この星で、親と暮らしている奴なんて限られている。

 

「ママの故郷の星の、空の色なのよ。 わたしの髪は。」

そして、女は こう続けた。

「お兄ちゃんの髪は、夜明けの空の色よ。 瞳の色は、わたしと同じ。」

その言葉で、いくつかのおれの記憶が繋がった。

 

戦闘の最中、

スカウターがはずれた王子の髪の色が 変化したように見えたことがあった。

王が 異星人の女を囲っているのは、公然の秘密というやつだ。

それにしても、子供までいたとは。

しかも、あの王子が異星人との混血・・・。

「じゃあ、 おまえは・・ 」

「トランクスの妹よ。」

斜にかまえたような笑顔を見せる。

その表情は、確かに王子によく似ていた。

 

「あんたは、ゴテンでしょ。 お兄ちゃんがよく話してるわ。

 結構強くて、面白い奴だって。」

そして、服を身につけながら こんなことを言う。

「ゴテンって、ヘンな名前ね。」

 

「・・本当の名前じゃない。」

赤ん坊の頃、送られた星でおれを拾った奴がつけた名なんだ。

「本当の名前は何ていうの?」

「呼びにくいから、今はみんなゴテンって呼んでる。」

女は、おれの名を何度も繰り返している。

 

「おまえの名前は?」  「ブラ。」

「そっちこそ、ヘンな名前だ。」 そう言うと、

「知らない。 ママが付けたんだもの。」 と、口をとがらせた。

 

「何か意味があるのか?」

「逆さに読むと、あるみたい。 だけど、どんな意味かは知らないわ。」

その後、「スカウター、つけてよ。」 と おれに命じた。

言うとおりにしてやる。 途端に、髪と瞳の色が黒に変わった。

 

「お兄ちゃんが あんまり帰ってこなくなって、ママは寂しそうなの。

 だから、小さい頃に見た 花を摘んであげようと思ったのよ。」

 

花。 おれが育った星に、そんなものがあった気がする。

だけど、この手で滅ぼした。 何もかも。

 

おれは、女を・・ ブラを引き寄せて、紅い唇を貪った。

花ってやつは、確かこんな色をしていたと思いながら。

女を抱いたことはあったけれど、それをしたのは初めてだった。

 

離れた後で、ブラは言った。  「また、ここに来る?」

「おれは、王子に殺されるんだろ?」 それとも、王のほうかな。

「来てくれるなら、誰にも言わないでおいてあげるわ。」

 

さっきとは違う その笑顔を見て、

今度会ったら 一緒に花を探してやってもいいと、おれは思った。