子供たちを寝かしつけて 寝室に入ると、悟天は寝息をたてていた。

「もうっ。 起きててね って言ったのに。」

 

わたしはベッドに上がって、寝ている彼に覆いかぶさる。

自分の髪の、毛先をつまんで頬をくすぐる。  鼻をつまんでみる。 

それでも起きない。  ・・そうだわ。

このあいだ 話したことを思い出す。

ちょっと確かめたくなって、彼のパジャマのズボンの中に手を入れようとした・・。

 

けれど、そこで手首を掴まれた。

「何するんだよ。」  「だって、起きないんだもの。」

「仕事で帰りが遅いし、お休みの日は一日中子供たちと遊んでるし。 つまんないし、寂しいわ。」

 

真剣に言ったつもりなのに、悟天は笑いながらわたしを抱き寄せる。

彼の上に、うつ伏せる格好になる。

「あーあ、ブラはかわいいな。 さ、一緒に寝よっか・・。」

「もう!寝ちゃダメ。」

「冗談だよ。」  そう言いながら、頭を、髪をなでてくれる。 わたしは、うっとりと目を閉じる。

 

「ねぇ、このあいだ しっぽの痕の話をしたでしょ?」  「ああ・・。」

「あれって、ホントにあるの?何度か鏡で見てみたけど、わかんなかったわ。」

「あるよ。だけど、多分 見ただけじゃ・・ 」

そんなことをつぶやくと 悟天は右手を動かして、さっきわたしがするつもりだったことを し始めた。

 

「ちょっとだけ、手触りが違うんだよ。」 

探し当てた中指が、円を描くみたいに その部分に触れる。

「あ、 あっ・・ 」  「・・えっ?」 

少し驚いたように手を止めて、わたしの顔を見ようとする。

 

「力が抜けちゃうみたい・・。 なんだか、ヘンなかんじ・・。」

「ホントかい?しっぽが無いのに?」 悟天は再び指を動かす。

「ん・・っ  

「驚いたなぁ。おれも赤ん坊の頃 切られちゃったから、あんまり気にしたことなかった。」

「もう・・イヤ、こんなの・・。」  わたしは体を起そうとした。

だけど力が入らないから、簡単に押さえこまれてしまう。

「・・気付かなかったな。 よかった、見つけたのがおれで。」

 

いくら戦えないっていっても、いつもならこんなことないのに。

わたしはなんだかくやしくなって、余計なことを言ってしまう。

「そりゃあ、気づかないわよね。 他の女の人には、しっぽの痕なんか無いもの・・。」

 

悟天は手を止めた。 そんな時でも、彼はわたしに怒った顔を見せようとしない。

ベッドの上にうつ伏せにされる。

「何するの・・。」  「ブラは、特別 敏感みたいだな。」

「あ・・! ダメ・・・ 」

 

唇が押しあてられる。

濡れた舌が、そこを動き始めた。 さっきまでの、指の代わりに。

 

わたしとこんなふうになる前、悟天には恋人がいた。

十歳以上も年上なんだから、そんなのは当たり前だ。 だけど・・

 

短いサイクルで何人もの人と 付き合っては別れていたお兄ちゃんと違って、

悟天はずっと、一人の人と一緒にいた。

だから、わたしはその人の顔を見たことがある。

そして、その人を好きだった頃の悟天にも会ってしまっている。

 

そのせいなのかしら。

家族になって何年も経つのに、 もうお母さんだっていうのに、わたしは まだ 時々・・・。

 

ママがいてくれたらな。  そしたらなんて言うかしら。 きっと、笑うわね。

こんなに幸せなのに、バカねって・・・。

 

「ブラ・・?」  悟天が心配そうに、顔を覗き込んでいる。

「びっくりした。泣いてるのかと思ったよ・・。」

 

わたしは それには答えずに言った。 「抱いて。もう ダメ・・ 我慢できない。」

そして、肩に腕をまわして耳元にささやく。

「このまま来て・・。ね、 いいでしょ・・ 」

 

 

「今ので、またできちゃったかも・・。」

肩で息をしているブラにおれは言った。

「おれはうれしいからいいけど、ブラは大変だろ。」

 

「わたしは平気よ。 それに・・」  言葉を切って、おれの顔をじっと見つめる。

「悟天は、女の子もほしいんじゃない?」

 

「女の子かぁ。うーん・・・」  かわいいだろうな、とは思うけど・・。

「男の方が、本気出して遊べるからなぁ。」  「子供みたい・・。」 ブラが、おかしそうに笑う。

その笑顔は本当に・・・

 

「かわいいなぁ。 ブラだけでいいかな、女の子は。」

えっ?と聞き返すブラを抱きしめながら、おれは言った。

「さ、一緒に寝よっか・・。」  「そうね。」

 

返事の後で、ブラはそっとキスしてくれる。 それから彼女は両腕を伸ばす。

手が、しなやかな指が優しく触れる。

今はもう無い、おれのしっぽの痕に。

『ヒットポイント』

[ トラパンのカテゴリにあります、『チャームポイント』の後日談です。

ちょっとHっぽい個所があります(笑)。 二人が子だくさんの理由です。 ]