『誕生』

クリリンはあたしにいろんなことを、よくわかるように教えてくれる。

だけどあたしの体の、機械の部分のことはわからない。

 

気分の悪さが続いていたある日、

クリリンはあたしを、西の都のC..に連れて行った。

ここには、前にも何度か来た。

 

最初の時、

ベジータがいる所なんて行きたくない、 って言ったら

クリリンは笑って答えた。

「あいつは、みんなのいる場には出てこないと思うよ。」

そのとおりだった。

 

そのかわり今日は、死んだ孫悟空の家族が来ていた。

子どもたちはうるさいし、 チチって人は馴れ馴れしい。

だけど べジータよりかはマシだ。

なんでブルマって人は、あんな奴と一緒にいるんだろう。

クリリンも、そのことはよくわからないって言ってた・・・。

 

そんなことを考えてたら、本人が出てきた。

いつも、科学者には見えない服を着ている。

 

「いらっしゃい。 じゃあ、早速見てみましょうか。」

「忙しいところ、すいません。 お願いします。」

 

頭をさげるクリリンを残して、あたしは別の部屋へ連れて行かれた。

こういう部屋はイヤなことを思い出しそうで、キライなんだ・・・。

 

 

検査が終わって、クリリンが待っている大きな部屋に戻った。

他の連中が騒がしく食事をしている。

 

「メカの部分は異常無かったけど・・・。」

「そうですか・・・。

どうも食欲にムラがあって、何かの匂いで戻しちゃうこともあるんですよね。」

 

クリリンの説明でブルマって人と、給仕をしていたその母親、 

それにチチって人までが、手を止めて顔を見合わせた。

 

「それって、赤ちゃんじゃないですか?」

孫悟空の息子の大きい方(気味悪いくらい背が伸びた)が、突然口をはさんだ。

「悟天がおなかにいた時のおかあさんも、そんなふうでしたよね。」

 

その場がどよめいて、 クリリンはものすごく慌ててた。

 

あたしが病院はイヤだって言うと、医者をC..に呼んでくれる話にまでなった。

大騒ぎだ。

 

 

気分の悪さは少ししてから治まったけど、体の中で何かが動くようになった。

そのうちにおなかが出てきて、足もとが見えにくくなった。

 

体が重たくてだるいと、文句を言うあたしの足をさすってくれながら

クリリンはいつも同じことを話していた・・・。

 

 

あの痛みときたら、戦闘の時のそれとは質が違う。

病院や、男の医者がイヤだったことなんかどうでもよくなった。

 

とにかくどうにか、

小さくてあったかくて、よく泣く生き物を体の外に出し終えた。

 

泣いているクリリンを見て、

あたしはいつも言われていた言葉を思い出した。

『おまえの母さんは、17号と18号、二人がおなかに入ってたんだもんな。

 大変だったろうな。』

 

そう。

あたしの体は、全部が機械でできてはいない。

ドクター・ゲロに最初から作られたわけじゃない。

あたしと17号は、誰かのおなかの中で育てられて、生まれて来たんだってこと。

 

いつのまにか、あたしの目からも水が出てきた。

これは涙、っていうんだった。

前に教えてもらってた・・・。

 

 

「女の子か。 きっとかわいい、良い子になるじゃろ。」

 

新生児室の前では、涙を拭いている者がもう一人いた。

トレードマークであるサングラスをはずして。