重力室にしばらく籠った後 ベジータは、どこか人里離れた場所に飛んでいく。
どうやら そこでも、ものすごい特訓をしているらしい。 このところ、ずっと
それを繰り返している。
わたしの方も仕事が忙しくなってきた。
だから顔を合わせるのは・・ 話をするのは、夜ばかりだ。
夜 遅い時間、 それも 彼のベッドの上で。
この男ときたら 外から帰って来ても、玄関を通った
ためしが無い。
いつからか わたしはベッドの中で、彼の帰りを待つようになっていた。
横になって うとうとと、時にはぐっすり眠り込んでしまいながら。
今夜もそうだ。
身に着けていた物を脱ぎ捨てて、横たわっている
彼に覆いかぶさる。
交わっている時ほどではないけれど、これ以上は
もう、近づけないほど重なり合っている・・・。
「ね、 キスして。」
ひどく面倒くさそうに、それでも言うとおりにしてくれた。
「ん・・・。 ちょっと違うわ。」 「?
何がだ。」
「この間みたいな感じにしてほしかったのよ。」
「知るか。 そんなこと、いちいち覚えてるはずないだろう。」
その言葉が終らぬうちに わたしの唇は、首筋そして鎖骨へと移動していく。
手持無沙汰な左手が、彼の体の中心を捉える。
それはわたしの手の中で、どんどん固く膨らんでいく。
首筋へのキスに飽きてしまったわたしは、今度は舌で乳首を転がし始める。
もっと力を込めて吸い、軽く歯を立ててもいい。
彼のいつもの やり方を真似て・・・。
だけど やめた。 左手で、根元の辺りを丁寧に撫でさする。
わたしは、口を使って その部分を愛撫することにした。
手のひらで、指先で、根元を優しく弄ぶ。
本当に、なんて不思議な感触なんだろう。
鍛え抜かれた彼の体の、数少ないやわらかな場所だ。
それとは別の、はち切れんばかりになっている個所。
出来得る限り 深く 深く頬張りながら、わたしは考えている。
ベジータの 過去の、女性関係についてを。
この男は、慣れているのか そうではないのか、よくわからないところがある。
でも、今 してあげている これは、どうも初めてだったらしい。
軍隊育ちで、特別に用心深いから、非力な女にさえも
そんなことはさせなかったのだろうか?
でも・・ フリーザに与することなく、ずっと故郷で王子様として暮らしていたなら、
もしかすると違っていたかもしれない。
王族というものは、結婚相手を自分では選べないものだ。
だから、 その代わりに、 快楽を与えてくれる存在が絶対に必要なのだ・・・。
「おい。」 肩を掴んで、揺さぶられる。
もう、何度目かの言葉をかけられる。 「やめろ。」
「イヤよ。」 短く答えた、その時。
「きゃあっ。」
髪を掴まれた。 それほど強い力ではなかったけれど、思わず悲鳴をあげてしまう。
「何すんのよ! ひどいわ!」
「言うことを聞かないからだ。」 「・・・。」
その言い方に腹が立ったわたしは、こんなふうに答えた。
「だって、 もうちょっとだったんだもの。」
薄暗がりの中、ベジータの表情が変わったのが
手に取るようにわかった。
「おまえは本当に 下品な女だな。 まるで娼婦だ。」
「そう?」 わざと間を置き、舌舐めずりをしてみる。
「そんなに、気持ち良かった?」 ・・・
横たわっていたベジータが、半身を起こした。 ライトをつける。
「何よ・・。 怒ったの?」
少しだけ うろたえた わたしを 仰向けの姿勢にさせて、
まるでベッドに 固定するように押さえつける。
自分の足を使って、脚を大きく開かせる。 そして、
「キャッ・・ 」
右手の指を挿れてきた。 体の中から、水の音が聞こえてくる。
彼の二本の指によって、深く、乱暴に掻きまわされる。
きつく閉じていた瞼を開くと、ひどく近いところにベジータの顔があった。
彼は これまで、その最中の自分の顔を
見られることを嫌がった。
なのに、今日は何故か、自らの手でライトをつけた。
「あ、 あ っ ・・ 」 抜き出した二本の指。
ぬるりとした液体で汚れきった それが、襞の奥に隠されていた
敏感な部分を捉える。
「ああっ ・・・ 」 強く刺激される。
速く、だけど 時々は ゆっくり、そして、次第に
うんと 優しく・・・。
わたしだけが無防備に達してしまうところを
じっくりと観察するつもりで、
彼は部屋のあかりをつけた。
そのことに気付いたのは 明るいままの部屋、ベッドの上で、
向き合う形で抱き合って、ベジータの顔を見ながら
再び達してしまった後だった。
こんなふうに抱かれた後は、わたしは大抵眠ってしまう。
だけど今日は、何とか頑張って起きていた。
眠っていない 彼の背中に額をつける。
「ねえ、またどこかに行っちゃうの? 重力室だけじゃダメなの?」
彼は もちろん、答えを返さない。
「外で特訓してる時って、野宿なの? 雨が降ったらどうするの?」
イライラしているようだ。 もうひと押し。
「カプセルハウスを持って行けばいいじゃない。 そしたら・・ 」
わたしも泊ってあげてもいいのよ。
勢いよく、ベジータが こちらを向いた。 「やかましい。」
わたしたちは また、向き合う形になった。
すぐそばに、顔がある。
両手で頬を そっと包んで、辛辣な言葉を吐こうとしている口を、塞いでしまいたくなる。
だけど、思いとどまる。
舌に残る 感覚で、さっきしていたことを
思い出してしまったから。
代わりに、頬にキスをする。
明け方でも 夜中でも、いつだって すべすべしている、少年のような頬。
そうだ。 頬と唇、 それらも彼の体の中ではめずらしい、やわらかな個所なのだった。
焦れた様子のベジータに、もう一度 引き寄せられる。
唇を、強く押し付けられる。 ベジータが構わないのなら
いい。
貪って、舌を絡ませる。 睡液が混じり合う。
ようやく離れた後で、彼は言った。
「・・下品な女だ。」
その口元には、うっすらと笑みが浮かんでいた。
この男が 何度も何度もわたしを抱くのは、性の捌け口・・
セックスの相手だと考えているからなのだろうか。
自分でも意外なほどに、わたしは そのことが嫌だとは思えない。
それは、彼が王子様だからだろうか。
それとも体の相性が、とってもいいような気がするためだろうか。
そんなことを考えている わたしは、やっぱり下品な女だと思う。
ライトを消した部屋、 ベッドの上で、わたしは再び
彼に抱かれている。
息継ぎをするかのように キスをねだって、両腕を背中に、きつく
まわす。
「まだ 行かないで、 そばにいて。 ・・できたら、一緒に眠ってほしいの。」
その、言葉の代わりに。
071.『下品な女』
[ マンネリですみません・・・。 こういう二人が、心底 好きみたいです。]