050.『エスコート』

パーティー話を書いてみたいと思ったのですが、名作が多いため なかなか・・。

この6年後くらいが ささげものにあります『パートナー なのかもしれません。]

パーティーの 招待状が届いた。  

カジュアルな集まりではない。

そういった場合、ドレスよりも アクセサリーよりも わたしの頭を悩ませるのは・・・ 

パートナーだ。

男女同伴でなければ、 なんとなく恰好がつかない。

 

ヤムチャに頼めば、多分 応じてくれると思う。  

けど、困ったときだけ 泣きつくみたいで、何だかねえ。

昔、恋人だった頃、何度か付き合わせたことがあったっけ。

それなのに、今よりも もっと わがままだった わたしは、

イライラして、怒ってばかりいたような気がする。

大体は、会場で 他の女の人の方を見ていた、などといった 他愛のない理由だ。

だけど パーティーの当日に、頬に、激しい修行による 大きな傷をつくって現れた時には・・・。

ケンカにこそ ならなかったけど、かなり気まずくなってしまったものだ。

 

でも 頼んだら きっと、他に友達はいないのか、って言われちゃうだろうな。

ルックスが良くて、無難に振舞ってくれそうな 男友達。 

心当たりが無いわけじゃないんだけど、どうもね。

こう言っちゃなんだけど、帯に短し たすきに長し、 ってやつかも。

わたしは もう、戦わない男の人には、魅力を感じなくなってしまったみたい。

かと言って、会社の部下に頼むのもねえ。 パワハラっぽいし、へんな誤解をされたりしても 困るし。

 

昼のパーティーだったら トランクスを連れて行っちゃうとこなんだけど、夜だから・・。  

高校生くらいになればOKかしら?  

ふふっ、 いい男になるのは確実だものね。 楽しみだわ。

そうだ。 高校生っていえば、悟飯くんは どうかしら。  

ルックスも お行儀もいいし。

将来 学者になったら、受賞パーティーなんかに出ることになる。 その練習も兼ねて・・・

そう言えば、チチさんも許してくれるんじゃないかしら。

ああ、 でも むしろ 今は、ビーデルちゃんが 何か言うのかしら?

まあ 確かに・・・ 

いくら きれいって いったって わたしみたいな年増よりは、 若くて可愛い彼女と一緒が いいわよね。

そう考えたら トランクスも、恋人ができるまでの間、なのかも。

 

いっそ 父さんと、とも 思ったんだけどな。

父親と娘。  

中途半端に若い頃だと、何となくシャレにならない感じがしたけど、

この年になったら 却って良いんじゃないかしら?

でも やっぱり、父さんの隣には 母さん。

それが一番、似合ってるわよね。

 

そう。 わたしだって ほんとは・・。  

一番 一緒に行きたいと思う人、 それは もちろん ・・・

 

「おい。 何を考えてる?」

実は今、 わたしはベッドの上にいる。 しかも ベジータ、夫の上、でもある。

「別に。 ・・ きゃっ!!」   

やや乱暴に、胸を 両手で鷲掴みにされた。  

なによ。 そっちだって、他のこと考えてるんじゃないの? なんて時が、たまにあるのに。

 

「ちょっと!痛いわ!」 

「それは、すまなかったな。」

繋がっている隙間から、二本の指が差し込まれる。 

「あ、 あっ ・・ 」  

茂みを分け入り、リズムを刻んで うごめく指先。

もう片方の手は胸を、相も変わらず 弄んでいる。 

ただし さっきと違っているのは、まるで 壊れ物を扱うみたいに・・・

「あ、あん、 もう・・ お願い。」

 

指が、手が、どちらの個所からも離れた。 

強い力で、腰を押さえこまれる。 これは、もう 動かなくていいという サインだ。

「ね、 ベジータ、 上 ・・・ 」 

「だから、なってるだろうが。」

「あんたに、上に来てほしいの。」 

「チッ・・ 」

 

聞えよがしの舌打ちの後、体勢を入れ替えられた。 

左右の膝を持ち上げられて、高い位置から打ちつけてくる。

「ベジータあ、」 「なんだ。」 

「キス、したい ・・ 」

 

苛立つように 息を吐き、それでも 唇が押し当てられた。

ベジータからのキスはほとんど、ベッドの上で、セックスの最中に行われる。 

でも、 うれしい。  だけど、 幸せ。

「ねえ、ベジータ。」 「だから、なんだ!」 

「わたしの言うこと、聞いてほしいの。」 「さっきから 聞いてやってるだろうが!」 

「もう一つだけ 聞いて・・ 」 「・・・。」 

「ね、 お願い ・・あ あっ、 」 「くそっ・・ 」

 

浅く 短い 吐息の後で、 彼は確かに、 わかった と言った。

 

さて。 

その後、パーティーの話を持ちかけると、 「よくも 騙しやがったな!」 

案の定、彼は腹を立てた。

でも たくさんの、思いつく限りの折衷案を出すことで、どうにか 承知してもらった。

 

それでも、タキシードを着る、着ないで ひと悶着。

当日、つまり つい先ほどの話だけど・・ 

ドレスにケチをつけられて、また 揉めてしまった。

だけど、 「だったら あんたが選んでよ! わたしは一体、何を着ればいいの!?」

しばしののち、 不機嫌な表情で 指し示したドレスは・・・ 

わたしに とっても よく似合っていた、と 思う。

そんなこんなで  わたしたちは ようやく、会場に向かう車中の人となったのだ。

 

 

「まったく、 ブルマさんとベジータちゃんは仲良しなのよねえ。」

走り去った車を見送った後、おばあちゃんが いつもの調子で笑っている。

その言葉が 本心なのか、それとも ちょっと呆れているのか、 おれには よく わかんない。

 

うちのパパとママって 仲良しなのかな?

おれだったら、好きな女の子には うんと優しくしてあげたいし、

好きだって ちゃんと、何度だって言ってあげたいって思うのに。

 

だけどね。

パーティーで、パパとママは また、ケンカしちゃうかもしれない。 

夜遅く、ぎゃーぎゃー 怒鳴り合いながら 帰ってくるかも。

でも 明日か、 遅くとも 次の日には  けろっと仲直りして、

部屋の隅っこで チューなんか してるんだよ。

そのことだけは、今の おれにも わかるよ。