257.『至福のとき』

[ 085.『あなただけに教えてあげる』のベジータver.です。]

セックスというのは、逃げようとする女を押さえつけてするものだと思っていた。

恐怖で固くなった体に、欲望を注ぎ込む行為。

そう思っていた。   この女を抱くようになるまでは。

 

生意気な態度にひどく苛立ち、女を押し倒した。

驚いた様子だったものの、その顔に怯えの色はなかった。

女はおれの背中に腕をまわして、体をあずけてきた。

うぬぼれるな、 と払いのけることは何故かできなかった。

一度触れてしまうと、それだけでは済まなくなった。

 

その夜も俺は、女の部屋を訪れた。

ドアをロックもせず、無防備な格好でいるくせに この女はいちいち文句をつける。

いつものことだと無視していたら、まだ何か言ってやがる。

俺は率直に言った。

「おまえは俺が来るのを待っていたんだろう?」

 

数秒の沈黙の後、女は俺の下で仰向けのまま、 こくり、 と頷いた。

青い瞳が俺をじっと見つめる。

考えたことすらなかった言葉を口にしそうになり、俺は部屋の明かりを消した。

 

夜が明けて目覚めると、女の寝顔が視界に入った。

唇に目がいく。

昨夜、俺の名を何度もささやいた。

そして、眠りに落ちるまで何度も重ね合わせた。

その唇に、もう一度自分のそれを重ねてみた。

 

俺が超化に成功したのは、そのすぐ後のことだった。

女は俺の子を産み、育て・・・   俺は、女を妻と認めた。

 

「もう・・・やめて・・・。」

夜遅くに床についた妻は、俺の下で身をよじった。

願いを聞いてやったというのに、自分勝手な女だ。

そのことを口にすると、ぬけぬけと言いやがった。

「あんたは、わたしの帰りを待ってたんでしょ?」

そして、耳元でもう一言付け加える。

「 ・・やっぱり、抱いて。」

 

本当におまえは下品で、おまけにワガママだ。

 あきれながらも、 俺は再び、ブルマを抱きしめた。