296.『下着』

[ 053.『星空』のつづきです。]

自然にあふれた村で楽しい夏を過ごし、都へ帰るという朝。

トランクスは幼い妹が、ローズピンクの小さな布を手にしているのに気づいた。

「ブラ、 何持ってんだ?」

「さっき拾ったの。 キレイでしょ・・・」

 

妹から受け取って、目の前で広げたそれを

トランクスは、 うわっ、 と驚き取り落としそうになった。

「こ、これは・・・ ママのだろ。 返してこいよ。」

あわててたたんで、小さな手に戻す。

素直にうなずいたブラの後ろ姿に

「人のいない所で返せよ・・・。」 と付け加える。

 

昨夜遅くに目が覚めた時、 父がいたように感じた。

あれは、気のせいではなかったらしい。

母に会うためだけに、わざわざ来たということか。

 

トランクスは、溜息をついた。

「まったく、うちの親は・・・。いつになったら枯れるんだよ。

 また、きょうだいを増やしてくれる気なのか・・・?」

 

平和であろうとなかろうと、青年トランクスの苦悩は深いのだった。

 

 

その後、カプセルハウスはブルマの好意で、悟空とチチ夫婦が使うことになった。

 

「あれ? なんだこりゃ。」

ソファと壁の、陰になった辺りに落ちていたそれに気づいたのは、悟空だった。

そう。 

ブラはあの後友達に呼ばれ、外に出る時に落して、

そのまま忘れてしまったのだ・・・。

 

「派手な色だなーー。 なんかの飾りか?」

 

チチは、夫が両手で広げたそれが何なのかすぐに気付いてひったくった。

「ブルマさのもんだべ・・・。  人様のもんをジロジロ見ちゃなんねえだ!!」

そして、きょとんとしている悟空に、バスタブのお湯が溜まったかどうか見てくるよう命じた。

 

「はぁーー・・ ブルマさ、 こんなの穿いてるだなぁ・・・。」

両端をひもで結ぶタイプの、シルクでできたそれが何であるか悟空は気付かなかったようだ。

「こんな小さいので、お尻がちゃんと隠れるんだべか・・。」

 

自分より年上でありながら、自分の初孫と同じ年の娘を産んでのけた

ブルマの底力を見た気がした、チチであった。

 

「おらも、ちょっと見習ってみようかな・・・。」

 

「お湯溜まってたから、留めといたぞ。」

 

戻ってきた悟空に、一緒に入るか? と誘われ

彼女が断らなかったのは言うまでもない。