『二十歳(はたち)の約束』

狂った果実』の続きです。

この二人、実は既に… という お話、一度書いてみたかったのです。

年齢的なモラルを気にされるかたは閲覧を見合わせてください。]

トランクスは、普段寝ている 自分のベッドに、わたしを連れて行った。

シーツの上。 

仰向けにされた 裸の胸が、指に、手のひらによって まさぐられる。

キッチンで、さっきだって 触れられた。 正確には触れさせた、だけど …。 

だけど 全然、違っている。

 

強く、弱く、だんだん 熱く。  くすぐったさと、微かな痛み。

トランクスの口元には まだ、例の果物の 甘い匂いが残っている。 

吸いこむたびに わたしからも、果汁が溢れ出てくるのが わかった。

そのことを、トランクスも口にする。  

「すごいね …。」

 

今、わたしは 彼の手に、脚を大きく 広げられている。 

恥ずかしくて仕方がないのに どうしてか、閉じることはできずにいる。 

でも その代わり、瞼は ずっと 閉じたままだ。

なのに、じっと見つめられていること、 それは わかっている。

 

「あっ、 」  

指先が、短い距離の往復を始める。 ぴちゃぴちゃと、水のような音が響く。 

トランクスは どうやら、わたしの体の奥にある、何かを探すつもりのようだ。

「…、

ほどなくして、それは見つけ出された。  

早い? あの へんな果物のせい? それとも彼が、とても慣れているせいなのだろうか。

そうじゃなければ…  わたしの体は、他の子とは少し、違っているのだろうか?

そうなのかもしれない。

だって、そこを弄んでいたはずのトランクスが あわてたように、手のひらで わたしの口を塞いだから。

「声、ちょっと大きいよ …。」   

そんなことを言いながら。

 

しばしののち、かすれた声で彼は言った。 

「ちょっとだけ、ね。 イヤになったら言って。」 

「え? あっ …!」  

今しがたまで、彼の指に苛まれていた個所。 そこを、今度は

「あ、 ん、 っ、」  

濡れた舌が、行き来する。 唇 そして、熱く湿った吐息とともに。 

「やだ、やだ、 はずかしいよ。」

「わかった。」 

短い答え。 彼は ちゃんと、わたしの言うことを聞いてくれた。

ただし、最後に 何も言わず、鋭くした舌を …  

「ひゃっ、 あ… あーーっ!!」

 

一旦 体を離した後で、彼は わたしを抱き寄せた。

「ごめんね。」 「ううん、平気。」

ベッドの上で わたしたちは、しばらくの間 そうしていた。 

鼓動と、規則的な呼吸を感じる。

このまま、眠ってしまうのだろうか。 そうなる前に、わたしは尋ねた。 

「しなくて いいの?」

「ん? 何を?」  

改めて、問い返されると恥ずかしい。 「… セックス。」

 

優しい声で、トランクスは答える。 

「いいよ。 しない。 まだ、無理だよ。」

指先を、わたしの髪に通しながら。

「わたしが、子供だから?」 「…。 まあ、そうかな。」 

「いくつなら いいの?」 「うーん、そうだなあ。」

「二十歳?」  

そのくらいになれば、 何も言われないのだろうか。 そう思っただけで、特に意味はない。

「パンちゃんが二十歳だったとしたら、もう、とっくに …」 

「? なあに? どうするの?」

「内緒。」 「えーっ、ずるいわ!」 

「声! 声、 大きい…。」 「あっ …。」

口が、また塞がれる。 だけど 今度は唇で。

果物の、強い香りは ほとんど消えて、その代わりに… 

わたしの味がした。

 

長いキスを終えた後、彼は わたしの手を取った。 

「ちょっとだけね。 多分、すぐに済むから。」 

「うん?」

「こうして、触ってて。」

さっき、ベッドに来る前に、頬張るのを あきらめた熱い物。 

軽く、握る形になる。 「動かさなくて いいからね。」

手の甲を、包み込まれる。 手のひらによって、しっかりと。

ほとんど、何もしていない。 トランクスが、自分の意志で動かしている。

「は、 あ、… っ。」  

浅い吐息、切なげな顔。 こんな彼を見た人は、いったい 何人いるんだろう。

「あ! やばいよ、パンちゃん …、」  

力が、入ってしまったらしい。

「パンちゃん …。」

次の瞬間 わたしの手は、白く ぬるい液体にまみれた。

 

「ごめん ごめん。 ちょっと、間に合わなかった。」 

そう言って、手を拭いてくれようとするトランクス。

その前に 素早く、もう一方の手の指で、掬い取って舐めてみる。 

たった今、彼が発した…

「うえ〜、何 これ。」 そう苦くはないけれど、舌にイガイガしたものが残る。 

「ヘンな味!」 「当たり前じゃないか、 バカだなあ。」

そんなことを言い合って、わたしたちは またキスを交わした。

わたしの味、 彼の味。  

最後まではしなかった。 

けれども トランクスとわたしは、しっかりと 交わって、混ざり合った。

 

肌も、そして唇も。  思い切り、これ以上できないくらいに 押し当てている。

待っててね。 わたしが、大人になるまで待ってて。

その間、ほかの人とは なるべく、できるだけ… 

わたしだって もちろん、そうするから。

でも、 それを言う前に、先に言うべきことがある。 

「トランクス、わたし … 」

終わらぬうちに、彼は答えた。  

「うん。 おれも、君が好きだよ、 パンちゃん。」

 

 

翌朝。 もっとも、宇宙空間の中では夜は明けない。 時間の上での、朝。

キッチンの流しには 例の果物のへたや種が残っていて、まだ 微かに、甘ったるい匂いを放っていた。

見えない所に、急いで捨てる。 

いろんなことを思い出し、どうしようもなく 頬が熱くなるから。

 

朝食後。 藪から棒に おじいちゃんは言った。 

「オラが寝ちまった後、なんかあったのか?」

「な、何かって…。」  答えたのはトランクスだ。 わたしは、言葉が出なかった。

「だって おめえら、なんにも話さねえからよ。 ケンカでもしたんか?」 

「あ、ああ、そうか。 いや、してませんよ。 たまたまです。 ねっ、パンちゃん。」

「うん。」  

それだけを言うのが やっとだった。

何故、子供が ああいうことをしてはいけないのか。 その理由の一つが、わかった気がした。 

いつもどおりに振舞うのが、苦しい…。

 

笑いながら、おじいちゃんは こうも言っていた。

「めずらしいなと思ってよ。 いつもはペチャクチャ、仲が良すぎるくれえなのにな。」

 

その何日か後に、わたしたちは地球に帰還した。

それからは、一言では言い表せないほど大変だった。 

地球の存亡を賭けた、大きな戦い。 しかも、一度きりではない。

あっさりとした、だけど とっても悲しいお別れもあった。

 

落ち着いてからも、トランクスとは あまり会えなかった。

名実ともにC.C.社のトップとなった彼は多忙だった。 

わたしは ただの学生だけど… 家が、というか、パパが すごく厳しくなったのだ。

はっきりとは何も言われなかった。 

けれど わたしの変化に、気付いていたのかもしれない。

 

それでも。 それでも わたしは、トランクスの恋人になった。

どういう いきさつだったか、何歳の時だったかは内緒。 

だけど もちろん、二十歳までなんて、待てなかった。

 

ベッドの上。 あの日のように抱き合いながら 彼は言った。

「もう、待ちくたびれちゃったよ。 おれの方が ずーっと、つらかったと思うよ…。」

笑いながら わたしは、トランクスの胸に顔を埋めた。

果物の 甘く強い香りの代わりに、彼の肌の匂いを、思い切り 吸いこんで。