226.『日々の始まり』
[ リレー小説の第1話です。 担当はMickey様です!! ]
フッと目が覚めた。
正確に言えば目が覚めてしまったのだけど。
目覚ましが鳴る前に目が覚めるなんてことは滅多にあることじゃない。
頭の上にあるはずの目覚ましを手に取ろうと、もぞもぞと布団から這い出た。
時間を確認すれば、目覚ましが鳴るちょうど30分前。
その30分がもったいないと思うのに、
パッチリと目覚めてしまった頭はとても二度寝が出来る気配なんてない。
仕方がない。起きようかな。
う〜んと伸びをしてごろんと反対側に寝返りを打ったところで驚いて固まった。
まさか、まだベジータが隣で寝てるなんて思っても見なかった。
いつも自分よりも早く起きて朝から重力室でトレーニングをする。
いつ起きているのかも分からないくらいなのだから、
目覚ましが鳴るずっと前なんだろうと思っていた。
その彼が今目の前にいるということだけでも信じられない。
上半身を少し起こして、未だ眠ったままのベジータの寝顔を覗く。
鼻筋の通った整った顔。
あれほど闘ってきて、顔に傷がないことに感心する。
こうして覗いていても目を覚ます様子はなかった。
いつからだろう?こんなに無防備に眠るようになったのは。
それこそ、この家にやってきたばかりの頃は座ったまま眠っていた。
何が起きてもすぐに反応できるようにしていた。
この地球にそんな警戒する必要なんてないって何度言っても
そのスタイルを変えようとはしなかった。
それなのに、今は・・・きっと殺そうと思えば殺せる。
いや、変な意味じゃなくて、それくらい安心しきってくれていることが純粋にうれしい。
ここはベジータにとって安心できる場所なんだと、認めてもらえている気がするから。
それにしても・・・
ベジータは眠ったときの格好のまま全く動いていないのではないかと思うほど、
まっすぐに眠っている。
いつだったか、寝返りもしないのかと思って聞いてみたことがあったが
「お前の寝相が悪すぎるだけだ」と言われてしまった。
それが真実だからこそ言い返すことも出来なかったのだけど・・・
でも、寝てるときのことまで責任は持てない。
―――あれ?
思えば、ベジータと眠るようになってからベッドに落ちつことがなかったような気がする。
思い当たる理由を考えてみても、やっぱり寝てるときのことで分かるわけもないから
考えるのを止めて改めて顔を覗き込む。
未だ眠り続けているベジータの頬に指を滑らせても、
規則的な寝息を立て微動だにしないベジータに、小さく笑いを零した。
普段なら絶対こんなこと、されるがままになるわけないのに、今は抵抗すらしてこない。
これは寝姿を見れる自分の特権なのだろうけど、
なかなか寝顔を見れることはそうないのだから楽しくて仕方がない。
髪に指を通してみたり、意外に長いまつげに触れてみたり、耳の輪郭をなぞったり―――
起きているベジータには絶対に出来ないようなことを、ここぞとばかりにやってみる。
時折、やっぱりくすぐったさを感じるのか、
微かに身を捩る素振りを見せるがまだ起きそうにない。
一通り出来たという達成感を得られたところで、もう一度時計を見ると、
目覚ましが鳴る10分前。
秒針が12の位置にちょうど重なったとき、
目覚ましからベジータへと向き直ればまるで狙っていたかのようにパチリと目が開いた。
[ 第2話 『朝』 に続く ]