「戦えない貴様が、何故こんなところまで来たんだ?」
ここはナメック星だ。
不老不死になって、俺に長年煮え湯を飲ませ続けてきたフリーザを倒すため、
ドラゴンボールを自分のものにしようとしていた。
そんな暇はないというのに
何故か俺はこの女のことが引っ掛かり、隠れているこんな場所まで来てしまった。
「わたしは、科学者よ。 乗ってきた宇宙船はわたしが改造して、操縦だって・・」
気丈に答える女をじりじりと追い詰めながら、俺は質問を続ける。
「それだけか? 貴様は、誰かの女じゃないのか?」
「・・・あんたたちが殺したうちの一人が、わたしの恋人よ・・・。」
笑いがこみあげてくる。
「カカロットならまだマシだが、あんな弱い男の相手だったとはな・・・。」
「孫くんには、大切な人がちゃんといるわよ。」
女は、まっすぐに俺の目を見た。
「あんたは、どうなの?」 「ふん、 そんなもの必要ない。」
「でしょうね。」 抑揚のない声で言い放つ。
「あんたがどんなふうに死のうが、
生き返ることを願ってくれる人なんて、いるはずないわよね。」
どうしてなのか、わからない。
その言葉に、どうしようもなく頭に血がのぼった俺は女を地面に押し倒した。
ひと思いに殺してしまうよりも、屈辱を与えてやりたい。
その時どんな顔をするのか、見てやりたい・・・。
衣服を掴んで、引きちぎる。
白い胸があらわになるが、一応は宇宙の旅の装備なのか、一度では引き裂けなかった。
あきらめの悪い女は、抵抗しようと必死にもがく。
殴りつけておとなしくさせることは、したくない。
そう思ったばかりに、やけに手こずる。
女の青い瞳が また、俺を見据える。
「あんた、 もしかして・・・」
一瞬だけひるんだ俺に、こんな言葉を続けた。
「初めてなら、好きな女とした方がいいわよ。」
その後すぐに、巨大な気が近づくのを感じ、その場を後にせざるをえなくなった。
そしてフリーザに殺されたはずの俺は、わけがわからないまま地球に送られた。
「わたしが魅力的だからって、悪いことしちゃダメよ。」
あの時の、女の肌の白さが脳裏にちらつき、
「下品な女だ・・・」 とだけしか言い返せなかった。
少し後のことになるが、俺は結局 あの女、ブルマの言葉どおりにしてしまう。
地球ではなく、ナメック星で言われた方の、だ。
206.『ナメック星にて』
[ ナメック星祭に投稿する前の、習作です。]