『あのさよならに、さよならを』

セル戦後です。 トランクスとブラが1〜2歳差だったらな〜、という

筆者の願望が含まれてます。]

今日はブルマと、1歳を過ぎたトランクスと一緒に 孫家へ行って来た。

 

ブルマの仕事が忙しくて 延び延びになっちまってたけど、

悟飯の弟で 悟空の忘れ形見である、悟天の顔を見に行ったんだ。

 

よその家や、自分よりも小さい子をあまり見たことがないらしいトランクスは ずいぶんはしゃいでいた。

そのせいか 帰る頃には眠っちまって、ジェットフライヤーに乗ってる今も、まだ ぐっすりだ。

チャイルドシートに納まって寝息をたてる 我が子の姿を確かめた後、ブルマが言う。

「ヤムチャが一緒で助かったわ。

 よく食べるせいか、ああ見えても重くって。 眠っちゃうと大変なのよ。」

 

・・ふつうは、父親の役目なんだけどな。

ベジータとは、こんなふうに連れだって どこかへ行くことがあるんだろうか。

まるで関わってやらないんじゃ、成長したトランクスが暮らしていた世界と あんまり変わらない。

せっかく、死なずに済んだってのにさ。

もちろん そんなことは口にしない。

その代わりおれは、別のことを言ってみた。

 

「悟空を、生き返らせるべきだったな。」 「え・・?」

それは ずっと、考えてきたことだった。

「あいつが望まなくたって、無理やりにでもさ。」

その思いは今日、一層強くなった。

 

「悟天のためだよ。 父親を知らずに育つなんてかわいそうだ。」

おれは、自分の子供の頃を思い出していた。

 

「そうね。 だけど少なくとも、顔を知らないってことはないわね。」

目を伏せたままで、ブルマは小さく笑っている。

そう。

生まれてまだ数カ月だってのに、

悟天は チビだった頃の悟空にそっくりだったんだ。

抱っこさせてもらった時 ブルマは笑って、ほんの少しだけ涙ぐんでいた。

 

話題を変えようと、おれは口を開いた。

「ベジータは、家でいったい何をしてるんだ?」

「しばらくおとなしかったけど、少し前から重力室での特訓を また始めたのよ。」

眠り続けるトランクスに目をやる。

「もう何年かしたら、あの子を鍛えてやってほしいんだけどね・・。」

それまで地球にいてくれるかどうか、わからないわね。

ぽつりと そう付け加えた。

 

ベジータが もし、

ブルマとトランクスを捨てる形でC.C. を後にしたら。

おれは それこそ、望まれなくたってブルマのそばにいるつもりだ。

恋人には戻れなくても、友達のままで構わない。

トランクスの師匠になるにも力不足だけど、年の離れた兄貴くらいになら なれると思う。

別の未来では、悟飯がそういう存在だったそうだ。

けど、こっちでは本当の弟ができちまったからな。

 

「でもね、 」

そんなことを考えていたおれに、ブルマが話しかけてくる。

「あいつがどこかに行っちゃったとしても、寂しがってる暇は無さそうなのよ。」

たしか今日、チチさんも同じようなことを言っていた。

自動運転に切り替えた後、おれの手をとり 自分の腹の辺りに当てさせる。

「まだ誰にも言ってないんだけど・・。」

 

二人目の子供。  ブルマもか・・・。

 

「気とか、感じる?」

まだ小さすぎるのか、それとも おれの力が足りないせいなのか

正直よくわからなかった。

だけど、 ああ、と答えておいた。

「気で性別もわかればいいのにね。 できれば、今度は女の子が欲しいのよ。」

「ベジータにそっくりな子か?」

その一言でブルマは、涙を流して笑っていた。

つられておれも、笑ってしまう。

 

冗談だよ。 ブルマによく似た女の子だったらいいな。

見とれちまう程 キレイなくせに ヘンな顔ばかりして、

ワガママだけど かわいくて、本当はとっても優しい子。

置いてなんか行けないって、ベジータが 思うくらいに・・。

 

大きな泣き声。 トランクスが目を覚ました。

シートベルトをはずして、ブルマが席を立つ。

そして、運転席の方に移ったおれに こう言った。

 

「わたし、孫くんは戻ってくると思うの。」

ぐずるトランクスを抱き上げて、あやしながら続ける。

「いつになるかも、その後ずっといてくれるかどうかも わからないけど。」

「・・そうかもな。」

 

母親の顔に戻ったブルマを見つめて、おれは言う。

「もう、じいさんばあさんになっちまってる頃かもしれないけどな。 

 それとさ・・」

案外ベジータも、ずーっと地球にいるんじゃないか。

おれたちが、じいさんばあさんになっても、さ。

 

その時 ブルマが見せてくれた笑顔。

それは初めて会った日、 おれが恋をした あの笑顔だった。