『甘い予感』
[ ARINA様のサイト「KIMAGURE」の2万ヒットリクエストの際に
いただいた『一線』の、ひまママ視点によります続編です。
GT風な 強気なパンと優しいトランクス、書いていて楽しかったです!]
「どうなっても 知らないからな。」
そう告げた後 おれは、パンちゃんを抱きかかえたまま 廊下を歩いた。
そんな姿で誰かに出くわしたら、言い訳なんて できやしない。
でも その時は、そうせずには いられなかったんだ。
部屋に戻って扉を閉めて、ベッドの上に彼女をおろす。
パジャマのボタンを、ひとつひとつはずしていく。
さっきは散々、押し問答をしたベッド。
同じ場所で、おれは結局 こんなことをしている・・・。
黙ったままのパンちゃんは、おれの目を見ようとしない。
やっぱり 後悔してるんだろうか。
自分の方からするのと、男の手でされるのは違うって思っているんだろうか。
ボタンをはずし終えた。 パジャマの上衣を取り去る前に、念を押す。
本当にいいの? と尋ねる代わりに。
「イヤだったら、ちゃんと言うんだよ。」
わずかな沈黙の後、パンちゃんは きっぱりと言った。
「イヤ。」
そして訴える。 身につけている物を 自分の手で、上も下も脱ぎ棄ててしまってから。
「してくれなきゃ、 イヤなの・・。」
その一言で おれは観念し、仰向けにした彼女の唇に 自分のそれを深く重ねた。
長いキスを終えてから、首筋と胸の やわらかな匂いを吸い込んでいく。
痕がつかないよう 気をつけながら 唇を押し当て、
手のひらと指先でも その感触を確かめてみる。
「・・・っ
」
喘ぎとは まだ呼べないような、微かなため息。
しばらくのち、おれは彼女の脚を開かせ、二本の指で敏感な部分を探ってみた。
すると、彼女が口を開いた。
トランクスは その時、指先を自分の舌で濡らしていた。
「・・いつも そうしてるの?」
ちょっと困った顔をしてから、彼は わたしに向かって尋ねた。
「痛い?」 「ううん・・。」
わたしからの質問には答えなかった。 こう付け加えてみる。
「痛くないけど、 」 「ん?」 「くすぐったい、みたい・・。」
「そうか。」
トランクスは何故か、ほんの少しだけ 笑っていた。
その後も、彼は うんと丁寧にわたしの体を開かせた。
くすぐったさが いつの間にか、気持ちよさに変わってくるまで。
ちょっと大変だったけど、 まぁ どうにか 事を終えた。
『痛くてイヤになったら言ってよ。 やめるからね。』
何度か声をかけたけど、パンちゃんは結局、
『ダメ。 やめちゃイヤなの・・。』 その一点張りだった。
もう、とっくに夜が明けている。
ベッド脇のライトをつけていなかったことに、今頃になって気付く。
おれの胸に顔を埋めて、パンちゃんはつぶやいた。
「そんなに 痛くなかった・・。」
そして、こんな話をしてくれた。
同じ学校の女の子たちの会話、 いわゆるガールズトークというやつだ。
初体験は上手な人としたい、と言った子がいたそうだ。
それに対して、ある子が答えた。
『相手の女の子のことが好きで、大切に思ってるから 上手にできるんだと思うわ。』
うん、そうだよ。 いいこと言うな、 その子。
痛くないように、 気持ちよくなってくれるように。
男だって頑張ってるんだよ。
なーんてことを、つややかな黒髪を指で梳きながら考えていると・・・
パンちゃんは こんなことを尋ねてきた。
「トランクスの初めてって、いつだったの?」
彼の上にうつ伏せたまま、思い切って口にしてみる。
「・・大学に入る少し前、かな。」
今のわたしと そう変わらない年だ。 誤魔化したりはせず、ちゃんと答えてくれた。
「どんな人だったの?」 「すっごく かわいい子だったよ。」
黙っているわたしの頭をなでながら付け加える。
「パンちゃんと おんなじくらいにね。」
「今は、いい思い出・・?」 「そのとおり。」
彼のその一言で わたしは何故か、胸の奥をぎゅっと掴まれたような気分になった。
「イヤ。」 「えっ?」
どうしてなんだろう。 涙があふれてくる。自分ではどうすることもできない。
「わたしは 思い出になるなんてイヤ。 絶対に ・・・ 」
トランクスは驚いた様子で、 だけど しばらくの間、わたしの背中をさすってくれた。
そして、泣きやんだ わたしを仰向けにした後 こう言った。
「おれだってイヤだよ。」
おれだって 今日のこと、思い出になんてしたくないよ。
ああ、ここがおれの部屋じゃなければいいのに。
そしたら今日は1日中、彼女を抱きしめて過ごすのに・・・。
それなのに 無情にも、目覚ましのアラームが鳴り響く。
「あーあ、イヤだな、起きるの。 パンちゃんと離れたくないよ。」 「わたしだって。」
窓から差し込む 朝の光を浴びながら、おれたちは もう一度キスをした。
「ね、 夜だったら電話してもいい?」 「いいよ。 出られない時もあるけど・・。」
「そしたら、また かけるわ。 メールもする。」
かわいいパンちゃんの、かわいい笑顔。
女の子からの電話を待つなんて 久しぶりだ。
おれたち、 これから付き合うことになるのかな。
ブラには、根掘り葉掘り聞かれるだろうな。
悟天の奴は 何て言うかな。
母さんは喜んで、父さんは皮肉を言いそうだ。
悟飯さんは・・・ ちょっと読めないんだよな。
とりあえず、何があってもいいように トレーニングもしておかないと。
いろいろと、大変そうだな。
だけど そういうことも含めて、これがおれの運命なのかもしれない。
なんて思ったんだ。