『フラワーガーデン』
[ 「クリパチの部屋」のkotosaki様より、管理人のブログの
三年目突入のお祝いをいただいちゃいました!飯ビです。
ビーデルにぞっこんLOVEの悟飯がキュートです!悟天もかわいい!
チチさんもいいお母さんですね。]
「おにーいちゃん」
ぴょこんと悟天が顔を出す。その顔がニヤ〜ッと歪んだ。
「で・え・と?」
「馬鹿っ!」
昨日の夜から鏡の前で、あれでもないこれでもないと騒いでいた悟飯。
真っ赤な顔で悟天を叱ると、敵もさるものひょいと逃げられた。
「がんばってね兄ちゃん!ファイトぉ!!」
「・・・・・何か勘違いしてないか・・・」
デートなんてそんな。ただ一緒に図書館でテスト勉強するだけなのに。
誰に言い訳するでもなく悟飯がぶつぶつ呟く。
(で、でも・・・デート・・・・ぽくなったらいいなあ・・・)
ちょっと期待してしまったり。
「悟飯くうん、待ったあ?」
とか言われて。
「いいや、僕も来たばっかりですよ」
「良かった。お弁当作ってたら遅くなっちゃったの。じゃあ行きましょうか」
「・・・ビーデルさん」
読んでいた本をぱたんと閉じる。 ふっ・・・。朝日がやけに眩しいな。
「こんないい天気なんですから・・・何処かに行きませんか?」
そんな自分の言葉に、ビーデルさんはあの可愛い瞳をぱちくりさせて。そして。
「二人で?」
とか聞いてきて。そんでもって。
「ええ!二人で、こんな嘘っぱちな世界なんかサヨナラしちゃいましょうよ!」
「ああ、私のクライド!どこへでも連れていって!」
「僕たちに明日はないんですねボニー!」
(とかなんとかなったりしちゃったりして!!!!)
悟飯の顔が真っ赤に染まる。口元はだらしなくにやけて緩む。
人に見せられない顔である。
「い、いやいや。何考えてんだ。ボニー&クライドなんて犯罪者じゃないか。
僕とビーデルさんは正義の味方なんだ。悪は許さん」
首を振って否定する。
しかし一度脳内に現れてしまったお花畑は、そうそう簡単に消えてくれなかった。
「図書館で勉強だもんな。お弁当なんて無いよな」
普通に勉強して、静かに知力を高め合う。これぞ健全。
そうだな、と悟飯が一人で納得する。しかし溢れた花畑は収まらなかった。
「悟飯くん、ここの解き方分かる?」
「どれですか?ああ、これは・・・・ああだこうだでこうですよ」
「さっすが悟飯くん!カッコイー!!」
「はっはっは、ビーデルさん。図書室ではお静かに、ですよ」
「いっけなあい。ビーデルのお馬鹿さん」
舌を出してコツンと自分の頭を叩くビーデルさん。
ああ、何という可愛らしさ。 その可愛さなら世界をその手に掴めるだろう。
「こいつう」
「うふふ」
そして見つめ合う瞳と瞳。魅かれあう心と心。ひとつに重なる唇とくちび・・・・
「わーーーーーっ!!!!!」
思わず自分の横っ面を思いっきり殴ってしまった。
「な、なんだべ?」
母親と弟のびっくりした顔。
なんでもないと取り繕って平静な顔をするものの、心臓は死亡寸前だった。
(な、な、な、何考えてんだ!!図書館で!!)
自分の脳みそにびっくりした。
叱り飛ばせるなら思いっきり叱ってやりたいくらい、不純な脳みそに成り下がっている。
(静かにテスト勉強!それ以上でも以下でもない!!)
己に言い聞かせるように呟いて、がさごそと鞄に勉強道具を突っ込む。
ぽかんとしていた顔で見ていた悟天が、またもくちばしを挟んだ。
「ビーデルさん、どんな格好なんだろ。
僕、修行の時の格好しか知らないけど、デートならちゃんとした服なんだろうなあ」
当たり前だべ、と母親も頷いて答える。
「女の子にとって、お洋服は勝負だ。悟飯ちゃんも、ちゃんとお洋服褒めてあげるだよ」
「は、はい・・・勝負・・・」
お花畑みたび全開である。
「悟飯くうーん!」
「ビーデルさあーん!」
遠くからキラキラ駆けて来るビーデルさん。輝く笑顔。
漂白剤も裸足で逃げ出す白さのフリルのエプロン。上質なニーソックス。
目に痛いピンクのスカート。そして愛くるしいカチューシャ。
「デートだから気合い入れてきちゃったあ!どうかな?ご主人さ・ま」
「ぐはああああっ!!!!」
まさかのメイドっ娘ですかビーデルさん! 僕を殺す気ですかビーデルさん。
ああもう死んでもいい。今なら何も恐れない・・・。
「に、兄ちゃん?」
もはや立ち上がれないくらいに打ち砕かれた悟飯を見て、悟天がびっくりしている。
本当にデートなんだろうか。違うんじゃないだろうか。
「・・・・・ふ・・・・」
地面に勝手に倒れた悟飯がゆっくりと起き上がる。意味もなく超化。
「ふ・・・ふははははは!!よかろう!立派な魔族となるがよい!!」
叫んでそのままのテンションで飛び出して行った。
「な・・・・なに?兄ちゃん・・・」
「・・・・ピッコロさの影響にも困ったもんだなあ」
「いた!ビーデルさんだ!ふわははははは!!」
上空でビーデルを発見し、一気に急降下する。
「きゃっ!・・・て悟飯くん!何飛んでんのよ!目立つじゃない!!」
「えっ・・・・あ、し、しまった!」
出会い頭に怒られて、悟飯の頭に昇った血が一気に降りた。
「まったく・・・おっちょこちょいなんだから!」
「・・・す、すみません」
お花畑の出番もないほどに普通の態度のビーデル。
先ほどまで一人でもんどりうって悶えていた自分が情けなくて、
悟飯は思わず身を縮めて肩を落とした。
「しかも遅刻よ。アイスおごってね」
「は、はい」
ごそごそとポケットをまさぐって財布を取り出すと、ビーデルが首を横に振った。
「今じゃなくていいわ。お昼のデザートにアイスね」
「・・・・は、はあ」
にっこり笑っている。
妄想と違い、現実では慌てふためくしかできない悟飯をいなして、
ビーデルがすたすた歩き始めた。
「頭使うと糖分が必要になるでしょ。それに、アイスは口のなかを爽やかにしてくれるし」
アイスの良さについて語り出す。悟飯は首をかしげた。
「ビーデルさんて、そんなにアイス好きでしたっけ?」
「そうでもないけど。今日はアフターフォローとして必要だと思うから」
「アフターフォロー?」
ビーデルの話がよく分からない。
ぽかんとしていると、前を歩くビーデルが立ち止った。
ほんのちょっとだけ首を動かして。ちらり、と悟飯を見た。
「お昼、あたしが作ってみたの。だから、口直しがいるでしょ」
「・・・・・・」
悟飯の頭に、再びお花畑が広がった。