『そばにいるから』

[ ブウ戦後の天界。プーアル目線です。]

大きな、大きな戦いが終わった。

大きな働きを終えた戦士たちが帰還し、

『気』なんてわからないボクにも、その場の空気が変化するのが

喜びに包まれるのが、全身で感じられた。

 

みんなが再会を喜び合うなか、

ヤムチャさまは少し離れたところから、ある家族を見守っていた。

 

彼はどうして、悟空みたいに幼い息子を抱き上げてあげないんだろう。

彼女はどうして、チチさんみたいに夫にすがりついて泣かないんだろう。

 

そんなふうに思っていたボクに気づいたヤムチャさまは、

いつもの笑顔で、肩の上に乗せてくれた。

 

あれはいつのことだったろう。

ヤムチャさまがブルマさんとお別れをして、

ブルマさんがベジータの子供を生んで、

ベジータは意外にも地球に、C.C.に留まった。

 

その頃、ウーロンがボクに言ったんだ。

「ドラゴンボールを探したらどうなんだよ。 ブルマに、レーダーを貸してもらってさ。」

「なんで?なんのために?」

「おまえのためだよ。 ネコじゃなくて人間の女になって、ヤムチャの奴に、好きって言えば・・・。

 おれも手伝ってやってもいいぜ。 ヒマだからな。」

 

ボクは呆気にとられて、赤くなったウーロンの顔を見た。

「・・・ありがと。 でも、いいんだ。

 ボクは今のままで、ヤムチャさまのそばにいたいんだ。 本当の気持ちだよ。」

 

ウーロンは、腑に落ちない様子だったけど、

決して負け惜しみなんかじゃなかった。

 

ボクはヤムチャさまが大好きだ。

でも、ブルマさんのことが好きで、

忘れられないヤムチャさまが好きなんだ、って気づいたんだ。

ブルマさんとお別れしたあと、何人か恋人ができたけど

やっぱりうまくいかなかったみたい。

きれいでワガママな、彼女に似た人ばかり選ぶんだもの。

だけどブルマさんは、それだけの人じゃないでしょう?

 

都に帰るのに、ブルマさんはジェットフライヤーに乗らなかった。

 

飛んでいるベジータに抱きかかえられてる姿が、ちょうど窓から見えてきた。

 

「あの二人、寒くないのかね。」って18号さんが言って、

「いや、むしろ暑いだろ。」って言いながらクリリンが、

ひざの上に座るマーロンを両手で目隠しした。

 

ブルマさんの表情は、ベジータの腕の中にあってわからない。

ベジータの表情も、ブルマさんに重なってよく見えない。

 

だけど、とっても幸せそうな顔なんだと思う。

 

「よかったな。」って、ヤムチャさまがつぶやいた。

操縦をしてるから、こっちの方は見えていないはずだけど。

 

ボクはそっと、肩に乗った。

操縦のジャマにならないように、そっと。

 

ヤムチャさまがほほえんで、ボクもとっても幸せな気持ちになる。

 

ボクはずっと、そばにいる。

ずっと、ずーっとそばにいるから。