『サンタと天使の笑う夜』
[ 『ベッドで待つクリスマス』の続きのお話です。
わがままトランクスにハラハラさせられちゃうパンが大好きなんです・・・。 ]
眠りから覚めた わたしは驚いた。
いつの間にか、朝になっていた。 そして、トランクスが戻って来ていた。
気で、絶対にわかると思っていたのに・・・。
わざと消しているわけではない。 弱いから、気付かなかったのだ。
トランクスは、とても 疲れた顔をしていた。
「おかえりなさい、 お疲れ様。 ・・大丈夫?」
「ただいま。 ごめん、2〜3時間したら また行かなきゃならない。
仮眠するって言って、戻ってきたんだ。」
「そうなの・・。」
がっかりした気持ちを、ぶつけることなど できなかった。
トランクスの顔を見てしまったら、そんなことは とてもできない。
起き上がった わたしは両手を伸ばして、彼のネクタイをほどいた。
昨夜 贈ったプレゼント。
そして 数時間前、この部屋を出ていく前に、わたしが この手で結んであげた。
上着は既に脱いでいたから、ワイシャツのボタンを、一つ一つはずしていく。
「・・昨日がイブで、今日が ほんとのクリスマスなんだよな。」
「そうね。」
クリスマスの朝。
子供の頃は、枕元に置いてあったプレゼントの包みを わくわくしながら開いた。
でも、 今は・・・
「パンってさ、リボンや包み紙をとっておくタイプだろ。」
「うん。 クリスマスの時期の物は、特にきれいだもの。」
「おれは違うな。 いつも あせって、ビリビリに破いちまった。」
そう言うと トランクスは やや乱暴な手つきで、わたしが着ていたパジャマを脱がせた。
さすがに、破いたりは しなかったけど。
ベッドの上で、二人して 着ていた物を脱いで。
準備は万端だったけど、さすがに風呂に入りたかった。
パンを抱きかかえて、バスルームに向かった。
ボタン一つで、あっという間に お湯が溜まる。 さすがはC.C.社製のバスシステムだ。
徹夜明けのおれを気遣ってか、パンは その優しい手で、髪と体を洗ってくれる。
「あー・・ 気持ちいいな。 天国にいるみたいだ。 おれ、すっごく幸せだよ。」
「もう。 大げさね。」
「ほんとさ。 ・・じゃ、あと もう少し サービスしてもらおうかな。」
「・・・。」
後ろから抱きしめて、柔らかな胸を 揉みしだく。
甘く かすかな、溜息が耳に届く。
下の方、茂みの奥に片手を伸ばすと、そこは もう、お湯とは別のものが溢れていた。
「パン・・。」
バスタブの中、壁に手をついて立たせて、そのまま 一気に入り込もうとした。
だけど・・・
「お願い、トランクス。 これ、 イヤなの・・・。 」
どうして? いや、尋ねなくても わかる。
別れる前、 パンの気持ちがわからなくて、苛立っていた頃。
開いても 開いても、すぐに 閉じてしまおうとする体に業を煮やし、
いろいろと強引なことを しちまった。
そのせいだと思う。 今でも、ごくたまにだけど、 身を固くすることがあるんだ・・・。
「わかった。 ごめんよ。」
ベッドに戻ろう。 それなら いい?
そう付け加える前に、パンは向きを変えた。
彼女の方からのキス。
貪るような それの間中、パンの片手はずっと、おれの・・・
息が浅くなり、声が出ちまいそうになる。
「我慢できなくなるよ・・・。」
それには答えず、パンは おれを、バスタブの底に座わらせた。
いつの間にか、お湯は抜かれていた。
おれの両肩に手を置いて、向き合う形でゆっくりと、パンは腰を沈めていった。
「トランクスの顔が見えないのは、イヤなのよ・・。」
しっとりと、押し付けられた肌が 濡れている。
お湯だろうか、汗だろうか。 そんなの どっちだっていい。
もう 限界だ。 かわいい パンを、両手で しっかりと押さえこむ。
我を忘れるほど激しく、腰を動かした。
パンの唇が動く。 いく、って言うのかと思った。 けど、違った。
好き、と 小さく囁かれて、間もなく おれは達してしまった。
「風呂場でするとさ、そのまま洗えて便利だよな。」
「やだ、 もう。」
そんな やりとりの後、わたしたちはベッドルームに戻った。
「トランクス、 少し寝た方がいいわ。」
「うん・・。 わかったよ、じゃあ パンが起こして。」
引き出しを開けて、手渡そうとしたパジャマではなく、
昨夜 わたしが着ていたものを トランクスは身につけた。
ベッドに入った彼は言う。 「パンは 眠くないよな。 でもさ、おれが寝るまで ここにいてよ。」
「甘えん坊ね。 でも、いいわよ。」
「その後はTVでも見てて・・音楽も いろいろ聴けるよ。
そうだ。電話 壊しておいて。 かめはめ波かなんかで、パーっとさ。」
「トランクスったら・・。」
まさに その時。 電話が鳴ったのだ。
「会社からじゃないかもしれないわ。 わたし、見てくる。」
けれども ディスプレイに表れたナンバーは、C.C.社のものだった。
「はい、少々 お待ちくださいませ。」
仕方なく、子機の方を持って行く。
受け取ったトランクスは、これ以上できないくらい 不機嫌な声を出した。
「おれだ。 なんだよ、まだ3時間経ってないぞ。 少しは休ませてくれよ。 ・・え?」
声のトーンが変わった。
「本当か? そうか、 よかった・・。 いや、もう いいよ。 よく やったな。 うん、うん。」
表情が、みるみるうちに明るくなる。
どうやら、良い知らせのようだ。 わたしも ホッとしてしまう。
「それじゃ おれは、今日は休ませてもらうからな。 じゃあ! あ、そうだ。」
何かを思い出したらしい。
「最初に電話に出た女性な、おれの婚約者なんだよ。
パンっていうんだ。 ちゃーんと、覚えておけよな。」
そんなことを言って、トランクスは電話を切った。
「わざわざ 言わなくてもいいのに・・。」
「大事なことさ。 それより、」
強い力で引き寄せられる。
「・・眠らなくて いいの?」
「いいよ。 あとで一緒に、昼寝しようよ。」
「せっかくの お休みなのに? 寝過ぎて、夜になっちゃうかもしれないわよ。」
「それなら それで いいよ。 夜も一緒にさ・・」
「もうっ、 そればっかり。」
わたしたちは笑い合い、ベッドの上でも抱き合った。
しばらくのち。 またしても電話が鳴った。
今度はC.C. ・・・ 会社ではなく、家の方だ。 ブラちゃんからだった。
『メリークリスマス。 携帯はどうせ 出ないだろうと思って、こっちにかけちゃった。
ねえ、パンちゃんと一緒に、夕飯だけ食べに来ない?』
「行かない。 邪魔すんなよ。」
ああ、 また、そんなこと言って・・・。 昼寝を中断されたせいで、特に機嫌が悪いのだ。
『食事だけして、早めに帰ればいいじゃないの。 ゆうべも一緒だったんでしょ?』
「・・・。 正月は ちゃんと行くよ。 パンを連れてな。
チビどもには、クリスマスプレゼントが無い分、お年玉に上乗せしてやるって言っといてくれ。」
一方的に通話を終えると、トランクスは拳を使って、本当に 電話機を破壊してしまった。
それを見て わたしは言った。
「トランクスって、ほんとに・・・」
「ほんとに、何?」 「・・ううん。」
「わがまま? 強引? ワンマン? スケベ?」
「そこまでは言わないけど・・・、」
でも、 ぜーんぶ 当たり!
呆れて、たしなめて、しょちゅう ハラハラさせられながら、寄りそって、見守る。
それって まさに、皆がイメージする、サイヤ人の奥さんだ。
だけど、おばあちゃんやブルマさん、それにママと違っているのは、
わたし自身にも、サイヤ人の血が流れているということだ。
くたくたになるまで抱き合えば、また、おそらく眠ってしまう。
昨日食べつくしてしまったから、冷蔵庫の中身は寂しい。
夜に やっぱり おなかがすいて、二人でC.C.を訪ねて行ったとしたら。
笑うだろうけど 多分、ブラちゃんは怒らないと思う。
だって 彼女も わたしと同じく、サイヤ人の奥さんであり、
彼女自身にも その血が流れているのだから。