Destiny

トランクス×パンの復縁話?の別ver.です。

歪んだ形の愛、というかんじで読後感は良くないと思います。

大丈夫そうなかたのみ、お願いいたします。]

ホテルの部屋。 

チャイムが鳴ってドアを開けると、今やなつかしい姿があった。 

「本当に来てくれたんだ。」

 

おれの顔を見上げながら、よそよそしい態度でパンは言った。 

「どうしてもって 呼び出したのは、トランクスの方だわ。」

「ずいぶん冷たいね。 婚約者に遠慮してるの?」 

ドアを閉めて、彼女の顔をのぞきこむ。 

「そんなんじゃないわ・・・ あ・・っ   おれはパンを抱き寄せた。 

かつて何度も抱き合った この部屋で。

 

体を押し返すことも、腕を解こうと もがくこともせずに彼女は言った。 

「・・まだ この部屋を使ってるの?」  「いや、おれも久しぶりだよ。」

 

この部屋で最後に会った日、パンの髪は 子供の頃みたいに短かった。

そして今、指先に触れている髪は背中まで伸びている。 

「パンと別れた後、すぐに引き払ったんだ。 さすがに一人じゃいられなかったよ。」

 

大きな黒い瞳を縁取っているのは、長い長い睫毛だけ。

きめ細かな肌にも、小さな唇にも、彼女は色をのせようとしない。

ごく自然に、唇が重なる。 「そんなつもりで来たんじゃないわ。」 

最後までは言わなかった。

 

 

バスルームの扉を開ける。 

ロックされていたけれど、長いこと常宿にしていたから 解除の仕方を知っている。

 

少し驚いた顔のパンに、バスタブのお湯を溜めながら声をかける。

「パンの気が変わると困るからね。」

「そんなこと・・、   「じゃあ おいでよ。 一緒に入ろう。」 

 

お湯の中に、遠慮がちに腰を下ろした彼女を、後ろからすかさず抱き寄せる。

「以前に一緒に入った時にさ、おれがパンに聞いたこと、覚えてる?」

「どうして このお風呂はこんなに広いのか、って・・。」

 

そうだ。 あの時 パンは、家族で泊まる人のため、って答えたんだ。

「本当にかわいいよな、 パンは。」

同じ言葉を口にしたおれに、背を向ける形で彼女はつぶやく。

「本当は、ちゃんとわかってたわ。 セックスできるように、だから広く造られてるのよね。」

 

おれは両腕で、パンを立たせて壁に向けた。 

「何するの・・。 あ、 あ・・っ

後ろから、胸をまさぐる。 「わかってるって、たった今 自分の口で言っただろ。」

 

右手を下に伸ばしていく。  内腿の奥が、お湯とは別のもので濡れている。

「パンは、こうされるのが大好きだったよね。」 「・・・。」

声を押し殺しているようだ。

 

「でも今日は、もっといいことしてあげるよ。」 「え・・・?」 

耳元に、ささやくように付け加える。

「あの男が してくれないようなことをね。」

 

おれは左手を 彼女の尾てい骨の辺りに押し当てて、円を描くように撫でさすった。

「きゃっ・・・  パンが、悲鳴のような声をあげる。 

「尻尾の痕だよ。 切り取って無くなっても、やっぱり感じやすいんだな。」

 

それと同時に 右手の指で、彼女の体の中心を 転がすように愛撫する。 

お湯とは違う、水の音が聞こえてくる。

 

「イヤ・・ もう、 ね、 おねがい ・・・

何度も懇願する。 喘ぎ声の合間に。 

「なに? どうしてほしい?」  「・・・   

「おれが、欲しいの?」 背を向けたまま、パンは うなずく。

 

「・・ここではやめとこうか。」 少し可哀想になって、おれは彼女を抱きかかえた。

 

部屋に戻り、濡れた体のまま ベッドの上に倒れこむ。

両膝を掴んで、脚を開かせる。

もう充分だ。 ゆっくりと体重をかけていく。 パンの体の、奥深くまで。

 

快感に合わせて動きながら、シーツと彼女の腰の間に 手を差し入れる。 

「あ、 ん・・・ っ

明らかに反応を示す。 痕で この状態だ。 

もしも尻尾が残っていたら、一体どうなってしまうんだろうか。

 

薄眼を開けたパンの顔に、わずかながら勝気さが戻る。 両腕を伸ばしてくる。 

「く・・・ っ 」

パンも指先を動かし始めた。 おれの尻尾があった個所に。

 

 

幾度も体をのけぞらせたあと 大きく息をついて、おれとほぼ同時に彼女は達した。

 

サイヤ人のセックス。 肩で息をしながら、そんな言葉が頭に浮かんだ。

サイヤ人の女とのそれは、父さんも悟空さんも 経験できなかったことだ。

 

横たわっているパンに向かってつぶやく。 

「やりなおそうよ。」 

聞こえているくせに、まぶたを閉じたままだ。 

「悟天とブラと同じで、おれたちも 一緒になる運命なんだよ。」

 

「・・もしも そうだったとしても、もう遅いわ。」

彼女がどこか投げやりであることに、おれは気付いていた。 

「どうして今日、ここに来たの?」

 

ようやくまぶたを開けて答える。 

「最後に、トランクスに会いたかったからよ。」

「違うだろ。 それだけじゃないな。」 そう。 パンは、そういう女じゃない。

「あの男・・ 婚約者に、失望したからだろ。」

 

パンは、大きな黒い瞳を さらに見開く。 「どうして・・・。」 

「何でも知ってるんだよ、おれは。」

 

ちょっと調べさせたら すぐにわかった。 

名のある教授の息子だか何だか知らないが、どうしようもない野郎だ。

「あいつと別れろ。 あの男は、パンを幸せにしないよ。」 「・・・。」

「ずっと切れてない女がいるうえに、他にも何人か・・。そういうのは、治らないよ。」

 

声を出さずにパンは笑う。 「トランクスがそんなこと・・。」

「おれは、同時進行だけは一度もないよ。」

一旦 言葉を切って続ける。 

「それだけはするなって、母さんにきつく言い渡されて育ったからね。」

 

口には出さなかったけれど、パンの口が何かを言いたげに動いた。

誰とも長く続けられなかった理由を、おれは自分でわかっていた。

パンが離れていったのも、同じ理由だったのだろうか。

 

「断りにくい相手なのは わかるけどさ。 悟飯さんだって、パンの幸せを願ってるはずだろ。」

「そういうことじゃないの。 もう、遅いのよ。」 

そう言って彼女は、枕に顔を伏せた。

「わたしがバカで、子供だったの。 トランクスのことを、忘れたかったのよ・・・。」

 

肩がふるえている。 パンが、泣いている。

 

この部屋を訪れていた、18歳の頃。

おれに されるがままになりながら、何度も泣き出しそうな顔をした。 

だけど、一度も泣かなかった。

そして 最後に会った日も、泣いたのはおれの方だった。

 

「遅くなんかないよ。」 うつ伏せになっているパンを、向き直させる。 

腹部に、そっと手を当てる。

「まだ誰にも、話してないんだろ。」

 

「どうして・・・ 」 「言ったろ。 おれは何でも知ってるんだよ。」 

パンの瞳に、怯えの色が浮かぶ。

「おれの子だって言えばいい。 そうすれば簡単だよ。」 

「そんな・・ そんなこと できるはず、

「できるよ。」 

 

ここまできて、おれはようやく気付いたんだ。

パンが、他の奴のものになるなんてイヤだ。絶対に我慢できない。

 

「子供の父親には、おれがなるよ。 パンを手に入れるためなら、何だってするさ。」

そうだ。 殺戮と破壊の本能を押さえて、

母さんのために 地球人として生きている父さんのように・・・。

 

ふるえる肩を抱きしめながら、おれは言った。

「だってパンは、おれのことが好きだろ?」

 

その夜、おれは彼女を離さなかった。 もう、どこへもやらないつもりだ。

 

腕の中でパンは、いつまでも ずっと、泣き続けていた。