『夢のあと』 その4

「よぉ。 久しぶりだな。」

 

屈託なく笑う、宇宙最強の男。  その両隣には、かつて戦友だった2人もいた。

 

「悟空・・・。 クリリンとヤムチャまで。 

 ああ、瞬間移動か。どうしたんだ。 何かあったのか。」

 

クリリンとヤムチャは、何と切り出すべきかためらった。

その微妙な空気の中、悟空が口を開いた。

 

「クリリンが、都で偶然ランチと会ってさぁ。 

 18号が、ランチはニンシンしてんじゃねーかって。 相手は、おめーなのか?」

 

あまりの直球に固まる一同。 

あわててクリリンが付け加えた。

「い・・・いや、本人に確かめたわけじゃないんだけど・・・。

 でも、ちょっとおなかが目立ってきてたかなって・・・。  彼女と、続いてたのか?」

天津飯は、考え込んだような表情でうなずいた。

 

「心当たりはあるってことか。 じゃあどっちにしても、会って話さないとな。」

ヤムチャが言った。

 

「何を言ったらいいか、わからないんだ、俺は・・・。」

目を伏せて、天津飯は呟いた。

 

「俺は中途半端な奴だ。 

 クリリンのようにも、悟空やベジータのようにもなる自信がない。」

 

クリリンとヤムチャは言葉が出なかった。

その気持ちを誰よりも理解できたからだ。

 

「オラは、若くて何も知らねーうちに、チチと一緒になっちまったから、

 よくわかんねーけど・・。」

悟空は続ける。

「家族は、いいもんだぞ。 子供はかわいいし、すげーおもしれーぞ。」

かざらないその言葉に、場の空気が少しほぐれた。

 

「そうだな。愛する嫁さんや子供がいるから、力が湧いてくるってこともあるよな。」

クリリンが言い、

「俺は、反面教師になっちまったかな。」 

ヤムチャが笑った。

 

「だけど以前、ブルマが言ってたんだよ・・・。 

 悟空が死んだ時、もう用が無くなったはずの地球に

 ベジータが残って、自分とトランクスのそばにいてくれたことが、何よりうれしかったって。

 二人で話し合って、少し譲歩してやれば、案外うまくいくんじゃないのか?」

 

なかなか説得力のある言葉だった。

やはり、この2人と一緒に来て正解だったとクリリンは思った。

 

 

皆が帰ったその夜、餃子が言った。

「天さん、ランチさんに会ってきなよ。」

「餃子・・・。」

 

「ボクは天さんもランチさんも、どっちも好きだよ。

 2人が決めたことなら、ボクはその通りにする。」

 

その言葉で心を決めた天津飯は、

名刺に書かれたランチの勤め先に向かうべく、冬の近付く都を目指した。        

[ その5に続く ]