『小さなレディ』
[ ARINA様の「KIMAGURE」の5万ヒットのリクエストで書いていただきました!
ブラ⇒ヤムチャです。天ブラ推奨の管理人ですが、ヤムブラは好きです・・。
母のかつての恋人、母にそっくりな娘。(美少女!)ロマンティックですー。]
「そろそろ帰るよ、ベジータが戻ってくる。」
ヤムチャはちらりと時計を見て席を立った。
「そうね、また何時でも来てね。」
ブルマも玄関まで送ろうと立ち上がった。
時折しか遊びに来ない元恋人・・・とは言えそれももう二十年以上前のことだ。
今ではのんびり昔話の出来る唯一の存在になってしまった。
自分より若い孫くんが先にこの世から消えてしまうなんてね・・・。
「あぁ。ベジータももういい加減解ってくれてもいいのにな。」
冗談交じりに笑いあって・・・ヤムチャはC・Cを後にした。
ヤムチャが出て行って数分も経たないうちに、ブラが帰宅した。
「お帰り。」
「あれ、今日ヤムチャさん来るんじゃなかったっけ?」
ブラは出来るだけ平静を装った。
逢いたくて・・・走って帰って来たなんてパパにもママにも言えない。
「今、帰ったわ。ベジータが今でも怖いのよ、アイツ。」
ブルマはクスクスと笑ってコーヒーカップを下げた。
「そうなんだ・・・。」
せっかく頑張って帰って来たのに・・・。
でも・・・今出て行ったばかりなら追いつくかもしれない。
ブラはソファーに鞄を放り投げると、
「友達と出掛ける約束してるの、行ってくるわ。」と言ってリビングを出て行った。
私に・・・舞空術を教えてくれたのはヤムチャさんだった。
パパもお兄ちゃんも自分は飛ぶ癖に、『お前はいい』とか言って教えてくれないんだもん。
決して『恋』とかじゃない・・・と思う。
でも・・・やっぱり逢いたいんだもん・・・。
ブラは玄関を出るキョロキョロと周囲を見回した。
いた!!
数メートル先の交差点にヤムチャの乗っているエアカーを見つけてブラは駈け出した。
信号が赤で良かった・・・。 何とか追いつきそうだ・・・。
追いかけて行って何をどう言い訳しようか・・・。
逢いたかったと言ってしまっていいのだろうか・・・。
「ヤムチャさんっ!!」
何とか信号が変わる前に出した声はヤムチャの耳に届いたらしい。
エアカーが歩道脇に止まった。
「ブラちゃん?!どうしたんだ?!」
何事かと車から顔を出すと、はぁはぁと息を切らせたブラが駆け寄って来た。
「えっと・・・」 どうしよう・・・ 何にも考えてなかった・・・
『逢いたかったの』・・・?
『何で私が帰ってくる前に帰っちゃうの?!』・・・?
自分の言うべきことが解らない。
そんなブラの様子を勘違いしたのかヤムチャは不思議そうに少しブラの様子を見ていた。
「とりあえず、C・Cに戻ろ・・・いや、ベジータが怒るな・・・。」
ヤムチャは頭を掻いて眉尻を下げて困ったような表情を浮かべた。
そっか・・・そうだよね・・・
ブラはシュンと俯いてゴメンナサイと呟いた。
「いや、いいんだよ。何か話でもあった?」
ヤムチャの優しい笑顔にブラは小さく頷いた。
「とりあえず・・・乗る??」
ヤムチャは何時もより口数の少ない彼女に戸惑いながらも、車を指差した。
ブラは頷くが早いか、その助手席に滑り込んだ。
ヤムチャはそんなブラの態度にくすっと笑ってアクセルを踏んだ。
「で、どうしたの?追っかけて来てまで話したいってことは
ブルマやベジータには言えない事なんだろ?」
しばらく無言のまま車を走らせていたヤムチャが口を開いた。
「え?!あっ・・・うん・・・。」
確かにパパやママに言ったら怒られちゃうかもしれない・・・。
ヤムチャさんともっと遊んでたいなんて・・・。
でも当のヤムチャさんにはもっと・・・言えるわけないじゃない・・・。
俯いたままのブラにヤムチャは首を傾げた。
「俺にも話しにくい?だったら気分転換でもする?
デートにしちゃおじさん過ぎるだろうけど。」
冗談めかして言ったヤムチャにブラは思い切りぶんぶんと首を振った。
「おじさんなんかじゃないじゃない。パパなんかよりずっと若いわ。」
そうよ・・・おしゃべりも上手だし、話してて飽きない。
流行りの事も女心だってずっとパパより理解してる。
「ありがとう。ブラちゃんにそう言われると照れるな。」
ハハハッと笑ってヤムチャが続けた。
「じゃあ、俺とデートしようか?」
きっと冗談・・・解ってる。
なんたって元恋人の娘だもん。
私が何か悩んでると思ってるんでしょ?
遊んだら気分が晴れると思ってるんでしょ?
でもね、デートしてもらったらもっと悩みが増えるんだから・・・。
・・・
・・・・・
でも・・・一緒に居たいから・・・
ブラは頷いた。
「そうと決まれば、一応ブルマに連絡しておくか。」
ハンドルを片手で握って、携帯電話を胸ポケットから取り出すヤムチャの手をブラが制した。
「デート中に他の女に電話するつもり?」
ブラのその言葉に、ヤムチャは「もっともだな。」と電源を落とした。