『幸せになるために』 悟天side

ブラの本当の気持ちが、おれにはわからなかった。

家族に対する不満や、将来への漠然とした不安から

おれの元へ逃れてきているのだろうと思っていた。

 

そうでなくたって、親友の妹だ。

年がうんと離れて生まれて、大切に育てられた女の子。

安易な気持ちで手を出したら、どんなことになるか・・・

考えただけでも身震いしちまうよ。

 

だけど、あの時。

自分を卑下するようなブラの言葉で、おれは10代の頃を思い出した。

 

お父さんみたいに強くなくて、

兄さんみたいに頭もよくない、っていじけてた頃。

思わず口から出てきた言葉は、ずっと自分に言い聞かせてきた、

自分自身を励ますためのものだったんだ。

 

ブラの青い瞳が、見透かすみたいにおれを見つめて

華奢な腕がおれをとらえて、 やわらかな唇が重ねられた。

ベッドの上で組み敷くような格好になった時、彼女はおれに、こう言った。

「抱いて。 わたし、悟天の、本当の恋人になりたい・・・。」

 

愛おしさと、他の感情に負けそうになるのをやっとこらえたっていうのに、

それ以来ブラはたびたび、おれを試すようなことを言う。

..を訪ねて、きちんと挨拶したいって言ってるのに、

ちゃんとした恋人でもないのにおかしい、 とかなんとかはぐらかす。

 

確かに結婚という言葉を出すのは、

彼女にはまだ早いとも思って、うやむやになってしまった。

 

 

目を覚ましたブラがベッドから出てきて、床に座っていたおれにもたれかかる。

サラサラした甘い香りのする髪が、胸の辺りをくすぐる。

おれは、ブラを抱きかかえて立ち上がった。

 

「きゃっ・・・  高ーい。」 「空、 飛べるくせに・・・。」

「そうよ。 だからわたしは、こんなふうに抱っこされたこと、なかったもの。 

うんと小さい頃は別だけどね。」

 

腕の中の、笑顔のブラにおれは言った。

「・・・おれと、ずっと一緒にいてくれる・・? つまり、その・・・」

彼女は瞳を輝かせる。

「うん・・・。 わたし、悟天とずっと一緒にいたい。

 悟天の、お嫁さんになりたい・・・。」

 

きれいで、かわいくて、ちょっとだけワガママで、

生まれた時、しっぽの生えてた女の子。

どこか、ほんの少し自分に似ている気がする。

 

おれは本当に幸せで・・・。

 

いま、この場でベジータさんに殺されちゃっても本望だ。

って、本気で思ったよ。

 

 

                    [ おしまい ]