062.『サイヤ式』

[ 故郷の星で王子として暮らすベジータが、

捕らえたブルマを愛するようになるというパラレルストーリーです。

あまり細かい部分の設定は考えずに書き始めました(笑)]

この星の、この部屋に連れてこられて もうどのくらいになるんだろう。

ベルトのように腰に巻かれた尻尾も見慣れた。

 

地球とは、時間の流れも違うのだろうか。

窓を開けても、空はいつでもどんよりしている。

 

だけど、あきらめてはだめ。

地球は、まだ滅ぼされていないらしい。

ドラゴンレーダーは、奴らの手に渡る前に壊してしまったけれど、

肝心な部分だけはちゃんと残して、ピアスに仕込んで身につけている。

これは、切り札だ。

いつか、逆転するための・・・。

 

夜。  

ほぼ決まった頃に、男はこの部屋を訪れる。

 

侍女たちの話によると、この男は王子だという。

女にまるで興味を示さず、世継ぎができないのではと危ぶまれていた王子が、

よりによって異星人の女にご執心だ。

悪意に満ちたおしゃべりが、何度か耳に入ってきた。

 

男がどうしてわたしを気に入ったのか、よくわからない。

これまで、ろくに会話もしていないのに。

 

この先わたしをどうする気なのかわからないけれど、

今日は、今は、わたしのことが好きなのだろう。

触れ方で、わかる。   なんとなく。

だって わたしは、恋人に愛されたことがあるから・・・。

 

ベッドの上で、男に組み敷かれながら、わたしは泣いていた。

 

楽しかった日々が脳裏に浮かんで、あとからあとから涙があふれた。

 

わたしの顔をじっと見つめていた男は、右手を近づけて、流れる涙をぬぐおうとする。

 

初めて、 話しかけてみる。  「わたし、ブルマっていうのよ。」

「ブルマ・・・」

「・・ここにいると、自分の名前、忘れちゃいそう。」

 

男も、自分の名を告げた。

そう呼んでもいい?  と聞くと、唇を重ねてきた。

返事のかわりに、 とてもやさしく。

 

 

「ベジータ。」  浅い眠りから呼び戻して、囁いてみる。

「わたしの体って、 気持ちいいの?」  「 ・・下品な女だ・・。」

ほおを赤らめ、舌打ちをしてつぶやいた。

 

わたしも、地球も、これからどうなってしまうかわからない。

 

だけどわたしも、ベジータのことは好きだと思う。

今日だけは、  今だけは。