『俺だけの姫君』

ARINA様の「KIMAGURE」の3万ヒットのリクエストで書いていただきました。

ヤムチャ×ブルマです。 舞台は無印終了後の頃です。

ラブラブが、何故か切なく感じてしまいます・・・。]

「ねぇ、どっか連れてってよ。」

だらしなくソファーに腰掛けたブルマは、テレビに夢中になっているヤムチャに声をかけた。

「俺だってそうしたいけど・・・雨まだ止んでないんだぞ?」

ヤムチャが窓の外に目をやった。

昨夜から降り続く大雨の所為で、街中がどんよりと暗い。

 

「こんな天気だからこそ、どこか行きたいんじゃない。

ねぇ、雨でも元気になれるような所ないの?」

ブルマはヤムチャの背中から首に手を回して抱きついた。

「・・・そうだなぁ・・・」

ヤムチャは首を傾げて考える。

フライヤーなら濡れる事はないだろうけど・・・

でもなぁ・・・

 

「もういいわ。お昼寝する。決定!」

ヤムチャの動きが鈍い事に腹を立てたブルマは、ぱっとヤムチャから離れ立ち上がると、

リビングを出て行ってしまった。

「おい、ブルマ?」

呼び止めたもののブルマは立ち止る事もなく、大げさに扉を閉めて出て行ってしまった。

 

まただ・・・

ホントに、俺のお姫様は誰にも負けない気分屋だ。

ふぅっと溜息をつきTVを消すと台所に向かった。

冷蔵庫を開けて、中を確認する。

さすが天下のC・Cの社長宅だ。 たくさんの食材が丁寧に詰められている。

ブルマのママさんも、あんな風でもきっちりしてるもんなぁ。

 

ヤムチャは苺ジャムとアイスクリーム、

そして生の苺を数個取り出すと手際よく即興の苺パフェを作り上げた。

「結構簡単に出来るもんだな。」

誰に言うでもなしに呟いた。

 

「ヤムチャ様、今こっちに来る途中でブルマさんの部屋から・・・」

プーアルは慌てて飛んでくるとヤムチャに言った。

「大丈夫だよ。今からご機嫌取って来るから。」

ヤムチャは微笑んで、心配かけてごめんな、とだけ言うと

出来たてのパフェを手にキッチンを出た。

 

〜*〜*〜*〜

 

「ヤムチャの馬鹿!!何よ!!」

ブルマは枕を壁に投げつけた。

行動力のあるブルマにとっては優柔不断なヤムチャの態度はどうしても癇に障ってしまうのだ。

枕は投げる角度が良いのか、上手く手元に転がって来る。

嘲笑われているように感じて余計に腹の立ったブルマは枕を床へと放り出した。

 

はぁ・・・

大きな溜息が零れる。

何してんだろ、私。

仲良く出掛けたかっただけなのに、何で・・・。

 

トントンとノックの音がする。

「ブルマ、入るぞ?」

ヤムチャは返事を待たずに、後ろ手にパフェを隠したまま、扉を開けた。

 

「何よ?!寝るって言ったレディーの部屋に返事も待たずに入って来るなんて非常識よ?!」

ブルマは少し潤んでしまった瞳を悟られないようにヤムチャを睨んだ。

「そう怒るなよ。ほら。」

パフェを差し出した途端、ブルマの顔色が明るくなる。

「今日の所はこれで許しては、もらえませんか?お姫様。」

ヤムチャがおどけて頭を下げた。

 

「悪くないわね・・・」

ブルマも調子を合わせて、わざと上から物を言う。

「でも・・・」 「気にいらなかったか?」

ヤムチャはブルマの隣に腰掛けた。

ブルマは首を横に振って言った。

「どうせなら・・・食べさせて?私、姫なんでしょ?」

 

ブルマの笑みに、ヤムチャはくすっと笑ってサイドテーブルにそれを置くと

スプーンを手に取った。

一口分掬いあげてブルマの口元へと運ぶ。

「美味しい。」

すっと溶けてなくなるアイスクリーム。 ブルマは満面の笑みを浮かべた。

「まぁ味はな、市販品だから・・・」

ハハハっと頭を掻くヤムチャ。

ブルマはありがとうと小さく呟いた。

そのはにかんだブルマの表情に、ヤムチャの心臓がどきんと大きな音を立てた。

 

「さっさと食わなきゃ溶けちまうな。」

自分の動揺誤魔化すようにそう言って、ヤムチャが次の一口を掬ってブルマの口元へと運ぶ。

ブルマはスプーンを取り上げた。

「一緒に食べなきゃ寂しいでしょ?」

そしてそれをヤムチャの口元へ運んだ。

 

これだから・・・ 俺は彼女から目が離せないんだ。

 

怒ったり・・・

笑ったり・・・

泣いたり・・・

表情のくるくると変わる彼女・・・

男顔負けの悪態を吐くかと思ったら 小さな子供の様に震えたり・・・

 

まだまだ俺の知らない顔・・・ 隠してんだろ・・・?

 

「ずっと一緒にいような・・・ブルマ。」

ヤムチャは碧い髪を梳いた。