120.『地球式』
[ 062.『サイヤ式』の続きです。]
最初は、好奇心からだった。
不思議な色の瞳と髪の、尻尾のない女が、その時どんなふうになるのか見てやりたかった。
それだけだったはずだ。
だが、何度目からか女の表情から嫌悪感が消えていき、
体と心を俺に開くようになっていった。
そして今、ブルマは、横たわる俺の左胸にほおを寄せている。
ブルマは、身ごもっていた。
腹が目立ってきてから、俺はこの女を抱いていない。
それでも何故か、この部屋に足が向いてしまう。
「宇宙に出てない時は、いつもここで寝てるみたいね。
お妃さまは、怒らないの?」
そう。
ベジータは少し前に王に即位し、妻を娶ったらしい。
彼は、ほとんど何も言わない。
実の父親だった、前の王が死んだ理由も。
短い受け答えと、侍女たちのうわさによれば
この星は、さらに強大な力を持つ者に支配されているらしい。
サイヤ人の頑健さと、闘争本能がうまく利用されているということなのか。
王の死は、そのことと関係あるのだろうか・・・。
質問を無視したベジータに、わたしは言った。
「わたしと寝ると、幸せな気持ちになるからでしょう?」
「誰がそんなことを言ったんだ。」
「地球にいた頃の、恋人よ・・・。
死んじゃったけどね。 あんたの仲間との戦いで。」
彼は指先で、ずいぶん伸びたわたしの髪を梳く。
「・・だったら、おまえはどうして俺の子を産もうとしているんだ。」
「今は、あんたが好きだからよ。」
わたしは半身を起こして、ベジータのほおにキスをした。
「この星は、大っキライだけどね。」
皮肉な笑みが浮かんだ唇にも、同じことをする。
それは次第に熱を帯び、彼は苦しげに眉を寄せる。
「さっさと産んでしまえ・・・。」
わたしのおなかにそっと触れて、ベジータは言う。
赤ちゃんの顔が早く見たいの? と、からかうと
ほおを赤らめて、うるさい、 とつぶやいた。
それから、ほどなくして産まれた男の赤ん坊は高い戦闘力と尻尾を持っていた。
しかし瞳と髪の色は、どう見ても母親譲りだった。
サイヤ人の社会では、暮らせないだろう。
どうにかして、守ってやらなくてはならない。
せめて戦える年になるまでは。
赤ん坊にトランクスと名づけて、
眠ることも忘れたようにわが子を慈しむブルマを見つめ、ベジータは思った。