一緒に入ったバスルームで わたしは、ベジータの髪を洗ってあげている。
「こうやってね、 お湯で濡らした手でシャンプーを
よく泡立てて・・ 」
一応説明するけれど、結局わたしが洗ってしまう。
量が多くて固い髪。 地肌まで指を通すことが大変だ。
シャワーのお湯で泡を流すと、おりてきた前髪が
彼の特徴ある額を隠す。
「わぁ・・ なんだか、印象が変わるわ。」
濡れた前髪の上から、額に唇を寄せる。
一気に幼くなった彼の、頬にも そして唇にも、同じことをするつもりでいた。
けれど、それよりも先に、椅子に腰かけているベジータが
わたしの上半身を持ち上げる。
「ん ・・ っ 」
両手で脇を押さえ込み、胸の先端に強く吸いつく。
「あ、 あ・・ っ ちょっと、 ねぇ、
痛いわ・・ 」
それに答えることなく、彼は 吸いつく力を少し弱めて、舌先で
そこの部分を 弄ぶ。
「ベジータ・・。」
両腕を伸ばして、彼の頭を抱きしめる。
洗ってあげたばかりの髪。 わたしと同じ、シャンプーの香り・・。
「ね、 離して。」 返事は無い。
「さっき、ベッドで言ったでしょ。 もっと
いいこと教えてあげる、って。」
唇が離れる。 「・・いいこと、だと?」
舌先による執拗な愛撫から ようやく解放され、大きく息を吐く。
「そうよ。」 彼の目を見て、わたしは答えた。
ちょっと苦しい姿勢になるけど・・ まあ
いいわ。
「びっくりしないで、さっきみたいに おとなしくしててね。」
そう言ってわたしは、彼の体の中心に顔を埋めた。
「何しやがる・・。」
セックスしたことはないとしても、もしかしたら
こっちは・・ なんて思った。
だけど やっぱり、初めてだったみたい。
「大丈夫。 歯を立てたりしないから。」
次第に頬張りきれなくなる それを、唇と舌で優しく愛する。
根元を手のひらで さする。 そして、首を傾げて角度を変える。
「・・・ 」
ベジータの手が、指先が、わたしの髪を掻きあげている。
気持ちいいのよね。 口に出さなくたって、ちゃんとわかるわ。
ああ、 男の人の体って、どうして こんなに素直なんだろう・・。
「・・やめろ。」
イヤよ。 だって、あと もう少しなんだもの。
「同じことを言わせるな。」
乱暴な手つきで、無理やりに引きはがされる。
「何よ、 」 言い終わらぬうちに腕を掴まれ、壁に向かって立たされる。 「・・・!」
背後から 彼の両手で、今度は腰を掴まれる。
「そんな・・ ここで? こんなの、 」
「今までしたことがない、か?」 「・・・。」
「フン。 貴様は本当に、 」 下品な女だ。
耳元でそう囁いて、少しだけ嗤った後で、彼はわたしの中に入ってきた。
後ろから、立ったままで、体の深い所まで。
事の後。 彼はシャワーで、体の汚れを洗い流していた。
そして・・ だらりと床の上に座ったわたしの、脚を片手で開かせる。
「なによ・・ 」 「洗ってやる。 ありがたく思え。」
「あ・・・ ん 」
行為によって、むき出しにされてしまった部分。
シャワーの温度に、水圧に、その敏感な個所を刺激される。
「あ、 あ、 イヤあ・・ 」
わたしが見せる反応で、ベジータの表情は
また変わっていく。
両腕を、肩に回して懇願する。
「ここじゃイヤ・・。 ね、ベッドに・・ お願い。」
大きく舌打ちをして、彼はわたしを抱き上げた。
部屋に戻る。 濡れた体のままで、乱れたベッドに投げ出される。
覆いかぶさったベジータは、今度は両手で
脚を大きく開かせる。
彼はもう、入ってくるつもりだ。
尋ねてみたいことがあった。 だけど、
それは口にできない。
その代わりにわたしは、こんなことを言ってしまった。
「あんたって、わたしの体を オモチャだと思ってるの?」 ・・・
その一言でベジータは、我に返ったようだった。 しばしの沈黙の後、彼は
こう言った。
「だったら、どうなんだ。」
同じ質問を、そういう関係になったばかりの頃の
ヤムチャにもしたことがあった。
優しかった彼はうろたえた様子で、何度も「ごめん。」と謝っていた。
求められて 本当はうれしかったのに。
ちょっとした意地悪心で 言ってしまったことも知らずに。
だったら どうなんだ。 そう言った後、ベジータはわたしの顔をじっと見ている。
このまま何も言わずにいたら、彼はいったい
どうするだろうか。
体を離し、ベッドからおりて、部屋を出て行ってしまうだろうか。
そして、二度とここを訪れはしないのだろうか・・。
「いいわ、 それでも。」 わたしは答えた。
今 自分が考えたことにではなく、ベジータからの問いかけに対して。
ベッドの上で もう一度彼に抱かれながら、微かな声で囁きかける。
尋ねることができない代わりに、わたしは自分の方から告げた。
「好きよ・・。」
あんたと、こうすることが好き。 そして、あんたのことが好き。
彼はもちろん、何も答えてはくれなかった。
朝。
早くに目覚めた わたしは、本来ならば彼が横たわっているであろう場所に
うつ伏せてみる。
そこには 昨夜のシャンプーの香りと、彼の体の温かさが まだ残っていた。