『ハネムーン』

C.C.に皆が集まるというので、クリリンは18号を連れて西の都に出てきた。

 

早めに着くようにし、彼女に都をゆっくり見せてやりたいということで

今回は亀仙人は同行していない。

 

「あんまり高いものじゃなければ、買っていいよ。 服だったら、そのまま着て行けば。」

クリリンの言葉に、18号は目移りしてしまう。 表情はいつものままだったけれど。

 

ふと、彼女の足が止まった。

写真スタジオのウィンドウに飾られた、ウェディング姿のカップルの記念写真。

 

「これは?」 と尋ねる18号は、

説明している間にも、ずっと写真に見入っている。

中にいたスタッフに声をかけられた。 スタジオ内で撮影ができるという。

「撮ってもらうか?」

クリリンの問いかけに、18号はうなずいた。

 

きちんとした式を挙げたい気持ちもあったが、18号は大勢の前に出たがらないかもしれない。

唯一の身内の17号はどこにいるかわからないし、

自分のほうも、一番出席してほしかった友人は、この世にいない・・・。

 

着替えを終えたクリリンがそんなことを考えていると、支度が済んだ18号が現れた。

真珠色のウェディングドレスをまとって。

 

クリリンは、しばらく声が出なかった。

「お人形みたいだな・・・。」

彼の失言に、彼女は一瞬眉を寄せた。

しかしそのことにまるで気付かず、「ものすごくキレイだ・・・。」 と繰り返す。

 

まったく・・・。

相手と言い方で、どうしてこんなにも違うんだろうか。

18号は、いつの間にか笑っていた。

いつもの、口元だけの微笑みではなく。

 

きちんと装丁されたものは、後日カメハウスに送ってもらうようにした。

テスト用に撮ってもらったスナップを見ながらクリリンは、キレイだなぁ、と何度も言って

「おれなんかが相手でいいのかな。」 とつぶやいた。

「フン、 そればっかりだね・・・。」

 

あたしは、無神経な奴や、えらそうな奴は大っきらい。

弱すぎる奴も問題外だ。

だから・・・。

もう、 なんで、 わかんないの。

 

クリリンは驚いた。

自分の左手に、18号のしなやかな指先が触れていた。

彼女は彼の顔を見ずに、今日二つ目の願い事を口にした。

 

「18号が、人ごみで具合を悪くして行けなくなった。」と、クリリンはC.C.に電話を入れた。

人のよい彼は少し良心が痛んだが、彼女の望みどおり、二人きりの時を過ごした。

 

 

二人がカメハウスに戻ったのは、翌日の夕方だった。

「すみません、 遅くなって。

 飲みすぎてC.C.に泊めてもらったら、寝過ごしちゃって・・・」

「たまにはいいじゃろ。 こっちは構わんよ。」

しどろもどろのクリリンの嘘を、亀仙人はさらりと流した。

18号の具合の悪さが、メカの不調であるようなら

いつでもC.C.に来るよう、ブルマから電話があったことは言わずにおいた。

 

そして、どことなく様子の変わった二人を見て

「家族が増える日が、近いかもしれんのう。」と、ひそかに笑みを浮かべた。

 

クリリンが、体の不調を訴える妻を連れてC.C.を訪れるのは、もう少しだけ後のことになる。