『夢のあと』 ヤムチャ編

あの時、

おれが別の言葉を言ってやっていたら、今頃なにかが違ってたんだろうか。

 

天津飯とランチさんは、うまくいったらしい。

まったく、長い春だったよな。

そのへんは、人のこと言えないんだけどさ。

 

あれは、おれとブルマが、いくつの時だったろう。

 

悟空があっさり結婚を決めて、

筋斗雲でチチさんと飛んで行っちまったあと・・・

ランチさんが天津飯を追っかけて、カメハウスを出て行った頃だ。

 

ある日、ブルマがおれに言った。

「赤ちゃんができたかもしれない。」

 

おれは、その時どんな顔をしてたんだろう。

すくなくとも、笑顔じゃなかった。

なんて言ったか覚えてないんだ。

多分、ろくなことを言えなかった。

 

悟空だったら、 クリリンだったら、

好きな女に同じセリフを言われたとき、手放しで喜んだんだろうな。

 

ベジータだったら・・・。

笑顔になったとは( 絶対 )思えないけど、

余計なことも言わないんだろう。

まったく、得な性分だよな。

それって、やっぱり王子さまだからか?

 

何日かして、ブルマが言った。

「やっぱりちがってた。」

 

おれは、笑顔になっちまった。

気まずそうなブルマに、「気にすんなよ。」なんて言っちまった。

 

思えばその頃から、すこしずつ、すこしずつ うまくいかなくなったんだ。

 

あの時、喜んでやれなかった。

あの時、残念だって言えなかった。

それができていたら、今でもおれは、あいつの隣にいたんだろうか。

もうずいぶん昔の話だ。 だけど、ときどき考えちまうんだ。

 

あの時、おれたちの子供がほんとに・・・  ってさ。