『嵐の女神』

トランクス×パンの15周年のお祭りへの投稿作品なのですが、

終了が間近ですので、サイトの方にも同時にupしました。

28歳×15歳くらい、GT寄りの二人のつもりです。]

C.C.社の系列であるホテル。

会社から ほど近い そこの、最上階の一室を、おれは常宿にしている。

理由は まあ・・ いろいろ あるんだけど、

一人暮らしの気分を味わいたかったっていうのが大きいかな。

 

休日の、予定の入っていない午後、。

家には帰らず、たまっているデスクワークを この部屋で片付けている。

時折 ちょっと疲れてきたら、寝心地が最高のベッドに寝転んで、

大きな窓から見える空を、のんびりと眺める・・・。

「えっ?」 

強い気が、近づいてくるのを感じた。

間もなく 窓の外に、よく知っている女の子が 姿を現した。

「パンちゃん!」

 

 

ここにいるのは、気でわかった。

フロントで呼び出してもらっても よかったんだけど・・・

手っ取り早く、空から来てしまった。

トランクスは驚いた顔をしながらも、リモコンを操り、窓を開けてくれた。

「よかった。 開くのね、この窓。」

「非常時用だよ。 普通は開けられないんだ。

 それより、どうしたの、突然。 何かあったのかい?」

「別に。 ちょっと、会いに来ただけよ。」

わざと素っ気なく答えて、目についた 大きなベッドに 腰を下ろした。

 

 

「ちょっとって・・。 

人目についちまうから、緊急の時以外は 無闇に飛んじゃいけないって言われてるじゃないか。」

パンちゃんは返事をせず、その代わりに、こんなことを言いだした。

「この間、一緒に歩いてた女の人、だあれ?」

 

トランクスは13歳も年上だ。

これまで何人か、付き合っていた人がいた。

そんなことはわかってる。 悟天おにいちゃんだって、そうだから。

だけど実際に、二人でいるところを目にしてしまうと・・・

胸の奥が、ひどく痛んだ。

それで、どうにも我慢できずに、会いに来てしまったのだ。

 

「あの人は・・ 知り合い、友だちだよ。 昔の。」

「嘘。」

すごく親しそうで、それだけの仲には見えなかった。

トランクスはわたしを、誤魔化そうとしている。

カッとなったわたしは ベッドの上で、着ていた物を脱ぎ棄てて、下着姿になった。

「わっ、 何してるんだよ!」

「だって、ちゃんと教えてくれないんだもん。」

自分でも、支離滅裂だと思う。

ただ、トランクスを振り向かせるには、

まるっきりの子供ではないということをわかってもらうには、

まわりくどいことをしたってダメだ。

この何年かで わたしは、そう考えるようになっていた。

 

「まいったな。 あの人はね・・ ずっと前に、付き合ってた人だよ。

「昔の恋人?」

「そう・・。 でも今は、ただの知り合いだよ。」

「やりなおすんじゃないの?」

「まさか。 あっちは もう、とっくに結婚してるよ。 仕事絡みで偶然会って・・って、

 パンちゃん!」

勢いで、上の下着も はずしてしまう。

うろたえているトランクス。 わたしはそれが、見たかったんだろうか。

それも、あるような気がする。

彼の手を取る。

ドキドキしている 左の胸に、思い切って当てさせてみる。

 

「ダメだよ、こんな・・。」

「どうして? わたしのこと、」

「好きだよ。 けど、こういうのは・・。

 あと もう2〜3年経って、気持ちが変わってないなら、その時にさ・・。」

あと2〜3年。 わたしは、17歳か18歳になっている。

トランクスが何故そう言ったのか、わたしはピンときた。

「もしかして、あの女の人がトランクスの初めての人?」

「・・・。」

「ハイスクールの頃に知り合った、一番最初の彼女・・・ きゃっ!」

 

 

今日は何故だか、挑発的なパンちゃん。

少し黙ってもらおうと、ちょっとだけ力を入れて、ベッドの上に仰向けにした。

やわらかな胸に 触れ直して、ゆっくりと指を動かす。

体を きゅっと、固くしたのがわかった。

抱かれたいって、本気で思ってたわけじゃないんだろうな。

 

 

「結構、胸 あるんだね、パンちゃんって。」

緊張をほぐしてくれようとしたんだろうか? トランクスは、そんなことを口にした。

「そうよ。 ブルマさんには敵わないけど・・ うちのママも、わりとあるもの。

 あっ!」

「え?」

「ダメよ! 想像しちゃあ。」

「自分が言ったんだろ。」

少しだけ呆れたように、だけど優しい顔で笑うトランクス。

組み敷かれている そのままの姿勢で 両手を伸ばし、頬を包み込んでみた。

 

 

勝手なことばかり言いだす、だけど かわいい唇に、自分のそれを押し当てる。

やわらかい、小さな唇。

ついては離れ、 何度もそれを繰り返す。

さっきも触れた裸の胸を、手のひらで もう一度 包んでみる。

指を動かす。 さっきよりも速く、力を込めて。

「んんっ・・ 」

離れていかない唇から、甘く 微かな声が漏れる。

・・・

最後までは、しない。

イヤだって、たった一言でも言われたら すぐにやめる。

自分の中で そう決めて、最後の一枚に手をかけようとした。

その時。 携帯の、着信音が鳴った。

おれのじゃない。

「パンちゃんのだよ・・・。」

 

まるで 見ていたようなタイミングでかかってきた電話は、悟飯さんからだった。

「用事で、都に出てきたんですって。 ママも一緒だから、夕飯を食べて帰ろうって・・。」

「じゃあ、早く行かなきゃ。 ほら。」

脱ぎ散らかされた服を拾い集めて、手渡した。

 

ぐずぐずと それを身につけながら、パンちゃんは話を始める。

「ブラちゃんがね、 いつも言ってるの。」

「ブラが? 何て?」

「あと何年かしたら絶対に、悟天の恋人になって見せる。

 だから今、誰と付き合っていようと気にしない、って。」

「はあ〜、 あいつらしいな・・。」

「・・その気持ち、よくわかるの。わたしも・・。 でもね、わたしは今も、」

他の人と付き合ってほしくないの・・・。

小さな声で付け加えた。

 

わざと おどけて質問をする。

「パンちゃんの方が、厳しいってことかな?」

「・・・。」

答えない。 しょうがないなあ。

「おれさ、こう見えても かなり忙しいんだよね。 だから、」

もったいぶって、一旦言葉を切る。

「すぐに愛想をつかされちゃうんだ。

 空を飛んで会いに来てくれるような子じゃなきゃ、続かないかもな。」

その言葉で、不安げだったパンちゃんの顔が、パッと輝いた。

「じゃあ、また 会いに来てもいい?」

「いいよ。 ・・でもさ、今度は どこかに出かけようよ。」

「ほんと? だけど忙しいんでしょ? いいの?」

「何とかするさ。 映画とか買い物とか・・ 遊園地でもいいよ。」

 

かわいい かわいいパンちゃんの顔が、うれしそうな笑顔でほころぶ。

もう一度キスがしたくて、引き寄せようと手を伸ばしたら・・・

また 携帯が鳴った。

「遅いから、怒ってるんじゃないか? さ、行こう。」

もう少しだけ一緒にいたくて、車を出そうと上着を着かけたのに・・

パンちゃんは窓を開けて、空に浮かび上がってしまった。

「急ぐから、ここから行くわ。 またね。 お仕事頑張って。」

「う、うん。 気をつけて・・

「そうだ! 言うの忘れちゃった!」

短い距離を飛んだ後、こちらの方を振り向いて、大きな声でパンちゃんは言った。

「大好きよ、トランクス! うんと ちっちゃかった頃、赤ちゃんの頃から大好き!」

 

おれも。 おれもだよ。

初めて君に会った時、なんて かわいい赤ちゃんなんだろうって感動したよ。

ずーっと かわいいなって思ってて、今日 やっと、はっきりと・・・

でも、そこまでは言えなかった。

窓の外、 パンちゃんの姿は あっという間に見えなくなってしまったから。

 

「やれやれ。」

乱れてしまったベッドの上に、もう一度横たわる。

長い黒髪が、一本 落ちている。

パンちゃんのものだ。 指で拾いあげながら、おれは考えている。

元気で、ちょっと勝手で、だけど優しい、とっても かわいい女の子。

怒られて、振り回されて、それでも 決して離れられない。

 

「悟天も いずれ、捕まっちまうんだろうな、ブラに。 そうか、これって・・

地球で暮らしているサイヤ人の、宿命なのかも。

悟空さん、父さん、悟飯さんと続いている、伝統みたいなもんなんだ。

でも、待てよ。

ブラもだけど、パンちゃんだって、4分の1とはいえサイヤ人の一員だよな。

そう考えたら・・・

「そんなに長いこと、待たなくても 大丈夫かな。」

なーんて、な。 悟飯さんに殺されちゃうか。

 

ひとりごちながら 深く息を吸い込めば、彼女の残した甘い香りが、鼻腔によみがえってくる。

窓の外、空はいつの間にか暮れており、月が浮かんでいるのが見えた。

あと もう 何日かで満ちる、きれいな月だった。