『狂った果実』
[ GTの二人をイメージしました。
年齢的なモラルを気にされるかたは閲覧を見合わせてください。
内容についての苦情は受け付けておりませんので ご了承ください。]
わたしたちを乗せた宇宙船は その日、ある小さな星に着陸した。
目的は市場で、主に食料の買い出しをすること。
もう あと少しで、旅は終わってしまう。
こんなふうに たくさんの物を買いこむなんて、これが最後かもしれない。
そのせいもあって、市場で わたしは、必要以上にはしゃいでいた。
店先に積み上げてある色鮮やかな果物を 買って帰りたい。 トランクスに そう言って、せがんだ。
お店番をしていた おばあさんはニコニコして、ちゃんと味見をさせてくれた。
ちょっとだけクセがあった。 けれども ねっとりと甘くて、後を引く。
「…。」
トランクスは何故か少しだけ、眉を寄せていた。
だけど結局、言うことを聞いてくれた。
天然とは思えないくらい、眼を射るように鮮やかな、朱赤と黄色の果物。
それらを、10数個ずつ買い求めた。
夕食の後。
おじいちゃんときたら 黄色い方の実を、あっという間に全部食べてしまった。
「もうっ! ずるいわ、一人で! デザートとして、みんなで分けようとしてたのよ!」
いつもの調子で おじいちゃんは答えた。
「わりい わりい。 こういう ちっこいもんはさ、1個や2個じゃ 食った気がしねえんだよ。」
たしかに、切り分ける必要のない大きさだけど。
「赤い方は、おめえらで食って いいから… よ… 」
「!?」 「悟空さん? どうしたんです!?」
続けた言葉を言い終わらぬうちに、おじいちゃんは倒れてしまった。
「大丈夫!? しっかりして おじいちゃん… ?」
「…。 寝てる、ね?」
いびきまでかきながら、グッスリと眠りこんでいる。
声をかけても まったく、起きる気配がない。
仕方なく ベッドまで運んで行き、キッチンに戻ってきたトランクス。
彼は、赤い方の果物を口にしている わたしを見て、少しイヤな顔をした。
「それ、食べない方がいいよ。 悟空さんは多分、そのせいで…。
普通に売ってた物だけど、地球人、いや サイヤ人か。体質に合わないのかもしれないな。」
指についた甘い汁を、ぺろりとなめて わたしは言った。
「でも、お店でだって食べたけど、何ともなかったじゃない?」
そう。 店先で味見させてもらったのは、赤い方の実だったのだ。
「おれは何か… ちょっとヘンな感じがしたんだよな…。」
「そうなの? わたしは平気よ。 おいしーい。 果物、久しぶりだもん。」
トランクスの言うことを聞かず、わたしは果物を食べ続けた。
「だから言ったじゃないか、やめた方がいいって!」
パンちゃんときたら 結局、例の果物を10個近く たいらげてしまったのだ。
悟空さんのように眠り込んではいないけど、明らかに様子が おかしい。
とにかく ぼんやりしているし、頬は上気し、黒い瞳は潤んでいる。
「大丈夫? 具合悪いのかい?」
「ううん。」 首を、横に振って答える。 「熱いだけ。」
「熱があるのかな。 待ってて、今、冷やす物を、」
「頭じゃないの。 体の、奥… 」
「え?」 耳を疑い、思わず聞き返した。
「あのね、まず、ここと、ここと、」 「パンちゃん!」
Tシャツとパンツを、脱いでしまって指し示す。
「それとね、ここも。」
おれの手を取り、自分の胸に当てさせる。
ふくらみかけた、やわらかな … じゃなくって!
ああ、やっぱり あの果物は、催淫の作用があったんだ。 試食した時、ヘンだなと思った。
悟空さんが食べた方は催眠か。 まだ よかったかもしれない、けど…
「ダメだよ、こんなこと!」
離そうとしているのに、パンちゃんの手のひらは、それを許してくれない。
「なんだか、楽になってきたわ。 トランクスの手、気持ちいい…。」
「そう、そりゃ よかった。 じゃあ、もう、」
「ダメ! こっちも触って!」
両手の自由を奪われてしまう。
鼓動、体温、柔らかさ。 そして、しっとりと吸いつくような 滑らかさ。
いちどきに、それらが伝わってくる。
「?」 手が、パンちゃんの方から離れた。
やれやれ、助かった。 そう思っていたら!
「ちょ、ちょっと! 何やってんだよ!」
うつむき加減になりながら、最後に、かろうじて残っていた一枚を 脱いじまったんだ。
「だって、汚れちゃったんだもん。」 「え?」
「生理になったと思ったの。 でも違った。」 「あ、ああ、 そう…。」
うろたえてばかりの おれを尻目に、うつむいて、探るように指を動かしている。
強く、甘い匂いが鼻孔に届く。
「さっきの、果物の汁に そっくり。 手触りも、匂いも。」
思っていたのと おんなじことを、パンちゃんが先に言った。
汚れた指を、口に含む。 けど すぐに離してしまった。
「うぇっ…、 味は全然違うわ。」
その言い方が おかしくて、ちょっとだけ笑ってしまった。
が、そのすぐ後に、思いがけないことが起こった。
「ね、トランクスのは どうなってるの?」
「えっ? うわっ! おい!」 下着を、穿いていたズボンごと下ろされたのだ。
部屋着であるジャージーに、穿き替えていたのが まずかった。
なんて、呑気なことを考えてる場合じゃない。
「パンちゃん!こんなことして、」 「大きいのね。」
「いやあ、普通だよ。」 って、何言ってんだ おれ。
「これを、ここに挿れるのが セックスなんでしょ? こんなに大きいの、入るのかな。」
ああ、なんだ、そういう意味か… 「わあっ! ちょっと、パンちゃん!!」
もう、いったい どうすればいいんだ…。
おれの前に膝まづき、腰を押さえこんで 顔を埋めているパンちゃん。
「ほら、口の中にだって ちゃんとは入らないわ。」
そんなことをつぶやきながら。
「もう、いい加減にしようよ。 おれ もう、悟飯さんたちに顔向けできないよ。」
「平気よ。 そんなことないったら。」
頬張ることはあきらめたらしく、今は、ぎこちないながらも 舌と唇を使って愛撫してくれている。
だから、答えることができる。
「パパとママだって してるもの。 金曜とか土曜の夜よ。
いつも追い立てられるの。 早く寝なさいって。」
あはっ、そうなんだ…。 じゃなくって!
「いや、だって、悟飯さんたちは夫婦だし、ちゃんとした大人だろ。 ほら、パンちゃん!」
どうやら、むきになっているらしい。 再び、苦しげな様子で頬張り始める。
髪を掴むなんてことはできるはずがない。 仕方ない、あの手でいくか。
「ぷはっ!」 やった! どうにか、離すことに成功した。
「ひどーい、鼻をつまむなんて!」
「ひどいって、どっちがだよ。 あんなふうにしたら、出ちまうじゃないか。」
きょとんとした表情で 尋ねられる。 「何が?」
「な、何って そりゃあ、」
「わかった! 赤ちゃんのもとね。
前に学校で習ったわ。 男の子と女の子で別の部屋に別れてね、生理のことなんかと一緒に。」
「…。」 それを聞いて、おれは改めて思った。
パンちゃんって やっぱり、まだ子供なんだよなあ。
ふくらみ始めている胸や、さっきまでしてくれていた あれの最中には、
おれの同年代の子と あまり変わんないかも、なんて ちょっと思っちまったけど。
そうだ、 そういえば…
「パンちゃん、もう だいたい治った、っていうか冷めたんだろ?」
「え? あっ…。」
まだ頬が赤いけど、最初のような、熱に浮かされた感じでは なくなっている。
「シャワーでも浴びてさ、さっぱりしてきなよ。」
「… トランクスも一緒に?」
一応 大人である おれを、からかって、かき乱して。
ほんとに、この子は …
「わかったよ。 行こう。」
宇宙船内の、広くはないバスルーム。
そこで、一緒に入ったトランクスは、わたしの体を お湯で流してくれている。
笑顔を見せてくれない彼に、こんなことを言ってみる。
「あのね、わたし… あの果物のせいで ヘンになったのは本当よ。
でも、誰でも よかったわけじゃないわ。」
トランクスだから、ああしたかったの。
思い切って、小さな声で付け加えた。
なのに、やっぱり何も言ってくれない。 呆れて、怒ってしまったのだろうか?
それとも、シャワーの音に、かき消されてしまったのかもしれない。
好きだって、ちゃんと言った方がいいの?
でも そんなこと、わかってると思ってた。
それに…
自分でも おかしいと思うけど、気持ちを言葉にする方が、照れくさい気がするのだ。
裸になって、いろんなことをするよりも。
でも それは、やっぱり いけなかったらしい。
トランクスが、こんな話をし始めた。
「パンちゃんが 今度、男にああするのって いつだろうな。
16か、17くらいってとこかな? 相手は 同じ学校か、それとも道場にいる奴かな。」
「…。」
いじわる。 わざとだ。 決まってる。
トランクスじゃなきゃイヤだって、さっき言ったばかりなのに。
やや乱暴にドアを開け、掴んだタオルで ごしごし拭いて、
それを体に巻いたままでキッチンに向かった。
水が飲みたかった。
「!」 トランクスもやって来た。 でも、飲む? なんて聞いてやらない。
その時、 信じられないことが起きた。
トランクスが例の、残っていた赤い実を食べたのだ。
色鮮やかな 小ぶりの果実は あっという間に、彼の口、そして胃の中へと消えていく。
「どうして? あっ… 」
腕を掴まれ、引き寄せられた。 バスタオルが、床に落ちた。
唇が、ふさがれる。
そうだ、さっきは しそびれてしまったキス。
彼の舌に まだ残る、果汁の甘さが流れ込んでくる。
そして…
わたしの中からも また、果汁に似たものが、溢れだしてくるのが わかった。
軽々と 抱きかかえられて、いったい わたしは どこへ行くんだろう?
食事の時からは、だいぶ時間が経っている。
おじいちゃんが、目を覚ますかもしれない。
だけど もう、先のことは考えられない。
窓の外には夜空、ではなく 宇宙の、限りない星空が広がっている。
地球に着くまでは、まだ時間がある。