『信じかたを教えて』
[文中に一部、性的な表現が含まれておりますのでご注意ください。]
その後はいつも、おれの方から連絡していた。
もう来ないだろう、それならそれでいい。何度もそう思った。
けれども、彼女はやって来た。
皮肉なことに口数と笑顔が減っていくにつれて、ベッドの上では反応を示すようになる。
されるがままだった彼女の、その唇からはかすかな喘ぎ声が漏れ、
両腕をきつくおれの背中にまわしてくる。
終わって体を離す前、いつもおれは彼女の耳元に囁いた。
「・・おれのこと、好き?」
最中には何を言ってもかぶりを振るばかりだったけれど、その時だけはこっくりと頷いた。
おれの腕の中で。
ある時。 ベッドの上、おれの下でめずらしく彼女は訴えた。
「ね・・・お願い、 もう、 やめて・・・ 」 「どうして。 痛い?」
それには答えず、短い喘ぎを繰り返す。
「そんなはずないよな・・。」
おれはピンときた。 わかったよ。 イキそうなんだろ。
「トランクス・・ お願い・・ 」 「怖がらなくていいよ。 力、抜いて・・。」
「あっ・・ イヤっ・・ あーーー・・・ 」
これまでに聞いたことのないような甲高い、
悲鳴のような声とともに彼女は体を仰け反らせた。
色を塗っていない、短くそろえた爪を、おれの背中に食い込ませながら。
ぐったりと目を閉じてしまった彼女の、乱れた髪を指で梳く。
長いまつ毛がかすかに動いて、気を失っていないことを知る。
普通の女の子が相手だったら、ここまでは出来ない。
つややかな、彼女の黒い髪。
初めてこうなった頃よりも少し伸びて、ちょうど妹と同じくらいの長さになっていた。
ブラの髪は、一定の長さから伸びてこない。
『一見ブルマに瓜二つでも、中身はサイヤ人の女戦士そのものだ。』
反抗がひどかった頃、あの父さんがそんなふうにこぼしていて、おれは思わず笑ってしまった。
パワーがありあまっていたせいもあったんだと思う。
そういう意味でもサイヤ人の血を引く子供には、武道をさせるべきなんだ。
「父さんがブラに戦う訓練をさせなかったのは、
母さんにそっくりなあいつに痛い思いをさせたくないからなんだよな。」
仕事に戻るための身支度をしながら、おれは誰にともなくつぶやいた。
会社から連絡が入る。
すぐ戻る、と答えたおれはベッドに腰かけて、もう一度彼女の髪に指を通した。
「もう行くよ。帰る時はフロントに言って・・・ 」
いつも車を用意してやっていた。
「今日はいいわ。 悟天おにいちゃんのところに、届けものをしなきゃならないの・・・。」
背を向けたままで彼女は答える。
その後の「行ってらっしゃい。」という小さな声で、おれは少し安堵する。
「悟天の部屋か。 ブラがいるかもな・・・。」
ブラが荒れていた一番の理由。 それは、母さんへの劣等感だ。
外見があまりにも似すぎているから、どうしても周囲から比べられてしまう。
あいつがチビの頃から悟天になついていたのは、
どこか同じ匂いを感じていたためかもしれない。
パンを最後に抱いた日、おれはそんなことを考えていた。