『プロポーズ』

皆で母さんを見送った少し後、ブラが一人目の子供を産んだ。

そして、姿を消していた父さんがC.C.に戻ってきた。

 

それからしばらく経ってからだ。

おれとパンが また・・・ そうなっちまったのは。 

自分でもカッコ悪いな、って思ったけど。

 

ある言葉に背中を押されたことと・・  

結局、彼女のことがどうしても忘れられなかったんだ。

 

今、パンは生まれ育った家を出て 都でひとり暮らしをしている。

初めてこの部屋に泊まった時、おれは照れ隠しにこんなことを言った。

「・・この部屋ですると、すぐ子供ができそうだな。」  

そう、ここは悟天が住んでいたアパートだ。

かつてブラが足しげく通って、結婚してからもそのまま一年くらい住んでたのかな。

 

「そんなこと言うもんじゃないわ。」 

おれの皮肉をたしなめながら、パンも苦笑いしていた。

「だってあいつら、ほとんど最初の一回で子供ができたらしいぜ。 信じられないな・・。」

 

ホテルにあったそれよりも ずいぶん狭いベッドの中で、

あの頃よりも少し大人になった彼女を抱きしめる。

 

おれはまだ子供なんかほしくない。 そんな気持ちを知ってるみたいにパンは笑う。

「トランクスは甘えん坊ね・・。」

 

ブラと悟天とその子供たちは、実は今 C.C.に住んでいる。

一人目を産んだと思ったら またすぐに子供ができて、それがなんと双子だったんだ。

さすがにこのアパートじゃ狭すぎるから とりあえず、ってことだったはずなのに、

しっかり住み着いちまった。

だって双子を産んで何カ月かしたら、また腹がふくらんでるんだよ・・・。

 

まったく悟天も何考えてるんだよ。 

・・まぁ、父さんがなんとなく元気になってきたのはよかったけどさ。

 

「あー、おれ もうC.C.に居場所が無いよ・・・ 」

おれのための、遅い夕食に使った食器を洗いながらパンが言う。

「じゃあ、どこかにお部屋を借りたら?」 

「・・だからさ、一緒に住もうよ。」

 

後ろから両腕で、彼女の肩を抱きしめる。 

あいかわらず艶やかな黒髪は、ゆるく束ねられている。

「今の研究が、一段落したら きちんと考えるわ。」

 

ようやく大学を卒業するって喜んでたのに、パンは研究室に残るつもりだという。

彼女に不満があるとしたら、おれの言うことをはぐらかすところだ。 

思えば、昔っからそんなところがある。

だから、以前は ずいぶん強引なことをしちまったんだ・・・。

 

「・・そんな悠長なこと言ってていいの?」 

「え?」 

エプロンをはずしながら、パンはおれの顔を見上げる。

 

「自分で言ったんだろ。 トランクスのことを嫌いな女の子なんていない、って。」

「うん、 そう思うわ。 ・・・だけど、 」 

にっこり笑って言葉を続ける。

「トランクスと長く付き合える人って、あんまりいないかも、って・・・ 」

 

おれは言い返せなくなった。 

こんなやりとりは、物心ついた頃からさんざん見せられてきた・・・。

くそっ。 こうなったら、外堀から埋めてやる。

 

「来週、時間をつくるよ。 悟飯さんに連絡しておいて。」 

「パパに?」

「そうだよ。 結婚はもう少し先だとしても、挨拶をしておくんだ。」

 

それを聞いたパンは、とってもうれしそうな顔になる。 

・・・だけどおれの方は・・・

 

「そんな顔しなくても平気よ。 パパは、頭ごなしに怒ったりしないわ。」

だから余計怖いんじゃないか。 わかってないなぁ・・・。

パンのママ・・ ビーデルさんも、どうもおれを見る目が冷たいんだよな。 

ま、 仕方ないけど。

 

「パン。」 「なあに?」

「おれが殺されたら、ドラゴンボールを探して、生き返らせてくれよな。」