043.『パパとトラ』

第11話です。 担当はMickey様です!

『お好み焼き』

そう書かれた紙を、何が楽しいのかわからないが

うれしそうな顔で突き出してみせるトランクス。

 

書かれている内容は確かに難しいことではない。

ふぅと一つ息をついた。

日も暮れたこの時間、いつもなら食事が並ぶであろう。

自分も腹が減っていると言えば減っている。

 

・・・・・・・・・っち。

今日はなんだかキッチンに立ってばかりだ。

1日のリズムをとことん狂わされ続けている。

その元凶は今スヤスヤと眠っていると言うのに。

もう、苛立ちを通り越して呆れるしかできない。

これもあいつの策略か?

そんなわけないと思いながらも、今まで何度あの女の術中にハマったかわかったものじゃない。

 

「トランクス」「え?」

「鉄板を用意しろ」「てっぱん?」

「バーベキュー用のだ。デカイのがあったはずだろう?」

「あ〜・・・でもなんで?」

「ここでチマチマ作るのも面倒だ。いいから用意しろ。それとも飯抜きにするか?」

「い、いやだよ!今すぐ持ってくるから!!」

 

バタバタという音を残して走り去るトランクスを見送り自分はキッチンに入った。

冷蔵庫を開けて食料を漁る。

あんなもの、基本なんでも良いのだろう?

ある意味、勘のようなもので適当に材料を取り出し下ごしらえをする。

これを失敗する要因が見受けられない。

 

「パパ〜!準備できたよ」

ベランダに設置したらしいバーベキュー用の鉄板。

トランクスが難なく設置できたということは、何度も使っているのだろう。

そういえば良く奴らが来ていた気もするが、気にも留めていなかった。

 

「火はつけないのか?」

「いつもママが点けるから。火は危ないって言うんだ」

「火種なんて必要ないだろう。飛べるんだろう?」

「え・・・?うん」

「ならお前が点けろ」

「?・・・どうやって?」

「は?・・・わからんのか?」

 

コクンと頷くトランクスに、こっちが頭を傾けたいくらいだ。

飛べるのに、わからないというのはどういうことだ?

そんなこと教わらずとも判るだろうに。

「気を手に集中させろ。それを火種にすれば良いだろう」

「あ!そうか」

「ただし、加減することを忘れるな。鉄板ごと吹き飛ばしてしまえば飯どころではなくなる」

「うん」

手のひらに気を溜め集中させているトランクス。

飛べるだけあって、やはりというか苦労もなくポンと出来上がった。

 

「ほぉ」

思わず声が出てしまった。

ただ、そのまま放てば確実に鉄板ごと吹き飛ぶ。

どうするのか、見ものだな。

ウンウンとうなり声を上げてどうにか気を抑え込んだトランクス。

額には汗が滲んでいた。 「で、きた・・・」

指先に小さく溜め込んだ気を薪に向けて放てばパチパチと言う音を立てて燃え出す。

トランクスはうれしそうにこちらに顔を向けてきた。

「パパ!ボクにも出来たよ!!やったぁ〜すごいや。すごいよね?ね?」

「・・・・・・」

 

返すべき言葉がわからない。

ただ、こんなこと出来て当然だとそう思うだけのはずなのに、

分けのわからない感情が溢れる。

 

一体なんだって言うんだ?

第12話『お好み焼き』に続く