223.『飽きない挑戦』

miracle dance』の緋色さんの5千ヒット記念のイラストの、

前髪ありベジータを見て妄想しました。

『・・・ばか。』というお話と併せてお読みいただけましたらうれしいです!]

C.C. 夜。

「ねぇ、これ 飲んで。」

寝室で休もうとしていたベジータに、わたしは一粒の錠剤を差し出した。

「なんだ、これは。」

「良質のプロテインよ。 筋肉を保つのに有効なの。」

「そんな物、 このおれには必要ない。」

一瞥しただけの彼に、わたしは言った。

「あら 残念。 じゃあ、孫くんに飲んでもらうことにするわ。」

 

ベジータは、眉をぴくりと動かす。

「おいしいって言ったら 喜んで飲むわね、 きっと。」

「なんだって あいつに・・・。」

「だって、いい薬なのに勿体ないでしょ。 電話したら、瞬間移動で来てくれるかしら・・・。」

「よこせ。」

 

思ったとおり、彼はわたしの手から 錠剤をひったくった。

水を用意する間も無く、 噛み砕いて飲み下す。

「・・何か、おかしな味がしたぞ。」

「そう? ずいぶん改良したつもりだったんだけどね・・・。」

 

 

「!?」  なんなんだ、 これは。

体の奥底から、何とも言えない違和感が湧き上がってくる。

「ブルマ、 おまえ、また 何かしやがったな・・・。」

 

 

ブラが今 四歳だから、もう五年程前のことになる。

わたしは若返りの薬を作って、若干 十八歳の頃の姿になった。

何も言ってくれない夫に腹を立て、口移しで彼に 残りの薬液を流し込んだ。

いろいろあったけれど、その夜 若返ったベジータと愛し合ったことで、

わたしは念願だった二人目を身ごもったのだ。

 

だけど あの時、ベジータは かなりむせて咳き込んでいた。

今考えると、十分な量を飲んでいなかった気がする。

今回 錠剤にしたことで、それがよくわかった。

「わぁ・・・ ホントに若いわ。 やっぱり五年前は、ちゃんと効いてなかったのね。」

 

長めの前髪が、彼の特徴あるおでこを隠している。

そして、後ろにまわらなくても 長い茶色の尻尾が揺れているのが見える。

「これって、何歳頃なの?」

ものすごい形相をしているけれど、あえてそれには触れないでおく。

「まだ、少年って言っても いいくらいね。 十五〜六歳ってとこかしら。」

 

呑気なわたしの言葉で、ベジータは堪忍袋の緒が切れたようだ。

「何のために こんな悪ふざけをするんだ。 しかも、カカロットの奴に飲ませるだと?」

「あれは、あんたに飲ませるための嘘よ。 孫くんの十代の頃なんて、さんざん見たもの。」

 

何とか落ち着かせようと、左の頬に唇を寄せる。

「年頃になったトランクスを見てると、つい考えちゃうのよ。

 その年齢だったあんたに、一度会ってみたいって・・・。」

わざと しんみりした口調でつぶやく。 

すると、不機嫌そうにしながらもベジータは黙った。

 

「なら、もう 気が済んだだろう。 戻せ。」

「二時間もすれば戻るわよ。」  わたしは彼の背後へ まわりこんだ。

「すごいわね、 ズボンを突き破ってるわよ。」

尻尾のことだ。 すばやく、掴んでみる。

「・・・

 

信じられない。 床に両膝をついて、ベジータがその場に崩れ落ちた。

「鍛える前だったのかしら。 それとも、再生したせいなの?」

握りしめると 尻尾はわたしの手の中で、太さと固さを増してくる。

なんだかそれは、 彼の体の、別の何かによく似ている・・・。

 

握っている手はそのままで、彼の前にかがんで向き合う形になる。

厚く下ろした前髪の上から、額にキスをする。

「何を考えてる?」

「別に・・。 その髪形、似合うわよ。 いつも そうすればいいのに。」

 

頬に、耳たぶに、そして首筋に唇を這わせる。

「以前 若返った時、あんた わたしのバージンを奪ったわよね。」

「・・悪かったな。」

「悪くはないわよ。 わたしが仕向けたんだもの。 だけど、

少しだけ、悔しくなったの。 わたしの全て、何もかもが、あんたのものになっちゃって・・・。

 

尻尾を握りしめたまま、ベジータの上衣をまくりあげる。

露わになった腹筋は、この年齢で 既に完璧に鍛え上げられている。

「ねぇ、 あんたの初めてって いつ?」

「・・・。」

「この頃はもう、しちゃってた?」

 

尻尾を離さないよう気をつけながら、ズボンと下着を下ろす。

わたしがすることに、素直に反応を示す もう一つの個所を、 そっと、優しく口に含む。

その時。  ベジータが口を開いた。

「・・ベッドに行かなくていいのか。」 「あ、 そうね・・・

 

答えた拍子に、握っていた手がゆるんでしまった。

その隙に、強い力で払いのけられる。

「痛っ、 なによ・・。」  目を上げたわたしは驚いた。

ベジータが、自分の尻尾を 引きちぎった。「きゃっ、 ちょっと・・。

部屋の隅に、放り投げてしまう。

「おまえのいいようにされてたまるか。」

「だからって、何もそこまで・・・。 大丈夫なの?」

 

傷の具合を確かめたくて、背後にまわろうとする。

そのわたしを、ベジータは乱暴に抱え上げた。 「何するのよ・・。」

ベッドの上に、投げ出される。

「安心しろ。 おまえの願いはちゃんと叶えてやる。 ただし、俺のやり方でだ。」

あっという間に、着ていた物を引きはがされる。

文句を言うと、噛みつくみたいに口を塞がれた。

「覚悟しろよ。」 

 

その言葉を聞いたわたしは、心の底から こう思った。

たとえ効果が薄くなっても、二錠作るべきだった。

そして、わたしも飲めばよかった・・・。

 

その後。

力を持て余す年頃のベジータに散々翻弄されて、瞼を開けることすらできなかった。

だから、彼がいつ 元の姿に戻ったのか よくわからない。

 

朝。 少し早く目覚めたわたしは、傍らの夫に向かってつぶやく。

「やっぱり すごいわね、若いと・・・。」

髪形も、いつものスタイルに戻っている。

「前髪、かわいかったけど・・ その方がいいかも。」

いつもの額に口づける。

「おでこが隠れてると、若く見えすぎるもの。 ますますわたしと差がついちゃうわ。」

 

さ、たまには早めに起きようかな。 「昨夜ので、またニンシンしちゃったかもね。」

軽口を付け加えると ベジータは、もう一度わたしを引き寄せた。

「冗談よ、 もう無理だってば。 年だもん・・。」

「まだ、わからんだろうが。」

 

ブラインドの隙間から朝日が差し込む中で、夫に組み敷かれながら わたしは考えていた。

材料が手に入りにくいし、作るのも そりゃあ手間がかかるんだけど、

若返るのって やっぱりおもしろいわ。  思いがけないことが起こって・・・。

これまでの記憶が無くなったりするのは、イヤだけどね。

薬作り、また挑戦してみようっと。

頑固なベジータに、どうやって飲ませるかも 考えておかなくちゃ。

 

そんなことを思っていたら、強い力で向きを変えられた。

部屋の隅に落ちたままの尻尾が目に入る。

あの尻尾も不思議よね。 ひどく敏感なわりには、切り落としても平気だったり。

後で拾って、分析しなくちゃ。

 

懲りないブルマの飽く無き挑戦は、まだまだ続いていくのであった。