310.『楽園へのドア』

サイト開設二周年記念のつもりで書きました。

ブルマが、ベジータを待ちながら一人で・・・というのは、

夜、 C.C.。  

このところ わたしは、自分の部屋では眠っていない。 

ベジータのために用意した部屋を訪れて、そこで眠ることにしている。

 

外で特訓することが増えて、あまり帰って来ないベジータ。

一時は あれほど重力室に こだわり、わずかな不具合さえも 許そうとしなかったくせに。

おそらく 今夜も、帰っては来ないだろう。  

殺風景な その部屋のベッドの中で、わたしは小さく ため息をついた。

 

シーツもカバーも、掃除ロボットが 毎日 交換をしているはずだ。 

それなのに、彼の匂いが甦ってくる。

着ていた物を剥がされ 乱暴に、 あるいは やけに丹念に、

押し開かれて 貫かれた感覚と共に。

 

「・・・。」  

真っ暗闇にはしていない。 

ごく小さなライトだけを灯した薄暗がりの中、わたしは自分の体の、ある個所に手を伸ばした。

直に触ることには、抵抗があった。 

だけど パジャマの上からでは、あんまり・・・。

文字通り 間をとって、下着の上から触れてみる。

彼が いつも そうするように、二本の指を使って、短い距離を行き来する。 

速く、時には ゆっくりと、 何度も、何度でも。

 

「は、 あ ・・ 」  

口からは、さっきとは違う ため息が漏れる。  

頬が、そこの部分と同じくらいに熱くなっている。

布を隔てていても、じっとりと濡れているのがわかる。  

腰を動かせば 快感が、より一層速く 駆け昇ってくる。

手持無沙汰な もう一方の手を使い、胸を ぎゅっと掴んでみる。 

パジャマの裾から差し入れて、直にだ。

先端が、硬い。 

中指と人差し指で、さっきから刺激を与えてやっている ものと、

ちょうど 同じくらいに・・・。

 

「あっ ・・・!」  

そう思った瞬間、ほとばしるような感覚に襲われた。

「ベジータぁ。」  思わず、名前を口にしてしまう。 

続けて 好き、 と言いそうになり、さすがにそれはやめておいた。

けれど、それほどみじめではない。

だって、つい何日か前、あんなふうに抱かれていたからこそ、

こんなにも リアルに思い出してしまったのだから。

 

癖になっちゃうと困るけど・・・  

「ま、 たまになら いいんじゃない? 寝酒みたいなものよね。」

ひとりごちた後、呼吸を整え、瞼を閉じて、わたしは眠りに 落ちていこうとしていた。

その時。  窓が開く、大きな音が聞こえてきた。

「ベジータ・・!」  

まずい。 今 触れられたら、何をしていたか 気付かれてしまう。

 

プロテクターの類をはずして、いつものように覆いかぶさろうとする彼に、わたしは言った。

「ちょっと・・。 あんた、におうわよ。 外にいる時、 髪や体、洗ってるの?」

時間を稼ぐためだ。 

「手も汚れてるんじゃないの? イヤだわ。 

ねえ、シャワーを浴びてきなさいよ。 その方が さっぱりするわよ。」

なんなら、 わたしが洗ってあげる・・。  

付け加えた言葉が終わらぬうちに 彼は言った。 

仰向けにした わたしの顔を、じっと見つめながら。

 

「やけに、顔が紅いな。」 

「そ、そう? ちょっと熱があるのかもね。」

有無を言わさず、パジャマのズボンと下着を下ろす。  

手袋をはずした手、指先に、掻きまわされる。 

水の音が、響いている。

「あっ、 あ ・・・ 」 

「男を引き込んでいたのか? 今度は、どこのどいつだ?」

・・・。 だったら、 どうなの?  

自分勝手な男に、そう言ってやろうとしたけれど やめた。

「バカなこと言わないでよ。 誰でもいいってわけじゃないんだから。」

「フン・・。 だったら なんだって、こんなことになってるんだ?」  

汚れた指が、目の前に突き出される。

顔をそむけることをせず、わたしは答えた。  

「夢を見てたから。 そのせいよ。」

 

すらすらと嘘が出てくる。  

「窓から男が入って来てね、わたしを裸にして、悪いことするの。」

だけど 全てが、嘘というわけでもない。 

「逆立った黒い髪の、怖い顔の男よ。 それがね、ものすごーく エッチなの・・。」

「チッ。」 

大きく舌打ちをして 体を離し、ベジータはベッドから下りてしまった。

「どこ行くの?」 「体を洗えと言っただろうが。」

彼は そう言い捨てて、備え付けのシャワールームの扉を、ひどく乱暴に閉めた。

 

もしも 今、ベジータがシャワーを浴びている間に わたしが別の部屋に隠れたとしたら、

どうするだろうか。

C.C.は広い。 

ベジータが入ったことのない部屋だって、まだ いくつもある。

気というものを探って、探しに来てくれるだろうか。 

わたしを、見つけようとしてくれるだろうか・・。

だけど、それはしない。 

悔しいけれど、結果を知ることが 少し、怖かった。

そんな気持ちを振り切るために、わたしはドアを開いた。

 

ユニットバスの、カーテンも閉めずに ベジータはシャワーを浴びていた。

「何だ。」  「・・別に。」  

バスタブの中に、入っていく。

 

ちゃんと洗ったの? 清潔にしておかなきゃダメよ。 

今度 いつ来るのか、わからないんでしょ。

 

その言葉の代わりに、こう言う。 

「ね、 して。」

「何?」 「さっきの続きよ。 してほしいの・・。」 

ベジータの手を取って、既に お湯ではないもので濡れている個所へと導く。 

先程とは違って、肌も、指先も、とても温かい。

「フン、 下品な女だ。」  

お決まりのセリフが、まるで合図のようになり、わたしの肌も熱くなっていく。

 

この後、 ろくに体を拭くこともせず、 ベッドの上でも わたしたちは抱き合う。

疲れ果てて、眠りに落ちて、もしかすると 夢の中でも 抱かれてしまうかもしれない。

 

どちらからともなく ドアのノブを回して、わたしたちは歩いてゆく。

とてつもない快楽と、幸福感が待ち受けている その場所へ。

夜が明けるまで、 眠りから覚めるまでの、短い楽園へ。

主にマンガで何度か読んだことがありまして・・。

自分ver.を書いてみたかったのです。]