『続いていく気持ち』

[ 『5959』のMickey様より、3959ヒットのリクエストでいただきました。

もう二度と、家の扉を開けて帰ってくる父の姿を見ることは出来ないのだと思っていた
その父が帰って来てから5年
何度か地球に訪れる敵はいたものの、今や宇宙最強の父に敵う相手などいるわけもなく
大きな争い事もないまま過ぎ、闘うことから退いたボクは小さい頃からの夢だった学者への道を目指していた
元々は母の希望だったのかもしれないが
パオズ山は自然に溢れ、たくさんの植物や生物たちと共存して生きてきたせいもあってか
それらに対する興味は尽きることがなかった
ボクよりも長く暮らしている父がそれに興味を示さなかったのは
それらよりももっと闘うことが好きだったということだろう
高校を卒業し大学へと入学してからも2年順調かどうかはわからないが毎日充実した毎日を過ごしている
日々の研究と、同じ道を目指す者たちとの話はとても刺激を受ける

ただ、何かが足りない
その理由はわかっていた
高校の頃は学校に行けば逢うことが出来ていたから気付かなかったが
こうして違った時を過ごしてみれば逢えないということがこんなにも・・・
気持ちを寂しく、落ち着かせないものだとは思いもしなかった
それを誤魔化すように研究に夢中になればせっかく彼女とした約束すら忘れて没頭してしまうこともあった
ここまで彼女のことを考えてしまう自分にも正直呆れるが、事実なのだから仕方がない

この状況をどうすれば脱することが出来るのか考えた
普段研究していることは、研究し尽くせばおのずと結果が出てくるのに
どんなに考えてもなかなか答えが出てこない
だが一つだけ思いついた
思いついた瞬間、自分の顔が熱くなるのを感じた
父はどうだったんだろうか・・・・?
聞いてみたいが実際口に出すのは難しいことだった
父に気付かれてしまうのも気恥ずかしい気がして
勇気を出して聞いてみた答えは『約束だったからだ』だった
「それだけ・・ですか?」
「なんでだ?それ以外になんかあんのか?」
「いえ、別に・・・」
「でもオラは良かったって思ってっぞ」
「それはどうしてですか?」
「ん〜〜・・まぁ悟飯もしてみたらわかんじゃねぇのか?」
「はぁ・・・」
「悟飯、頑張れよ」
「・・・はい」
結局、答えは一つしかみつからなかった

そして今日、その思いを伝えようと彼女の元へやってきた
これをどうやって言葉にしていいのかすらわからない・・・
「・・君、・・・飯君!悟飯君!!」
「え?あ・・・す、すいません」
「どうしたのさっきからボーっとしちゃって、心ここにあらずって感じよ。珍しいね」
「いえ、そんなことは・・・えっと・・・はい」
「ホントにどうしちゃったの?今日の悟飯君変だよ」
「すみません」
「ねぇ、でもどうして今日はパパも一緒に食事したいなんて言い出したの?」
「えぇ・・・ちょっと・・・」
「?変な悟飯君。もう少しで食事の準備が出来るはずだから行きましょ」
「はい・・・」
どうせなら彼女の父親にも聞いてもらおうと食事に誘った
逆にサタン邸へと招かれてしまったのだが・・・
何度も訪れているはずのこの家もなんだか落ち着かない
「はぁ・・・」
「12回目」
「え?」
「ため息の数」
「ため息・・・ついてましたか?」
「ついてるわよ。本当にどうしちゃったの?具合でも悪い?」
額へと伸ばされる彼女の手は、武道をしているとは思えないほど細くて
「キレイだな・・」
「え?」
「//あ、いえ・・・」
なんだか我慢の限界だ―――
「ビーデルさん!」
「きゃ!何?!」
突然肩を掴まれたビーデルは驚いて小さな悲鳴を上げてしまった
「ボ、ボクと結婚してください!!」
「?!」
じっと目を見つめ大きな声で予告もなく結婚を口にしてしまったせいか
固まったまま瞬きすらしない彼女が心配になり
「ビーデルさん?あ、あの〜・・・」
「・・・・本気・・なの?」
「え?何がですか?」
「今の話よ!!」
「!!//ああ、もちろんです!冗談でそんなこと口にしません!!!・・・ダメですか?・・・」
「そんなわけないじゃない!OKよ!!」
「ホントですか?やったぁ!!!」
ギュっと胸の中にビーデルを閉じ込め耳が痛いくらいに大きな声で喜ぶ悟飯
今はなぜ彼女が結婚を受けてくれたのかとか
せっかく彼女の父にもそのことを聞いてもらおうと思っていたはずなのにここで言ってしまったこととか
色々考えていたことも結局何の役にも立たなかったこととか
過ぎてしまってから考えてみればあれ?と思うようなことよりも彼女の返事がなによりうれしくて
・・・どうでも良かったんだよな

「あなた?どうしたのこんなところでボーっとして。珍しいわね」
「あぁ、ビーデル」
「クスクス・・・パンがいなくなるのが寂しい?」
「そんなこと・・・ないさ」
「いいわよ。私にまで意地張る必要ないじゃない。何を考えていたの?」
「ボクがビーデルにプロポーズした日のこと」
「ふふふ・・・突然だったわよね」
「ボクの中じゃ突然じゃないよ」
「そう?付き合ってもいなかったのにいきなり結婚なんていうんだもの・・・自分とパンを重ねていたの?」
「そういうわけじゃないよ・・・それに全く知らない人と一緒になるわけじゃないんだ。寂しくなんかないよ。ボクには君がいるしね」
「強がっちゃって・・・パン、幸せになれるわよね」
「ああ。あいつならきっとパンを幸せにしれくれるさ」

まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった
小さな頃から一緒だったのだから不思議はないのかもしれない
・・・そうだよな
なぜ昔のことなんて思い出していたんだろうと考えてみれば
誰かを、大切にしたいと思うことに結局理由なんてなかったということだった
してみればわかると言っていた父の言葉の意味が本当の意味でようやく判った気がした
パンがあいつと歩む道を選んだのもそういうことだったんだ
自分の元から離れても娘には変わりない
「ビーデル。こっちにきてくれ」
近くに呼び寄せビーデルの胸に顔を埋める悟飯
「珍しいわね。あなたが甘えるなんて」
「・・・やっぱり寂しいのかも・・・しれないな」
「私はこれからもずっとあなたの傍を離れたりしないわ」
「わかってるよ」
娘を取られてしまうような気持ちはやっぱり辛い
でもこれから先、娘にも子供が生まれて、その先もそれはずっと続き、きっと途切れることはない
そうして大切な人がまた増えていくんだ
その喜びのほうがずっと幸せなはず
それは目の前にいる彼女がいてくれたからこそ得られた喜び
「ビーデルと一緒にいられて、ボクは幸せだな・・・」
「やだ・・・」
そう言って照れた顔をみせる彼女は少女の頃と変わらない
そんな言葉に出来ない幸せをかみ締め、ボクは娘を送り出す一歩を踏み出した

 

 

 

トランクス×パンそして、娘を見守る 悟飯×ビーデルの夫婦愛ストーリーです。]