『 Girls, Hurry up !』
[ ギズモ様の「90'S」の3万ヒット記念フリーイラストを見て
管理人が妄想したものです。]
平和を取り戻した地球。
だが、また いつ新たな敵が現れるか わからない。
かつて 命を賭して 戦いに身を投じた戦士たちは皆、もう若くない。
これから先は、次代を担う役割を背負った自分たちが 頑張っていかなくては。
そんなふうに、いかにも もっともらしいことを口にして、
お兄ちゃんと悟天は 南へと飛び立っていった。
孫家に顔を見せに来ていたウーブと一緒に。
よく晴れた空を見上げて、パンちゃんは つぶやいた。
「悟天おにいちゃんたち、ちゃんと修行してるのかしら。」
「まさか。 仕事や家から離れて、さぼりたいだけよ。
トレーニングなら重力室がちゃんとあるんだから。」
「でも、真面目なウーブが一緒だから・・ 」
「パンちゃんったら甘いわね。2対1よ。
それに真面目だからこそ、言いくるめられちゃうのよ。」
「ふうん。 ねえ、ブラちゃん。」
「なあに? パンちゃん。」
「わたしたちも、行ってみない?」
お兄ちゃん達の後を追って 南へと飛ぶことになったのは、そんな会話の後だった。
「ブラちゃん、自分で飛べるのに。」
わたしは舞空術を使わずに、パンちゃんに呼んでもらった筋斗雲に乗っていた。
「だって わたし、スカートなんだもの。」
本当のことを言うと、普段トレーニングをしていないわたしは
長い距離を飛ぶのは きついのだ。
だけど ちょっぴりくやしいから、それは言わないでおく。
「それに靴だって、脱げやすいのはダメだものね。
だったら、この子に乗せてもらう方がいいわ。」
そう言って わたしは、不思議な感触の筋斗雲を 手のひらで そっと撫でた。
すると、パンちゃんってば こんなことを言ってきた。
「その・・ 気を悪くしないでね。」
一旦 言葉を切る。
「ブラちゃんが乗れるとは思わなかったわ。」
「なによ。わたしは純粋じゃないっていうの?」
「そこまでは言わないけど・・・。」
ふーんだ。
「でもさ、そこらへん 結構 曖昧よね。 そうだわ。前に 誰かが言ってたんだけど。」
誰かっていうのは、実は悟天なんだけどね。
「筋斗雲って生き物でしょ。 いろんなことが わかってて、
孫家の人だけを乗せてくれるんじゃないか、って。」
「? じゃあ、どうして ブラちゃんが・・・。」
「この子は わかってるのよ。」
わたしは肩をそびやかし、雲の表面を もう一度撫でてあげる。
「わたしが いずれ、孫家にお嫁入りするってことをね。」
「だけど、悟天おにいちゃんは・・、」 付き合ってる女の人がいるのよ。
その言葉を遮るようにして、ブラちゃんは つぶやく。
「わかってるわ。」
口をへの字にして、目を伏せる。
だけど、すぐに こう言った。
「どうせ、すぐに別れちゃうに決まってるわよ。」
顔を上げたブラちゃん。
その表情ときたら もう、ベジータさんにそっくりだ。
戦う修行をしていなくても、長い距離を飛べなくても、
ブラちゃんは確かに、サイヤ人の血を受け継ぐ女の子だ。
そんな彼女のことを わたしは、ちょっとだけ からかってみたくなった。
「そうね、叔母さん。」「え? なに、それ。」
「だって、悟天おにいちゃんの奥さんってことは わたしの叔母さんだわ。」
「そうだけど・・。イヤだわ、おばさんなんて。 せめて おねえちゃんって呼んでよ。」
「やあよ。 ブラちゃんは、お姉ちゃんじゃないもん。」
「そうね・・・。」
ブラちゃんの 小さな、ピンク色に塗られた愛らしい唇が 皮肉に歪む。
「おねえちゃんは、パンちゃんの方だわ。」
「えっ? どういうこと?」
「うちのお兄ちゃんと結婚すればそうなるわ。 そうでしょ、お義姉ちゃん。」
わたしは頬が熱くなった。 笑いながらブラちゃんが言う。
「お義姉ちゃん・・ パンちゃんったら、顔が真っ赤よ。」
「違うわ。 だいぶ南寄りに来て、気温が ぐんと上がったせいよ。」
わたしは両手で、あおぐようにして 頬の熱を冷ます。
「そういえば、日差しが強くなってきたわね。」
ブラちゃんは、腕や脚に日焼け止めを塗り始めた。
「・・ねえ、パンちゃん。」
また、何かを思いついたらしい。
「ん? どうしたの?」
「ウーブの故郷って、若い女の子もいるわよね。」
「そりゃあ、いるんじゃない? 小さな村だけど。」
「こんなに暑いんじゃあ、きっと薄着よね・・。」
「そうね、 きっと・・ 。」
わたしたちは、ウーブの普段着を思い出していた。
それと同時に、デレデレと鼻の下を伸ばしている二人の男の姿も
はっきりと思い浮かべることができた。
「許せないわ。」 「修行もしないで、イヤらしい顔しちゃって。」
「始めから そのつもりだったのよ、きっと。」
「急ごう、パンちゃん!」 「うん、ブラちゃん!」
わたしたちは おしゃべりをやめ、飛行速度を上げた。
その頃。 次代の平和を担うはずの青年たちは、揃って くしゃみをしていた。
「ヘンだなあ、 こんなにあったかい所で。」
「誰かが噂してんじゃないの。女の子かな・・。」
「トランクスさん、悟天さん、いい加減 修行しましょうよ。」
・・パンとブラの考えは当たっていた。
少女たちは 間もなく この、南の地に降り立つ。