『 unknown 』
[ トラパン夫婦物語です。以前、似た話を上げていたのですが書き直しました。
拙サイトオリジナル感が強いので、お許しくださるかたのみ お願いします。
いつもよりも、やや遅い時間に トランクスは帰宅した。
一人娘のキャミは もう とっくに、自分の部屋に籠ってしまった。
多分まだ、眠ってはいないと思うんだけど。
軽めの食事を用意していた時、 見慣れない紙袋が目についた。
「なあに? これ。」
「ああ。 業務提携してる会社の人から たくさんもらっちゃってさ。
ほとんど、若い奴らに配ったんだけど。」
袋の中には、未開封の小箱が ぎっしりと詰め込まれていた。
カラフルな色合いのパッケージ。
お菓子かおもちゃと間違えてしまいそうな それらは何と 避妊具、コンドームだった。
「C.C.を訪ねる時の手土産にすればいいよ。 悟天とブラなら重宝するだろ。」
「もう。 また、そんな言い方。」
ブラちゃん夫婦が子だくさんであることに対し、トランクスは 今でも皮肉を口にする。
妹と親友が夫婦になったことが、余程 照れくさかったのだろうか。
「ま、どっちにしろ おれたちは使わないもんな。」
「・・・。」
敢えて返事を返さずにいた。
すると トランクスは あわてた様子で、手にしていた スプーンを置いた。
「違うよ、ごめん。 そういう意味じゃないんだ。」
「うん、いいの。 わかってるわ。」
そう。 確かに わたしたちは、あれを使わない。
理由はもちろん、もう一人、 ううん。 二人でも、三人だって構わない。
子供がほしいからだ。
わたしたちには まだ、娘が一人しかいない。
キャミはもう、高校生になってしまった。
キャミにC.C.社を継がせるのであれば、大学も そういう観点で選ばなくてはならない。
その辺りの話になると、トランクスは いつも言葉を濁した。
自分やブルマさんと同じ苦労を、娘に背負わせたくないのかもしれない。
トランクスは言う。
『C.C.社の後継ぎはさ、別に血縁の人間じゃなくたっていいんだよ。』
そして きまって、こんなふうに続けた。
『頑健なサイヤ人が少数民族なのは、繁殖力が弱いせいだ。
悟天とブラは例外だな。
パンもだけど、おれだって長いこと一人っ子だったんだから。』
・・・
寝室のベッドの上で、わたしは あることを思い出している。
18歳、 まだ高校生だった頃、
トランクスと初めて、そうなった頃のことだ。
最初の時は、わからなかった。
あの時は本当に、瞼を開けることさえ できなかった。
でも それ以降は・・・
トランクスは必ず、欠かすことなく 避妊をしてくれた。
ある時。 慣れた手つきで後始末をしている姿を、何とはなしに見つめていた。
視線に気づいた彼は言った。
『サイヤ人は妊娠しにくいらしいけど、念のためにね。』
答えない わたしに向かって続ける。
『パンが もう少し大人だったらな。 せめて、学生じゃなければ・・。』
『? どうするの?』
『おれの子供を産んでもらいたかったよ。』
何と答えていいものか、しばらく言葉が出てこなかった。
『・・・ 子供だけ?』
トランクスの方は、淀みなく答えを返した。
『奥さんになってほしいけどさ、嫌なら 子供だけでも いいってこと。
パンとおれの子供か! 強くて可愛くて、とっても いい子だろうな。』
『他の、もっと大人の女の人に頼めばいいじゃない。』
『バカだな。 パンじゃなきゃダメなんだよ。 パンの子じゃなきゃ、欲しくないよ。』
傍らにいる、トランクスに尋ねる。
今 わたしは、彼の腕を枕にしている。
「あの時、どうして あんなこと言ったの?」
「ほんとに、そう思ってたからだよ。」
パンとキャミがいてくれて、今のおれは幸せだ。
そう続けてくれたのに、こんなことを言ってしまう。
「ブルマさんに赤ちゃんを・・ 孫の顔を、見せてあげたかったからでしょ?」
「確かに、それもあったよ。 だけど、」
抱き寄せる腕に、力がこもる。
「子供ができれば、パンは おれから離れて行かないかな、って思ったんだよ。」
「どうして、」 そんなこと言うの?
厚い胸に埋めていた顔を上げて、唇を、彼のそれに押し当てた。
戦うことのできるわたしは どんな時も、決して、トランクスのそばを離れないつもりだ。
そして 死んでしまった後だって わたしたちは、天国と地獄に別れてしまうことは無い・・・。
それは、口に出さなかった。
その言葉の代わりに こう言う。
「わたしたち、離れたりなんかしないわ。 ずーっと一緒よ。 うちのパパとママみたいにね。」
それを聞いて、笑いながら トランクスは答えた。
「そうだね。 おれたち混血児の、人生の師匠は悟飯さんだな。」
胸に触れていた手が、下へと伸びてきた。
迷ったけれど、やんわりと拒む。
「ダメなの?」 「うん、今日は ちょっと。」
「そうか。」
少しだけ不満げに、だけど 体を離すことなく、わたしたちは眠りについた。
広いベッドで身を寄せ合って、お互いの、確かな体温を感じながら。
翌朝。
いつもよりも 早めに家を出ようとしていたキャミに、例の紙袋を見られそうになって あわてた。
いくら C.C.に寄ってから登校しているといっても、持って行ってと頼むわけにはいかない。
ところで、トランクスは こうも言っていた。
娘のいない所で。
「ブラと悟天が使いきれないようなら、息子どもと分けろって言っといてよ。
あいつらも年頃だもんな。 ガールフレンドの一人や二人、いるだろ。」
「そうね・・。」
トランクスは、気付いていないんだろうか。
キャミと、・・・くんのことを。
それとも かつてのパパのように、とりあえず静観しているのだろうか。
どちらにしても、この先は いろんな意味で大変そうだ。
ブラちゃんとも、よく相談しておかなきゃ。
後継ぎ云々は関係なしに、今度は男の子が欲しかった。
食いしん坊で、暴れん坊で、お母さんのことが大好きな男の子。
だけど、もう一人 女の子がいてくれた方が平和かも・・・。
「どうかした?」
トランクスの、怪訝な顔で我に返る。
「ううん、何でもないの。」
昨夜は伝えそびれてしまった。
まだ ふくらんでいない おなかに、そっと手を当てる。
「今日は、早く帰ってきてね。」