『過ちと後悔』

[ 『KIMAGURE』のARINA様から、相互リンク記念にいただきました。

ベジータ×ブルマの他、異色カップル描写が含まれていますので

十分ご注意ください。]

「楽しかったぜ、お姫様。家まで送ってやるよ。」
ターレスは意識の朦朧としているブルマを抱き上げた。


『送ってやる』・・・?
その言葉にブルマははっきりと瞳を開く。
この格好で帰るなんて・・・出来るわけがない。

「離してよ!もう放っておいてよ!」
枯れる程泣いて、もう零れないと思っていた涙が流れ出す。
ベジータだけには知られたくない・・・。
こんな・・・。

「それでは意味がないだろう?俺は復讐に来たのだからな。」
ニヤッと笑ってボロボロになったブルマを抱き締めて飛び立った。

朝焼けに染まる空を見る余裕なんてない。
もう・・・

ここから落ちて死んでしまった方が楽なんではないだろうかと思う程だ・・・。
強制的に抱かれてしまったことよりも・・・

これから起こる事を考える方が怖かった。
普通ならベジータが黙っているはずがない・・・。


でも・・・もし自分自身に嫌悪感を持たれてしまったら・・・?
ベジータと離れて生きていくなんて今となっては考えられない。
それ程・・・アイツの存在が大きかったのに・・・。


『まだ帰ってやがらん・・・。』
ベジータは小さく舌打ち、身体を起こした。

いつもの癇癪だろうと高を括っていたが、

トランクスを置いたまま何も言わずにこんなに家を開けるとは・・・。
非常識だろう、母親の癖に。

もう一度チッと舌打ち、ブルマの気を探る。
小さくてもアイツのものだと解る様になってからは

見失う事はなかったはずだというのに・・・。

神経を集中させていると、徐々にこちらに近付いて来る凄く弱弱しく・・・

速い?!
ジェットフライヤーなどとは比べ物にならないぐらいのスピードで移動する

風前の灯し火のようなブルマの気・・・。

『何があったんだ?!』
ベジータは弱いブルマの気だけを頼りに窓から飛び立った。

 

 

「王子のお迎えのようだ・・・。どんな顔を見せてくれるだろうな??」
クックッと厭らしい笑みを浮かべるターレス。
彼のスカウターが反応を示したのだ。


ブルマは震えた・・・。
『もう死にたい・・・。』

「ねぇ・・・もう殺してよ!!こんなの・・・イヤ!!」
ブルマは発狂し、身体を捩る。
大声を上げ離せと叫んだ。

そんな事をしてしまっては何の意味もなくなってしまうだろう?」
そう言うとブルマを抱いたまま眼下に広がる森へと急降下した。
「此処で眠っていろ。」

ターレスは軽く・・・殺さない程度に首を絞め、ブルマの意識を飛ばした。
『王子が来た時に起きていると厄介だからな。』

そして大きな木の叉広くなっている部分にブルマを寝かせると、

空を見上げた。
「早く来てやれよ?王子様・・・。」

ベジータは森の中を飛びながらブルマの姿を探す。
ブルマの気が先程以上に弱まってしまったのだ。
森の上空から位置を特定するのは難しかった。
じれったさを感じながらも森の隅々まで目を配る。

左の方に人影が見えた。
よく見てみる・・・木の上に寝かされたブルマ・・・。
「ブルマ!!」

遠くからでもブルマが何も身につけていないことは認識出来た。
らしくない程の大きな声を上げ瞬時に傍まで移動する。

「お久しぶりです・・・王子。」
その間に割って入ったのはもちろんターレスである。

「・・・貴様!」
不敵な笑みを浮かべるターレスにベジータが殴りかかった。

「俺の事が解りますか?王子・・・」
その拳をかわし、ニヤニヤと笑いながら意識のないブルマの傍に腰掛けた。

 

「貴様・・・ターレスだろう・・・?お前は疾うに死んだはずだ・・・。」
そう・・・昔、カカロットのヤローが殺したと聞いた・・・。
何故コイツが・・・?
しかしそれよりも、ブルマが心配だ。
意識はないようだが、まだ微かに気は感じられた。

「生きてますよ。そんな事よりもっと面白い話にしようぜ、王子様。」
ターレスはそっとブルマの額にキスをした。
「このお嬢さんは、素晴らしいな。昨日たっぷり味わわせていただいたぜ?」

この言葉を信じるよりなかった。
ブルマの身体のあちこちには小さな痣が出来ていた・・・。

ターレスは拳を握り震えるベジータの表情を嘲笑う。
「悔しいか・・・?俺は・・・王子の・・・お前の所為で

もっともっと悔しい思いをしてきた。」
ターレスはブルマの首に手を回した。

「・・・めろ。」
今にも暴れ出しそうな拳を自らの心で押さえつけ、

震える唇で吐いた言葉は今にも消え入りそうだ。

「あの王子様が手も足も出せないとは。笑わせてくれるじゃないか。」
ターレスはブルマの手の甲に小さくキスを落とし、また小さな痣を増やした。

「そのオンナは関係ないだろう・・・。

貴様の恨みは、全て・・・全て俺に対する恨みだろう!!」
ベジータはさっとターレスに近付くと再度拳を繰り出そうとする。

「王子・・・それ以上近付くとオンナを殺しますよ?」
クックッと笑い、ブルマの首に回した手に力を込めていくターレス。

ヤツの言う通りだ・・・。
『・・・手も足も出せるわけがない。』


「・・・何が望みだ?」
小さく舌打ち、ターレスを睨む・・・。
いくらトレーニングを積んでも・・・
こうして・・・オンナ一人守る事が出来ないのか・・・。

 

「やはり王子は物解りがいい。」
ターレスがブルマから離れ、一歩一歩ベジータに歩み寄る。

「俺の・・・大切な者を殺したのはお前だ、ベジータ!!死ね!!」
ターレスの放った気弾がベジータに向かうが、

ベジータは難なくそれをかわし超化すると、ターレスの胸倉を掴んだ。
「死んだ下級戦士に殺される程は落ちぶれていないんでな。」

ベジータの拳がターレスの腹にめり込む。
そしてもう一発、繰り出した拳はスカウターに直撃した。
『何だ・・・あれは?まさか!』

超サイヤ人・・・やはり自分と王子では格が違うのか・・・?
まともに腹に食らった一撃は、ターレスが思った以上にダメージを受けていた。

一瞬のターレスの動揺にベジータはエネルギー波を撃ち込み、

その圧力でターレスをブルマから離す。
タイミングを見計らうとさっとブルマを抱きかかえ空へと飛んだ。

ブルマを守ることが・・・今は先決だった。
特に大きな怪我の様子はないが、気が・・・どんどん弱まっている。
スカウターを壊したのは時間稼ぎだった・・・。
『スカウターがなくては探せんだろう・・・』

もちろんこのままアイツを野放しにするつもりはない。
今まで・・・俺がしてきた事・・・。
『殺し』にこんなに怯えるなど・・・。
俺は・・・俺は・・・。

ベジータの頬に涙が伝う・・・。
「すまん・・・すまん。ブルマ・・・。」

小さな声で呟きながら震える手で必死に妻を抱き、

トランクスにバレぬ様 妻の身体の回復を、と神殿へと向かった・・・。