「よぉ。 久しぶりだな。」
屈託なく笑う、宇宙最強の男。 その両隣には、かつて戦友だった2人もいた。
「悟空・・・。 クリリンとヤムチャまで。
ああ、瞬間移動か。どうしたんだ。 何かあったのか。」
クリリンとヤムチャは、何と切り出すべきかためらった。
その微妙な空気の中、悟空が口を開いた。
「クリリンが、都で偶然ランチと会ってさぁ。
18号が、ランチはニンシンしてんじゃねーかって。 相手は、おめーなのか?」
あまりの直球に固まる一同。
あわててクリリンが付け加えた。
「い・・・いや、本人に確かめたわけじゃないんだけど・・・。
でも、ちょっとおなかが目立ってきてたかなって・・・。 彼女と、続いてたのか?」
天津飯は、考え込んだような表情でうなずいた。
「心当たりはあるってことか。 じゃあどっちにしても、会って話さないとな。」
ヤムチャが言った。
「何を言ったらいいか、わからないんだ、俺は・・・。」
目を伏せて、天津飯は呟いた。
「俺は中途半端な奴だ。
クリリンのようにも、悟空やベジータのようにもなる自信がない。」
クリリンとヤムチャは言葉が出なかった。
その気持ちを誰よりも理解できたからだ。
「オラは、若くて何も知らねーうちに、チチと一緒になっちまったから、
よくわかんねーけど・・。」
悟空は続ける。
「家族は、いいもんだぞ。 子供はかわいいし、すげーおもしれーぞ。」
かざらないその言葉に、場の空気が少しほぐれた。
「そうだな。愛する嫁さんや子供がいるから、力が湧いてくるってこともあるよな。」
クリリンが言い、
「俺は、反面教師になっちまったかな。」
ヤムチャが笑った。
「だけど以前、ブルマが言ってたんだよ・・・。
悟空が死んだ時、もう用が無くなったはずの地球に
ベジータが残って、自分とトランクスのそばにいてくれたことが、何よりうれしかったって。
二人で話し合って、少し譲歩してやれば、案外うまくいくんじゃないのか?」
なかなか説得力のある言葉だった。
やはり、この2人と一緒に来て正解だったとクリリンは思った。
皆が帰ったその夜、餃子が言った。
「天さん、ランチさんに会ってきなよ。」
「餃子・・・。」
「ボクは天さんもランチさんも、どっちも好きだよ。
2人が決めたことなら、ボクはその通りにする。」
その言葉で心を決めた天津飯は、
名刺に書かれたランチの勤め先に向かうべく、冬の近付く都を目指した。
[ その5に続く ]