『Looks like you !』
[ トラパンの結婚後のお話です。
ちなみに結婚式の話は『この手につかんだもの』で、ベジブルの方にあります。
ブログの一周年記念リクエストで書かせていただき、
長らく拍手お礼に置きっぱなしでした。
やっぱり、思ったとおりだった。 パンのおなかの子は女の子だった。
口元が ついついゆるんでしまうおれに、悟天は言う。
「超音波の機械じゃ、女の子ってのは断定できないんじゃないの?」
・・イヤなこと言うやつだな。
「C.C.社製の検査機器だぞ。
見えないなんてことあるかよ。」
休日の昼下がり。
悟天とおれは、C.C.の居間で TVを眺めながらくつろいでいた。
パンは今日、ブラに誘われて 街へショッピングに出かけた。
おなかに子供がいる者同士、赤ん坊の物をあれこれ見ているんだろう。
騒がしいチビどもは重力室で、特訓といいながら 父さんに遊んでもらっている。
まだ歩き始めの末っ子だけが この場にいるのだが、とにかくよく動き回る。
それを目で追いながら悟天が言った。
「女の子でも、武道をさせるんだろ?」
「パンは、そうしたがってるけど・・。」
おれは口ごもった。
「体を鍛えるだけなら いいんだけどさ。
おれとしちゃ、女の子が戦うのは あんまり・・ 」
それを聞いた悟天は笑いながら、一人 納得している。
「トランクスって、ほんとに・・・ 」
「なんだよ。」
「いや。 でもさ、前から思ってたんだけど
ブルマさん似の女の子っていったら、ブラのことじゃないか。」
確かにそうだよ。
でもさ、 何か違うんだよな、 ブラは。
あれで結構、父さんのほうに似てたりするし。
それに、チビの頃から 悟天、悟天って・・・。
その時。 なんとも言えない臭いが鼻をついた。
悟天が おむつを片手に、逃げ出そうとするわが子を捕まえる。
「まぁ、 子育ては大変だよ。 家にいる時は 手伝ってやらないとね。」
練習してみる? と言われたけど、丁重に断った。
「おむつ換えは、男の子の方が楽なんだよ。」
その言葉に どこか引っかかるものを感じながらも、慣れた手つきの悟天を
横目で見ていた。
「そういえば 昔、ブラのおむつを換えてやったことが あったなぁ。」
ああ・・。 遠い記憶が蘇ってくる。
「トランクスに ノートを借りたくてC.C.に来たら、ベジータさん一人でブラのおもりをしててさ。
今と おんなじようなことになって・・・ 」
笑いをこらえながら、悟天は続ける。
「自分がやる、って言ったけど 手際が悪いせいかブラは大泣きでさ。
あんまりかわいそうだから おれが代わったんだよ。」
・・まぁ、 ブラと悟天は 一緒になる運命だったのかもな。
「見ないで換えろ。 見たら殺す! って言われたけど、そんなのムリだよね。」
下を向いて笑っている悟天。
その言葉で、おれは あることに気づいてしまった。
「おい。」 「えっ?」
「おまえ、 なんで ガキの頃からそんなに赤ん坊の世話に慣れてたんだ?」
きょとんとしながら悟天は答える。
「そりゃあ、パンをうちで あずかった時に・・ 」
あっ、 と自分の口を手で おおう。
「この野郎・・・ 」
おれは 悟天に掴みかかった。
その時。
重力室での 特訓という名の遊びを終えて チビどもが わらわらと居間にやってきた。
「戦ってる。」 「戦ってる。」
口々にそう言って 目を輝かせている。
自分たちも 参戦する気まんまんのようだ。
後から来た父さんの、「力が余ってるなら重力室が空いたぞ。」
という一言で、おれは手を放した。
それにしても あのチビ怪獣ども、末恐ろしいぜ。
父親である悟天を庇うというより、明らかに自分たちの力を試したい感じだった。
しかも、誰に似たのか やたらと口も回るようになってきた。
奴らのおしゃべりのせいで、この一件は 帰宅したパンとブラに バレてしまった。
パンは あきれていた様子で、 ブラは でかい腹を抱えて大笑いしていた。
「早産しちゃいそう・・。」 なんて言いながら。
それから数ヵ月後。
パンは 眠っている 小さな娘を見つめながら、
やっぱり武道をやらせたい、 と言った。
おれは こう答えた。
「パンが教えてやるんならいいよ。 重力室はイヤだな。」
「・・痛い思いをさせたくないし、 女の子は、お姫様みたいに育ってほしいんだ。」
付け加えた言葉を聞いて、パンは笑いだした。
「トランクスって、本当にお義父さん似なのね。」
ちょっと心外だったけど、彼女のその表情は おれが大好きだった あの笑顔に、
なんだかとっても よく似てきたような気がした。
『パパ、お願い!』と併せてお読みいただけましたら うれしいです!]