142.『喪失』
[ 絵師さまのマンガを見て書きました。
トラ&ブラ年子妄想が入ってます。 ]
ちいさなトランクスを寝かしつけて、自分の部屋に戻る。
どんなに大きな悲しみに見舞われようが、赤ん坊の世話は休み無しだ。
今のわたしには、その方が都合がいいかもしれない。
ライトをつけて驚いた。
ベッドに、ベジータが横たわっていた。 こちらを背にして。
「ベジータ。」
返事がない。 でも、眠ってはいない。
わたしも横になる。 背中に、ほおを寄せてみる。
触れなければわからない、傷跡だらけの彼の背中に。
お帰りなさい、 とつぶやいたあと、わたしは続ける。
「孫くんは、いつか戻ってくると思うわ。」
ベジータが、ぴくりと反応する。
「孫くんってね、一つの場所にいられない人だと思うのよ。」
チチさんと悟飯くんには言えないけど。
わたしが昔言った言葉が引き金になったとしたら、
二人に本当に申し訳ないけれど。
「でもね、だからこそあの世で気が済むまで修行して、
もっと強くなったら・・・何かの時に、戻ってくるような気がするの。」
それが、何年先になるのかはわからないけど。
言い終わらぬうちにベジータはこちらを向いて、わたしに覆いかぶさってきた。
「ちょっと待ってよ・・・。あのね、わたし・・・。」 「なんだ。」
「また、赤ちゃんできたみたいなのよ・・・。」
驚いたように目を見張って、手を止める。
「あんたが、大きいトランクスと一緒に修行に出る前の・・ あの時みたい。」
彼は体を離して仰向けになり、溜息をついた。
「うれしくないの?」 「わからん・・・。」
「トランクスと一緒に、鍛えてやってよ。 あ、でも、女の子だったら・・・。」
「女は戦わなくていい。」
何か思い出したのか、かなりイヤな顔をした。
それを見てわたしは笑ってしまい、ベジータも表情がゆるんだ。
気をつけてくれるんなら、構わないわよ。 と耳元でささやくと
下品な女だ、 といつもの一言を口にし、再びわたしを引き寄せた。
くやしいが、今の俺はやはりカカロットには敵わない。
俺は、ブルマのいない世界に行く気にはなれない。
少なくとも今は。
俺の二人目の子を宿したという女の、静かな寝息を聞きながら
いつしか俺も眠りに落ちていった。