『予感』

[ トランクスと天ランの娘が結婚、という説(?)を知って書いたお話です。未来トラ×・・・です。]

帰還したトランクスが、人造人間を倒してから数か月。

都は復興に向けて動き出していた。

 

地球を救った英雄である彼も、

その若い力を、惜しみなく街の再建に提供していた。

 

母が待つ家への帰り道。

トランクスは 「こんにちは。」 と、声をかけられた。

女性と呼ぶにはまだ早い、自分と同じ年頃に見える女の子。

 

濃い金髪の彼女は言う。

「あなた、トランクスでしょう。 ブルマさんの息子の。

 あなたが、人造人間をやっつけてくれたのね?」

「どうして・・・。」

 

とまどうトランクスの言葉を遮って、彼女は持っていたバッグから写真を取り出す。

バッグの中には、古い手紙の束が見えた。

 

「あたし、ランチの娘よ。 おかあさんから、聞いたことある?

 カメハウスで、家事を引き受けてた・・・。」

「あ、ああ。 もちろん・・・。」

 

写真には、タイムマシンで戻っていた頃よりもさらに若い母と、

その仲間たちが写っていた。

 

バッグをもう片方の手に持ち替えて、彼女は目を伏せてつぶやく。

 

「これは、母さんの宝物だったの。 どんな時でも、決して離さなかった・・・。」

「君のおかあさん・・・ランチさんは、どうしたの?」

「先週、死んじゃった。 病気だったの。

 だからあたし、都に出てきたのよ。 都で働きたい。 役に立ちたいの。」

 

まっすぐに自分を見つめる瞳に、トランクスは戸惑ってしまう。

 

「そりゃあ、人手は必要だよ。 だけど・・・。」

「平気よ。 あたしは結構なんでもできるし、すっごく丈夫で、力もあるから。」

 

そう言って彼女は、前髪を上げて額を見せた。

それでトランクスはすべて理解する。

 

「信じないかもしれないけど、僕はタイムマシンで過去に戻って・・

写真に写ってる人たちと会って、一緒に戦った。 だから、人造人間に勝てたんだ。」

「じゃあ、あたしの父さんにも会ったのね?」

彼女は瞳を輝かせる。

 

「信じるわよ。 母さんがよく言ってたもの。

 ブルマさんや孫悟空さんの周りでは、いつも不思議なことが起こったって・・・。」

 

彼女の持っていた写真の中の、若い母さんと今はいない戦士たち。

母さんはいろんな話をしてくれたけど、昔の写真は、あまり見ようとしなかった。

あまりにもなつかしすぎて、つらかったのだろうか。

 

だけど、もうひとり残っていた、仲間の忘れ形見。

彼女とだったら、見ることができるかもしれない。

 

「家に・・・ C.C.に、おいでよ。

 母さん、きっとすごく驚いて・・・喜ぶよ。」

 

その時強い風が吹いて、彼女がくしゃみをした。

 

いろいろ聞いていた僕は、一瞬身構えたけれど

彼女の髪の色は変わらなかった。

そのかわりに、とってもうれしそうな顔になった。

 

僕は尋ねた。  「君、 名前はなんていうの?」

 

造りかけの街が、夕焼けに染まる。  もう壊されない、新しい街。

 

「あたしの名前は・・・  」

彼女は、笑顔で教えてくれた。