167.『・・・ばか。』

09 6月に開催されましたVB 69 Fes. 参加作品です。

ブラ制作秘話()は『愛妻家』というお話を既に書いていましたが

ver. のつもりです。

文中の一部に性的な表現が含まれます。ご注意ください。]

C.C.  夜、  寝室。

 

そろそろ休もうとしていたベジータに、満面の笑みを浮かべたブルマが近づいてきた。 

後ろ手で、何かを隠している。

「うふっ、 わたしって やっぱり、天才・・。」 

そう言って、手に持っている小瓶を見せる。  中には薬液のようなものが入っていた。

 

「何だ、 それは。」  怪訝な顔をしながらベジータが尋ねた。

「若返りの薬よ。」  「若返りだと?」

ブルマは 疑わしげな夫に説明する。

「これを飲むとね、20年・・ ううん もう少しかな、若くなれるのよ。 苦労したんだから。」

 

うんとオシャレして街へ出るのもいいな、って思ったんだけど、なっていられる時間も短いしね。

独り言のようにつぶやきながら、ブルマは瓶のふたを開ける。

そして口をつけると、中身の二分の一ほどを 一気に飲み干した。

 

「うっ・・・ マズイ・・

吐き出したいのを我慢するような仕草をしながらも、

残り半分の入った薬瓶をサイドテーブルの上に置く。

「ひどい味・・。材料が手に入りにくいから 多分もう作れないけど、二度と飲みたくないわ。」

 

「怪しげなものを作るからだ。」 ベジータは、苦しげにベッドに倒れこんだ妻の顔を覗き込む。

「何も変わらんぞ。    ・・!?」

驚いたような表情。 「どうしたの? あっ、もしかして・・。」

ブルマは起き上がり、急いで鏡の前に立った。

 

「すごい! すごい!! お肌が違うわ!! 髪も長い・・。 これって 多分、18歳頃だわ。」

再び、夫の前に駆け寄る。 「ねぇ、見て。 わたし、きれいでしょ?」

 

ああ、 と答えるような男ではない。 それにしても ずいぶん不機嫌そうだ。

どこか戸惑っているようにも見える。

「別に、いつもと変わらん。」 

 

ある意味、それは褒め言葉かもしれない。  けれども それでは、ブルマは物足りない。

「そんなことないでしょ。 10代のころの姿なのよ。 ねえったら、ちゃんと見てよ。」

 

妻の訴えを無視し、ベジータは床についてしまった。

「出かけたいなら そうしろ。」と、一言残して。

 

少しの間 眠っていない夫の背中を見つめていたブルマは、思い立ったように薬瓶を手に取ると、

残りの薬液を口に含んだ。

横になっているベジータの肩を、背中を、力いっぱい叩く。

「何だ。」 向きを変えた彼の頬を押さえこんで、唇を重ねる。 

そして素早く口の中に、薬を流し込んだ。

 

「何しやがる・・。 それにしても、なんてひどい味だ。」 

咳こんでは いたけど、ちゃんと飲んだようだ。

「貴重な薬で せっかく若くなれたのに、ちっとも見てくれないんだもの。

いっそ、あんたも若くなっちゃえば・・

 

言葉の途中で、ブルマは夫の顔をしげしげと見つめる。

「これって、18歳くらいなの? あんたこそ、ほとんど変わってないわ。」

腕を伸ばして、頬に触れる。 いくらか、ふっくらしているような気がする。

「やっぱり、少年っぽいわね。 筋肉も今ほど ついてないみたい。

だけど、目つきはなんだか・・

 

言い終わらぬうちに、ブルマはベッドの上に押し倒された。 

着ていたものを、ひどく乱暴な手つきで 剥がされる。

 

「ちょっと! 何すんのよ!!」 「要するに、これが望みだったんだろうが。」 

 

確かにそうなんだけど・・。 

記憶まで失ったわけではないはずなのに、ベジータのやり方は あきらかにいつもとは違っていた。

 

「ねぇ、痛いわ、 ベジータ。 もう少し優しくしてよ。」

「うるさい・・。」

目つきがギラギラしていて、息遣いが荒い。 とにかく乱暴で、余裕が無いのだ。 

それに 何だか、わたしの体も いつもと違う・・。

 

「痛い。 痛いったら・・ こんなはずじゃなかったのに。

痛みと情けなさで、涙がこぼれた。 それを見たベジータは、手を止めて 体を離した。

「勝手な女だな。」 そう言って、背中を向けてしまう。

 

・・そうだった。 あの頃は、痛くて 思うようにいかないことが多かった。 

いつの間にか、すっかり忘れてしまっていた。

ベジータに、抱かれるようになってから。

 

ベジータの背中を見つめる。 

戦いで できた傷がいっぱいの、だけど一番大きな傷は まだついていない。

わたしはそこに手を当てて、自分の頬で触れてみた。 

体温が、伝わってくる。

 

「ベジータ、 わたしね・・ 

10代の頃じゃなくて、あの年齢で あんたと出会えてよかった、って思ってるの。」

一旦 言葉を終えて、背中に唇を寄せる。 

「でもね、うんと きれいだったわたしを、あんたに一度 見てほしかったのよ。」

 

ベジータが こちらを向いた。 「いつもと変わらん、 と言ってるだろうが。」

わたしは再び、ベッドの上に組み敷かれる。 「バカ女め・・。」

 

唇が重なる。  さっきはしてくれなかった、深く 長い、丁寧で優しいキス。 

それから・・・

 

わたしの体も、さっきとは違っている。 

肌の表面だけじゃなくて、ずーっと奥の方まで熱くなって、

自分で触れていなくても たっぷりと濡れているのがわかる。

 

閉じていたまぶたを開いて、指を動かしているベジータの顔を見ながら わたしは言った。 

「すっごく気持いい・・。 もっと、して。」

 

下品な女だ。 いつもの その一言を、彼は口にしなかった。 

「後で、また してやる。」

 

そして、ベジータは わたしの中に入ってきた。 

その後は、もう ・・

 

クタクタになるまで抱かれて 一体いつ眠りに落ちたのか、

薬の効果が切れて 元の姿にいつ戻ったのか、まるで覚えていない。

 

気がつくと朝になっていた。 

なんだかだるくて、微熱っぽい。  もしかして 副作用かしら。

あの薬はおそらく、体にものすごく負担をかけるんだわ。 

ちょっぴり残念だけど、やっぱり あれっきりね。

 

ベジータにも具合を尋ねようと、体を起こす。 「あんたは、なんともない?」

 

その時。  シーツの、ちょうど腰の下になっていた辺りが 目に入った。 

これって・・。

「え?  あ・・  嘘、 やだ・・。」

わたしの様子に気づいたベジータが、隠そうとして おさえている手を除けさせる。

シーツについた赤いしみを、彼はじっと見ている。 

けれども、それについては 何も言わずにベッドから出た。

 

朝食を終えて、学校へ行くトランクスを玄関先で見送る。 

「そうだ、ママ。」  「ん? なあに?」

「パパって、何かいいことでもあったのかな。 すっごく機嫌良さそうだったよ。」

普段通りにしようとしてても、口元がどうしても笑っちゃうみたいな感じ・・。 

父親を そんなふうに評して、トランクスは出かけて行った。

 

ベジータったら・・。  わたしは、頬が熱くなった。

 

 

その後の話。 

なんとわたしは、トランクスの時以来 十数年ぶりに妊娠してしまった。

あの朝、妙な だるさを感じたのは そういうことだったのだ。

 

わたしよりも年下である孫くんの孫、

それに 言いたくないけど、親子ほど年の違う悟飯くんの子供。

おなかの子は、その子と同級生ということになる。

 

つわりがようやく治まった頃、いろんな人がC.C.にお祝いに来てくれた。

そして 今日は・・  ヤムチャが顔を出してくれた。

 

「ブルマ、おめでとう。 トランクスの弟か妹か。 楽しみだな。」 

「ありがと・・。」

「でも、びっくりしたよ。 こんなこと言うと怒るかもしれないけど、もう 若くないだろ?」

「あはは、  まぁ、 そうよね ・・。」

同い年のヤムチャにそう言われると、頷かざるを得ない。

 

「ベジータも 相変わらずなんにも言わないけど、ずいぶんうれしそうだったなぁ。」 

「え? 会ったの?」

「さっき、外でね。 おれと目が合っても、笑顔になっちまうのを抑えきれないみたいだったよ。」

 

ベジータったら、 もうっ・・・。

 

思わず、小さく声が出る。  「・・・ばか。」