『ありきたりなロマンス』 その2
渋るブラちゃんを、なんとか促して店の外に出ると
ベジータさんは、ものすごい形相でおれのことを睨んでいた。
「こんばんわ・・・。お久しぶりです。 さっき、偶然ブラちゃんに会って・・・。」
「ヘンな奴にからまれたのを、助けてもらったのよ。」
ベジータさんはそれに答えず、自分の娘に向かって
「帰るぞ。」 とだけ言った。
「わたし、悟天に送ってもらう。」 「なに?」
気色ばむ父親に臆することなく、彼女は言い放つ。
「だってパパ、飛んで来たんでしょ。
こんなに人の多いところで飛ぶの、わたしイヤよ。」
おれは慌てて、
「車あるから、送りますよ。 そうするつもりだったし。 ベジータさんも乗ってください。」
と、カプセルを見せた。
「車なんて、いつ買ったの・・・。」
「会社のだよ。 これはほとんどおれが乗ってるけど。」
父親が後部座席に納まったのを確かめてから
助手席に座ったブラちゃんは、また質問をしてきた。
「お酒、飲んでたんじゃないの?」
「食事しかしてないよ。 おれ、あんまり飲めないんだ。
サイヤ人は、アルコールに強くないみたいですね。」
後ろに向かって話しかけると、「酒は、弱い奴が飲むものだ。」
ベジータさんが、口を開いた。
「でも、トランクスは結構飲みますよね?」
気まずい雰囲気から抜け出そうとしているのに、
「おにいちゃんは、ママのお相手がしたいのよ。」
ブラちゃんは、どうにも刺々しい。
車はようやくC.C.に到着した。
大きな玄関の明かりがついて、ストールをはおったブルマさんが出てきた。
あいかわらず、すごく若く見える。
うちのお母さんより、年上のはずだけど。
「まあ、悟天くん、久しぶりね。 二人を送ってくれたの。
どうぞ、あがってお茶でも飲んでいって。」
「いえ、もう遅いので・・・。 こんどゆっくりお邪魔させてもらいます。
トランクスによろしく言っといてください。」
そう、残念ね。 近いうちに、きっとよ。
そう言いながら、ブルマさんは夫に目くばせをする。
「世話になったな。」
ベジータさんは、おれの顔を見ずに ぼそり、と言った。
「パパは、ママのことだけを心配してればいいのよ。」
ブラちゃんが小声でつぶやいたのを、おれの耳はとらえてしまった。
数日後、トランクスから電話があり、久しぶりに会うことになった。
[ その3につづく ]