学校から帰ると、ママが玄関まで出迎えてくれて、そのまま居間に連れてこられた。

パパもソファに座っていた。 ちょっと気まずそうな顔で。

 

ママは 「トランクス、あんたお兄ちゃんになるのよ。弟か妹ができるの。」と、

うれしそうにおれに告げた。

 

弟か妹?  今頃?

そりゃあ、昔はきょうだいがいたらな、ってよく思ったけど・・・。

正直複雑だった。

けれど 笑顔をつくって、やったね、楽しみだな。 

みたいなことを言っておいた。

 

おれと二人になった時

「あいつに心配かけるようなことをするなよ。体に、障るかもしれんからな・・・。」って、

パパがぼそっと呟いた。

 

ママに心配かけてたのはおれじゃない。

そう言ってやりたかった。

 

4、5年前のことだと思う。 

ブウとの戦いのすぐ後だ。

 

学校から帰ると、ママがソファにもたれていた。

すごく顔色が悪くて、つらそうだった。

 

「トランクス、おかえり・・。大丈夫よ。今、車を待ってるの・・。」

「パパは? 重力室にいるの?」

ママは腕をつかんでおれを止めた。

「いいのよ。呼ばないで。 多分入院するけど、ベジータには出張って言ってあるから。」

 

おばあちゃんが出先から来てくれるからいい、って言われたけど

おれは病院までついて行った。

 

あの頃、おれは今よりもっとガキで・・

ママに何が起きたのか わかってなかった。

だけど、ママの青白い・・・悲しそうな顔は忘れられない。

 

パパの顔を見るのがイヤで、その晩は悟天の家に泊めてもらった。

 

それまでにも何度も遊びに来てたけど、

おとうさんが戻ってきて、やっぱりこの家は変わった。

おかあさんはお小言を言いながらも楽しそうだし、

悟天は甘えんぼになった。

 

だけど悟天は、あの天下一武道会の日、初めておとうさんに会ったんだっけ。

悟天が生まれた日、おとうさんはいなかったんだよな・・・。

 

仲良しの一家を見ながら、そんなことを考えてた。

 

ママは次の日の夕方に帰ってきた。

いつもと変わらない笑顔を、おれたちに見せながら。

 

 

それから半年あまり経って、おれに妹ができた。

 

あの大きなおなかの中にいたのが、この子。

ママのおなか越しに、パパやおれをけとばしていた。

すごく不思議な気分だった。

 

パパも不思議そうに、小さな赤ちゃんを抱っこしている。

すごく、とまどったような顔をしていた。

 

ママはおれに「あんたを初めて見た時も、あんな顔をしてたのよ。」

と、小声で囁いた。

 

病院からの帰り道、 「・・・ママそっくりだったね。」 って話しかけたら

「おまえの赤ん坊の頃にも似てたぞ。」とパパが答えた。

 

おれが照れ隠しに 「赤ちゃんは、みんな同じに見えるんじゃないの。」 って

言ったら、苦笑いしてた。

拳がとんでくるかと身構えたのに、よっぽど機嫌がいいみたいだ。

 

これからはママが家にいない時でも、ずいぶん賑やかになるんだろうな。

 

ママのミニチュアみたいな、かわいいおれの妹のおかげで。

 

023.『妹が生まれる』

[ 『できちゃった!2』と併せてお読みいただけるとうれしいです。]