ベジータが作ってくれたお好み焼きは本当においしくて、

今まで食べた中でも一番といっても過言ではない。

 

それでもやっぱり1枚を食べきれば私は十分にお腹一杯なのに、

作ってるベジータ本人も、トランクスも

途中で数えるのを諦めてしまうほどの枚数を食べ続けていた。

どんなにサイヤ人を調べたって地球人の胃との違いなんてないのに、

この食欲は一体どこから湧いているのだろう?

そんな二人に呆れてしまうしかない。

 

けど、その間もベジータは休むことなく作り続けていたので遠目にじっと見続けていた。

こんな機会滅多に訪れることじゃないと断言できるから。

それに、見珍しいせいなのも手伝ってかものすごくステキに見える。

 

闘ってる姿なんて、正直見たことない。

トレーニングしている時の姿しか知らないけど、

その顔よりもよっぽどステキなんじゃないかとすら思う。

己の力を高めるために鍛えぬくのとは違う真剣さ。

そう。例えるなら・・・趣味に没頭するみたいな感じ?

楽しんでやってるんだろうことが見てるこっち側にも伝わってきていた。

 

もしかしたら、向いてるんじゃないかしら?

これからもこうして作ってくれないかしら?

なんてことを考えながらベジータに見入っていれば、パチリと視線が合った。

「なんだ」

「貴重な映像を脳裏に焼き付けているのよ」

「・・・くだらん」

「そんなことないわよ。そんなに見られるのが嫌ならまた作ってくれる?」

「断る」

「あ〜あ、残念。こんなにおいしいのに。

ベジータ料理の才能あるんじゃないの?ねぇ、トランクス」

「うん!すっごくおいしい!パパ。もう一枚食べたい!!」

「食べならが話すな!大人しく座って待ってろ」

「うん!」

「ほらね」

「フン。お前よりは出来るだろうな」

「う・・・」

「・・・・・・・・・・・・気が向いたらな」

 

一瞬なにが?って聞きそうになった。

でもそれが指しているものが自分が望んでいることなんだろうことだと

分かってしまえば緩む頬を抑えることが出来ない。

 

今日はなんてうれしいこと続きなんだろう。

もしかして一生分のうれしいことが尽きてしまうんじゃないか?

なんて非現実的なことすら考えてしまうほど。

そうなれば今度は涙が滲んできた。

口元は笑ってるのに目元は泣いてるなんて、

第三者が見れば恐ろしいこと極まりない今の姿を見られたくなくて

未だ食べ続けている二人から顔を背けた。

 

本当にこの男は・・・

何も気にかけていなさそうで私のこともトランクスのこともちゃんと見てくれている。

こんなに表立った愛情を向けられていないのに音をあげない自分自身に驚くけど、

こういうことなんだ。

どこまでも私の心を捉えて離さない男。

 

これで、コレが来なければ最高だったのに・・・!

 

さっき、妊娠していなかった確認が出来てしまったコレのせいでお腹が痛む。

今回のコレは腹痛がひどいようだ。

椅子に座っていても痛みが治まりそうもないので

リビングのソファに横になろうと立ち上がれば、軽くフラリと立ち眩んでしまった。

 

「ママ!」

「ぁ・・・大丈夫よトランクス。ちょっとソファに横になってくるわね」

「・・・・・・」

「パパ、ママ血の匂いがする・・・ケガ、してるのかな?」

「違うな。トランクスが心配することじゃない」

「そうなの?でもなんで血の匂いがするの?ねぇ、パパ理由知ってるの?教えて!ねぇ!」

「理由はブルマに聞け。それよりさっさと食べろ!いらんなら片付けるぞ」

「えぇ?!た、食べるよ!!」

 

横になりさえすれば、痛みは和らぐ気がする。

いつもは仕事があるから我慢できなければ痛み止めの薬を飲んでしまうが、

こうしてる分には薬を必要とはしないようだ。

ただ・・・

今まで気にしたことなかったが、今日はママがいない。

ということはトランクスをお風呂に入れるのは、私?

今のこの状況が続くならやっぱり無理だし、

何よりこの状態で一緒にお風呂に入ることに抵抗がある。

 

視線の先には鉄板の前に立つ二人の姿。

そんな姿を見ていれば思いつくことは一つだけ。

 

ベジータがトランクスのこと入れてくれないかしら?

第14話 急接近 に続く

182.『呆れた食欲』

第13話です。 担当はMickey様です。]