135.『一時のあやまち』
[ 第9話です。 担当はMickey様です。]
昼食にお肉なんて、ものすごくお腹が苦しい。
でもせっかくベジータが残しておいてくれたものを食べ残したくはなかった。
多分これも私のため。
じゃなきゃベジータに限って食べ残しなんてありえない。
よっぽど嫌いなものじゃなければ。
自分が調理する時にわざわざ嫌いなものを選んだりもしないだろうし、
お肉なんて大好物以外の何物でもないのだから。
せっかくのお休みを・・・といっても突然休むことになったんだけど、
これからの時間どうして過ごそうか重さを感じるお腹を擦りながらソファに沈んだ。
テレビに再び重力室の様子を映し出してみたが、
熱心にトレーニングを続けているベジータはもう夕飯時まで出てはこないだろう。
トランクスはパオズ山に行ったきり、同じく夕方まで帰って来ない。
何をするでもないこの時間をただボーっとモニタを眺めていると眠気に襲われた。
せっかくの休みをこのまま眠ってしまうのはもったいなくて、
何度か頭を振ってみるが意味をなさなかった。
「・・・・・・・・・」
視線を感じる。
いや、正確に言えばカメラが起動しているのだろう。
セルとの闘いにむけてトレーニングを続けている頃は、良くこうして見られていた。
少しでも早く強くなりたい自分にとって、邪魔で仕方のないことだった。
思い通りにならない苛立ちも相まって何度壊してやったかわからない。
それなのに、今では特に何も感じない。
慣れ、か?
それもあるが、それだけじゃないような気もする。
・・・・・・気を許しているとでもいうのか?
はっ!バカな。
自問自答を繰り返し、ちっともトレーニングが身に入らない。
今日は予定が狂い過ぎた。
盛大に舌打ちして、重力コントロールスイッチを切った。
一気に軽くなる体。
それと同時にあふれ出す汗。
重力の負荷を体に感じているだけでもこうなのだから、
なんて有効なトレーニング方法なのだろう。
それを考え出したあいつの親は褒めるに値する。
あいつも・・・・か?
――――――っち。
シャワーを浴びてリビングへと足を向ける。
一番初めに目に入ったのは大きなテレビ画面に映し出された誰もいない重力室。
こんなものを見ていても何もおもしろくもないはずなのに、
ソファの肘掛から見えるブルマの頭は少しも視線をずらさないかのように微動だにしない。
あえて気にも留めず喉の渇きを潤す為にキッチンへと入る。
冷蔵庫からペットボトルを取り出せば、入れておいた肉がなくなっていた。
思わず自称気味に笑いが零れた。
らしくない―――
誰かのために何かをしてやるなんて有り得ない。
言うなれば一時の気の迷い。
そう自分を正当化するしか手立てはない。
とてもじゃないが自分で自分を認められない。
そんなくだらない考えを振り払うかのようにペットボトルの残った水を一気に煽り、
再びリビングへと戻ってきてみてもブルマの様子は変わってなかった。
あまりにも不自然すぎる状況に不思議に思って回り込んでみれば、
大きな青い瞳は閉ざされていた。
[ 第10話『・・・そっくり』に続く ]