あの死闘から半年。

ドラゴンボールによってベジータは、ようやく本来の自分の姿に戻ることができた。

仕事で取引先にいたブルマを捕まえ、しっかりと抱きかかえた彼は

空を切るようにしてC.C.に戻った。

降り立ったのは、二人が使っていた寝室のベランダ。

もし窓がロックされていたなら・・・

ベジータは間違いなく破壊してしまっていただろう。

 

ブルマをベッドの上に投げ出すのとほぼ同時に、彼は彼女に覆いかぶさった。

「ちょっと・・・  ねぇ、シャワーくらい・・・ 」  「うるさい。 待ってられるか。」

ものすごい勢いで、彼女と自分の着ているものを剥ぎとる。

少しは、ムードとか考えてくれればいいのに。

すねたブルマはつい、余計なことを口にする。

「ベジットになってた間、チチさんとは何もなかったの?」

 

愛撫の手を止めたベジータは、恐ろしい形相で妻をにらんだ。

「くだらんことを聞くな・・・。」  「そうよね・・・。 ゴメン。」

仰向けのまま、夫の頬を両手ではさんで軽く口づける。

「孫くんも大変だったでしょうね・・・ 」  「知ったことか。」

ベジータから返されたキスの深さで、ブルマのおしゃべりは終わった。

 

いつもよりはるかに余裕がなかったベジータは、一旦動きを終えて彼女の顔を覗き込んだ。

「どうした・・・ ?」

うろたえたような彼の声。   力の加減を間違えたかと思ったらしい。

ブルマの青い瞳からは、いつの間にか涙がこぼれていた。

「違うの。 ゴメンね。 大丈夫・・・  」

涙をぬぐおうとしている彼の手に、彼女の手が重ねられる。

もう二度と、 触れられないと思ってた。

「幸せ・・・  」

そして聞きとれないほど、小さな声でささやいた。

「抱いて。  いっぱい、 して・・・   」

窓から注ぐ、沈みかけた陽の光に照らされながら二人は再び抱き合った。

 

化粧がすっかり落ちてしまったブルマの頬に、うっすらと涙のあとが残っている。

そこにそっと唇を寄せて、ベジータはようやく彼女を解放した。

意識を手放す前、ブルマはかすれた声で、つぶやくようにこう言った。

「ベジータ、 好き・・・  愛してる・・・  」

ぐったりと目を閉じてしまうブルマ。

だから、彼の答えは彼女の耳に届かなかった。

 

二人は、深い眠りに落ちていく。

窓の外では星が消え、 夜が明けようとしていた。

129.『涙のあと』

[ 169.『彼女の彼』から続いたベジット話の完結編です。]