ベジータは、戻ってきた。
悟飯くんが連れてきてくれた。
よかった。 あんたは、イヤでしょうけどね。
おかげでわたしは、さよならを言える。
あの夜、わたしたちの最後の夜。
ベジータはひどく乱暴にわたしを抱いた。
体の痛みよりも、わたしのことを見ていないのが悲しくて、思わず声をあげてしまった。
動きを止めたベジータに、わたしは言った。
「ね、 キスして・・・。」
抗議のような短い悲鳴で、俺は我にかえった。
女の顔を見て、流れる涙に口づけて吸った。
そして言うとおりにしてやった。
俺を受け入れ、 俺の子を産んだ女。
俺はその晩、女を離さなかった。
これが最後のひと時になると思ったからだ。
夜が明けてから、眠るブルマに一言だけ遺して部屋を出た。
「生きろよ。」
「見ない方が、いいかもしれません。」
悟飯くんはそう言ったけれど、ちゃんと見た。
わたしのもとに戻ってきてくれたベジータを。
あの、最後の時。
まるで自分の痕跡を刻むみたいに、わたしの体じゅうに跡を残した。
あんたが生きていた証しは、わたしが産んだこの子なのに。
ドラゴンレーダーを作って、孫くんを外の世界に連れ出したわたしは、
あんたの子供を産んだ。
サイヤ人の王子だったあんたの子を、わたしはこの地球で育てていく。
あの朝、眠ってなんかいなかった。
戻らないつもりのあんたの姿を、見ることができなかったの。
だけど、ちゃんと聞いてたのよ。
わたしは生きる。
何も遺せなかった人たちに代わって、生き抜いてやるわ。
わたしの行くあの世にはどうせ、あんたはいないものね・・・。
いつかどこかで、生まれ変わって会えたらいいわね。
そしたらわたしは、 きっと、 また・・・
その日まで、 さよなら。 ベジータ。
208.『さよなら』
[ 絵師様の未来編語り&イラストを見て書いたお話です。 ]