221.『父さんと母さん』

[003.『できちゃった!』のつづきです。]

妊娠がわかって、産むって決めて、父さんと母さんに話をした。

 

二人とも、一瞬何か言いたそうな顔をしたけれど、すぐに祝福してくれた。

応援するって言ってくれた。

 

うれしかった。 ありがとう。

そしてごめんね。 ちゃんとお嫁にいかなくて。

なるべく心配かけないように、仕事のほうもがんばるから。

 

目立たないって、母さんのほうが気にしていた わたしのおなか。

それでもずいぶん大きくなって、この子に会える日がやってきた。

 

ベジータはその日、どこにいるのかわからなかった。

そんな父親に似たのかどうか、この子はすんなり生まれてきた。 元気いっぱいで。

 

大きな泣き声。  強い力。  そしてやっぱり、すごい食欲。

病室のベッドの上で、おっぱいをあげていたら

母さんが椅子を窓際に寄せて、「ここで・・・」と目配せをした。

わたしは笑いながら、椅子に腰掛けた。 この子を抱いて、授乳したまま。

 

母さんが開けてくれた窓の外には、ベジータが宙に浮いてこちらを見ていた。

「名前、トランクスにしたわよ。」   「・・・・。」 

 

はだけたわたしの胸元が気になるらしく、赤くなって目を逸らす。

「すごくたくさん飲んでくれるの。 夜もぐっすり眠ってくれるわ。

 だから、わたしも元気よ。」

 

何も言わない。

「シッポ、切ってもいい? 大猿になったら困るし、

 服に穴を開けなきゃならないから・・・。」

「好きにしろ。」

 

やっと返事をしたと思ったら、もう飛んでいこうとしている。

「いってらっしゃい。」

 

空いてるほうの手を振り終えて、腕の中の息子に話しかける。

「素直じゃないわね。  あんたの父さんは・・・。」

 

その頃ブルマの母は、孫に会いに来た自分の夫が

病室に入るのを笑顔で制した。

 

娘と同じ色の瞳には、うれし涙が浮かんでいた。