どうしよう・・・

教授の愚痴はもう治まった。

治まったはいいが、別の面倒事ができた。

 

Mr.サタンは世界の英雄。

それこそ老弱男女問わず世界中のだれもが憧れる存在。

その人物と自分が知り合いだと言うことを知った教授は意気揚々と同席を求めた。

今の状況なんて全く察っすることなく。

 

結婚していることはもちろん知っている。

そしてMr.サタンの娘が結婚したということもニュースになっていたから知っているだろう。

だけど、きっとそれとこれとは一致していない。

結婚したのは教授と出会う前の話。

知られてしまえばそれでいいし、

わざわざ自分の妻はMr.サタンの娘だなんて言う必要もないと思っていた。

だから今、この空気を読んでくれることはない。

今までに見たことないほど子供のようなキラキラした目を向け、

Mr.サタンの言葉を今か今かと待っている様子だ。

あ、頭が痛い。

 

「あ、あの・・・」

「悟飯くん、こちらのお方は誰かね?」

「あ、お世話になっている教授です」

「その方の娘をもらうつもりなのか・・・?」

「!!・・・」

 

正直、今までMr.サタンを恐ろしいと思ったことは、ない。

力はもちろんのこと、ビーデルの父だという思いがそう思わせていたらしい。

だが、ドスの聞いたその一言で思わず口を噤んでしまった。

だけど、その答えに言い淀む理由などない。

さっき出た教授のその一言にもきちんと答えるつもりだった。

「そんなわけありません。ボクにとって妻はビーデルだけです。

誰に何を言われても二人を捨てるだなんてことあり得ませんよ。お義父さん」

「お、おとう・・・さん?」

 

さっきも口にしていたはずなのに、

驚いた表情で自分とMr.サタンを何度も教授は見比べていた。

 

 

その頃、トランクスと空の散歩をしていたパンは楽しそうに声を発し

パチパチと手を叩いて喜んでいた。

 

「あー、あー!!」「楽しかったかい?パンちゃん」

「うー」

時間にして5分くらい。

フワフワと飛び続けそのままリビングへとベランダから入った。

腕の中に居るパンちゃんはまだ飛んでほしそうだったけど・・・

 

「トランクス、帰ってたのね。サボり?」

「違うよ。午前中で臨時休校」

「ふーん。まぁ、いいけど・・・お似合いね」

「は・・・?お似合いって、パンちゃんとオレ?」

「そう」

「ない、ない!!だって、パンちゃんこんな赤ちゃんだよ?何考えてんの、ママ」

 

そのままソファに座ってる父の隣にパンを座らせ、

近くにあったおもちゃを渡し一緒に遊んでやる。

母は「お似合いだと思うんだけどなぁ」なんて言いながらこの場を離れて行く。

全く、親と言うものは何を考えてるのか分からない。

まさかここに居る父までそんなことを考えていたのだろうか?

 

「・・・まさかパパまでママみたいなこと、考えてた?」

「あいつの頭はどっかズレてる」

「だよね」

「だが、あくまで可能性の話だ」

「可能性?」

「これから先のことは何が起こるか分からないということだ」

「まぁ、そりゃそうだけど・・・」

「この赤ん坊が重力室の扉無理矢理こじ開けやがったようにな」

「えっ?!うそ・・・まだ赤ちゃんなのに・・・」

「ボサっとしてればお前などすぐ越されるぞ?トランクス」

「うっ・・・そうならないよう、努力します・・・」

「トランクス!ちょっと手伝ってよ。その大きな皿取って!!」

「わかった。けど・・・パパ、パンちゃんよろしく」

「?!お、おい!!・・・っち」

 

お願いと言われても何をどうしろというのだろうか?

一人で勝手に遊んでいる姿をチラリと横目で確認し、目を閉じた。

我関せずを通すため。

食事ができるまでの間そのまま一人で遊んでいてくれればいいのに、

腕を伝ってよじ登ってくる感覚。

さすがに無視することも出来ずに目を開けた。

 

「・・・・・・見ていないで何とかしろ」

「いや、だってよぉ。珍しいもん見てる気がすっから」

「そんなことはどうでもいい。早く取りやがれ!さもなきゃ投げつけるぞ」

「わかった、わかったって。よーしパン、じいちゃんのとこ来い」

「あー」

 

体にまとわりつかれていることから解放されホッと息をついたのもつかの間、

今度は手の指をギュッと握られた。

その手を解こうともせずカカロットは隣に座ってきた。

 

「なにしてやがる」

「まぁそう、邪魔にすんなって。パンはおめぇのこと気に入ってるみてぇだし」

「フン・・・」

「おめぇだってよ、もうすぐ赤ん坊産まれてくんだろ?しかも女なんだよな?練習ってやつだ」

「そんな必要はない」

「そうか?やっぱ違ぇぞ。男と女は。つってもパンはオラの孫だけどな。

ほらおめぇも抱いてみろって」

「や、止めろ!さっきしてやったばかりだ。風呂にまで入れた!」

「へ?風呂?」

「重力室に勝手に入ってきた揚句、くっついて離れようとしないからそのままシャワーを浴びた」

「ははは、そりゃすげぇや。おめぇ、しっかり父ちゃんできそうだな。しかも・・・くふふふふ」

「・・・気味悪い笑い方するな」

「だってよぉ。おめぇ意外に娘にべったりになりそうじゃねぇか?」

「べったり?」

「けど、ブルマの娘だろ?きっとハチャメチャな娘なんだろうな。手を焼くぞ」

「貴様・・・楽しんでやがるな」

「めでてぇことだろ?それとも、ベジータおめぇはうれしくねぇのか?」

「・・・・・・」

「な、わけねぇよな」

「黙れ」

「やっぱいいなぁーオラももう一人子供ほしくなっちまうなぁー」

 

トランクスに皿を取ってもらい、出来上がった料理を横目で見ながら

サイヤ人二人の様子を見ていたブルマ。

なんだか、不思議なものを見ている気がする。

二人は同郷でありながら敵対していた。

今では良いライバルというところなんだろうが、

べジータがあんな感じだから慣れ合うなんてことあるわけもない。

だからこうして、客観的に見れば友人のように会話している姿が、新鮮で変な感じ。

 

「ブルマさ、どうしただ?・・・うわ、なんか変な組み合わせだべ」

「そうよね。何、話してるのかしら?パンちゃん間に挟んで」

「想像、付きませんね・・・」

「そうかな?けど、パパとパンちゃんって意外と違和感ないんじゃない?」

「ふふふ・・・今日ビーデルちゃんが来てくれたおかげで予行練習出来ちゃった」

「ベジータさに娘が出来るなんて想像出来ねぇだけど・・・これなら心配いらねぇだべ」

「・・・・・・いいですね」

「何がだべ?」

「夫婦として通じ合えるなんて・・・私なんか・・・何も・・・」

「ビーデルちゃん・・・」

 

また泣きそうになるビーデルを支えるように背中をさすってやる。

突然のことに、いつもの彼女からは想像も出来ない様子にトランクスはオロオロするばかり。

椅子に座るようにチチに促されたビーデル。

 

やっぱり相当溜まってるみたい・・・

こうなったら、トランクスもいることだしパンちゃんを男たちに預けて女だけで話すしかない。

せめて何があったのかだけでも聞かないと何もしてあげることも出来ない。

チチさんに話辛いことも私がいればきっとビーデルちゃんも話せるだろう。

食事が終わったらもうしばらくパンちゃんを見ていてもらうこと、決定だわ。

 

・・・男たちだけでどうなるのかもちょっと興味もあるし。

第9話 おせっかい』につづく

291.『指をからめて』

第8話です。 担当はMickey様です。べじ→ぱん←空、ってとこですかね(笑)?