『コンプレックス』
[ クリリン×18号の新婚時代?です。
ブルマと18号の、噛み合っていないガールズトークが気にいっています(笑) ]
ブルマって人から、時々 電話がある。 C.C. への誘いだ。
『たまにで構わないんで、18号を誘ってやってください。』
多分、前に クリリンがそんなふうに頼んだんだ。
あんまり気が乗らないけど、家にずっといるのも退屈だから 出かけていく。
あたしが 行く、って言うと、クリリンはうれしそうな顔をして、いちいち送り迎えをしてくれる。
そのまま一緒にいればいいのに。 そう言ったら、
『女同士の集まりに おれがいたんじゃ邪魔だろ。』 って笑ってた。
ほんとに、まめな男だね。
C.C.にはいつも、孫悟空の妻のチチって人が 子連れで来ている。
公園みたいに広い庭で 子供たちは好き勝手に遊びまわって、
ブルマとチチが あれこれ話をしている。
あたしが 話に加わらずに黙っていると、ブルマは大抵 こう切り出す。
『そういえばね、この間 こんなの買っちゃったんだけど・・・ 』
化粧品や、ラックにかかった洋服を持ってくる。
『あんまり合わないのよね。 チチさんか18号にどうかしら、って思って。』 ・・・
でも今日は、チチって人は来ていない。
カップにコーヒーを注ぎながら ブルマはつぶやく。
「牛魔王さん・・ お父さんが風邪で寝込んじゃったんですって。」
子供も、幼稚園に行ってるとかで いなかった。
「だから、今日は二人だけよ。」
さすがに気まずいと思ったのに、まるで気にしない様子で しゃべり続けている。
こういう女だから、あのベジータと暮らせるんだろうか。
ふと、 そんなことを考えた。
気がつけばブルマは、じっと あたしの顔を見つめている。
「18号は肌がきれいね。 つるっつるで、ゆで玉子みたい。」
ため息をつきながら ぼやく。
「いいわね、 若いって・・・。」
「あんただって、別にシワなんか無いだろ。」
あたしにとっての 精一杯のほめ言葉に、ブルマは訴える。
「エステや化粧品でお手入れすることで、現状維持してるのよ。
人工的なことをしちゃえば、簡単なんでしょうけどね。」
人工的・・・。 手術、ってことだろうか。
前から気になっていたことを、あたしは口にしてみた。
「ねえ、 あんたの その胸、自然な もんなの?」
あたしの質問に、ブルマは もともと大きな目をさらに見開いた。
そして 笑いながら、文字通り 胸をはって答えた。
「当たり前でしょ。 なんなら さわって確かめてもいいわよ。」
「遠慮しとくよ・・。」
あたしは知ってる。
クリリンがこの女に会うと いつも、まず胸の辺りをチラッと見るということを。
文句を言うほどじゃないから黙ってるけどさ。
まぁ、 確かに立派な胸だ。
「何を食べたら そんなふうになるんだい?」
イヤミのつもりで言ったのに、ブルマは別の意味にとったようだ。
「もしかして・・ 18号、気にしてるの?」
あたしの胸元を見ながら続ける。
「クリリンくんが、何か言うの? もう少し大きかったらなー、 とか?」
「な、 何言ってんだよ!!」
そりゃあ、あたしの胸はぺたんこだけど、クリリンがそんなこと 言うはずないだろ。
ベジータみたいに無神経な奴とは違うんだ。
なのにブルマときたら、今度は こんなことを言い出す。
「そういう時はね、 こう言えばいいのよ。」
両手で あたしの手をとって。
「じゃあ、 あんたの手で大きくして・・ って、ね。」
ささやくような声。 右手を、胸に押し当てられる。
顔を覗きこまれて、何故だか頬が熱くなる。
それを見たブルマは、声をあげて笑った。
「あはは、 18号って かわいいわね。」
夜。 カメハウスの寝室で、あたしは鏡の前に立っている。
胸がきつくて着られなかったTシャツや、女らしい体型をつくるという錠剤と一緒に、
ブルマは ある物を持たせてくれた。
袖が無くて 丈がやたらと短い、下着なのか寝巻なのかわからない服だ。
『こんなの、いつ着ろってのさ。』 『え? 夜よ、 もちろん。』
『こんなにヒラヒラしてちゃ、眠りにくいだろ。』
『やあね。 脱がしてもらうための物でしょ。』 ・・・
やっぱり やめよう。
こんなの着てちゃ、いったいどんな顔をすればいいのか わかんないよ。
その時。 ドアが開いた。
「18号?」 クリリンが、部屋に入ってこようとする。
「わあっ!! バカ、見るな!!」 「え、 えっ?」
驚いているクリリンを あわてて押し返して、ドアを閉めた。
「なんだ、 ブルマさんにもらったのか。 ちゃんと見たかったなあ。」
あの後、 あたしは すぐにパジャマに着替えた。
「見なくていい。 あんなの、あたしには似合わないよ。」
「そんなことないと思うけどな・・。」
背を向けていたあたしの肩に、温かな手が触れる。
あんなものを着なくても、 あんなふうにささやかなくても、
クリリンは あたしを抱きしめてくれる。
クリリンの触り方は、とっても気持ちがいい。
別にいやらしい意味じゃない。
優しくて、あったかくて、ざわざわした気持ちが、ふっ と軽くなるような気がするんだ。
その後の話。
結局、あれから一度も あのヒラヒラした服を着ていない。
持たせてもらった錠剤も、ほとんど飲まなかった。
Tシャツはありがたかったけど、少し前から合わなくなった。
そう。 あたしは妊娠したのだ。
クリリンは一日に何度もカレンダーを見ている。 とてもうれしそうだ。
だから あたしも、これは うれしいことなんだ、って思える。
夜。 ベッドの中で、クリリンがおなかに手を当てる。
「大きくなったなあ。 あー、早く生まれてこないかな。」
あたしは その手をとって、もう少しだけ上の方・・ 胸に移動させてみた。
「・・こっちも大きくなっただろ?」
ちょっと驚いていた。 だけど 指がしっかり動いて、そのことを確かめている。
「ホントだ。 すごいなあ、女の人は・・。」
「産んでしばらくしたら、元に戻るらしいけどね。」
こんな言葉を付け加えてみる。
「残念だね。 大きい方が、好きなんだろ?」
「なに言ってんだよ。」 あきれたように笑いながら、クリリンは言った。
「大きくたって、小さくたって、関係ないよ。」
ふうん。 ほんとかな。
「それよりさ、 下着のサイズ、変わっちゃったんじゃないのか?
明日、一緒に買いに行くか?」
・・・本当に、あきれるくらいまめで、優しい男。
あたしは小さく 「うん。」と答えた。
おなかと一緒にふくらんだ胸に、手のぬくもりを感じながら。