186.『ファミリーライフ』
[ ブログの拍手お礼に置きっぱなしだったお話を少しだけ修正しました。
C.C.一家が、団地か何かに住んでいる普通の家族だったら?というお話です。
もしかすると、学生パラレルの彼らの未来の姿?(笑)それにしては貧乏っぽいですよね・・。]
夜。
わたしはいつも、休もうとしている夫の傍らに身を寄せる。
狭い部屋を片付けて、布団を二組敷く必要なんてないかもしれない。
「フン、まったく・・・。」 「うふ、 うれしいくせに。」
不機嫌そうにしながらも、いつでも しっかりとわたしを抱き寄せる。
「・・・あったかい。」 「静かにしろ・・・ 」
年頃の息子と まだ小さい娘のことが気になるらしい夫に、わたしはいつも同じことを言う。
「仲良くしてるんだから、いいじゃない。」
そして、耳元で付け加える。
「気になるんなら、声、出せないようにして・・。」
それを合図に、唇が重なる。
長く、深いキスの後で わたしは彼の左手をとり、自分の口元に当てさせた。
唇と、短く出した舌先で、
口をふさいでいる手のひらを、ゆっくりとなぞってみる。
「チッ・・ いくつになっても、下品な女だ。」
しばらくのちにようやく手をどけた夫の下で、わたしは尋ねた。
「上品な女の方が、好きなの?」 「・・声を出すな・・。」
「わかってる。」
なるべく、 ね。
朝。
「パパ、ママ、起きて。 幼稚園に遅れちゃう。」
「キャッ! たいへん!!」
ふすま越しに聞こえた娘の声で、飛び起きる。
「もっと早く起こしてくれればよかったのに・・・」
「おにいちゃんが、開けない方がいいって言ったの。」
あいつめ・・・。
でも、パジャマを着ててよかった。
「大丈夫よ。まだ間に合うわ。 おにいちゃんは?」
「もう、学校に行っちゃった。 お弁当作れないんなら、お金もらうから、って。」
「えーーっ・・・」
また、こんなに・・・。
財布を開けてためいきをつく。
うちは食費が高すぎるのよ。 だからいつまでたっても、広い家に住めないんだわ。
「あいつ、 わざとだな。」
起きてきた夫がつぶやく。
フンだ。 どうせわたしは料理がヘタよ。
・・・でも、幼稚園は給食のあるところにしておいて、ホントによかった。
「何してるの。 急ぎなさいよ。」
声をかけたあと、ふと娘の方を見ると、何かを手に持っている。
光沢のある、鮮やかな色をした小さな布。
とっても見覚えのあるそれは・・・
「お布団の中に落ちてた。」
たとえ舞台が変わっても、この家族はやはり、こんな調子なのだった。